記録211『恐るべし』
有志達は、ソードマンハウスのパパンカツ、ランクゴ、シターギガ、そしてマジシャンハウスのサクラン・ドウとの戦いに勝利した。
修行の成果なのか、それとも神が助けてくれたお陰なのか、有志は神が体に憑依したお陰で、シャイニャス、レイシャ、レティリアの信仰を受ける事で、神としての力を行使する事が出来るようになった。
「これも皆のお陰だ! 本当にありがとう!」
「いえ! 有志の人望と正義のお陰で勝てた様なものです!」
「そうだ! 有志こそこの戦いにおける功労者だ!」
「そうだよ! 神様もありがとう!」
『例には及ばん……これも有志がこの世界を救いたいと願ったことによって出来た事……そして、愛の奇跡によって起こった必然の正義だ』
「そんな~」
有志は、皆から賞賛されて顔を赤くしながら照れる。
その時であった。
「うう! ばあはあ!」
「なん! がは!」
「うう!! ぶうう!」
「!! 皆! どうしたんだ!」
突如、シャイニャス、レイシャ、レティリアが吐血した。
床には大量の血を吐き出していた。
「そんな……こんな! そうだ! 俺が皆を回復させれば! セイクリッドヒール!!」
有志は、皆を助ける為にすぐさま自身の最大級の回復魔法を掛けた。
しかし、事態は悪化した。
「gばああ!!」
「ええぼおお!」
「ぎゃば!」
「!! そんな! どうして! どうしてなんだ!」
『これは一体!』
理解出来ない事態に、神も恐怖した。
『そんなバカな……まさか……信仰と有志の魔力に対して体が拒絶反応をしているというのか!』
「どういうことですか?」
神の言葉に理解が出来ないのか、有志は神に問い質す。
『体中から何故か毒素のような物を出して祝福を拒絶している……なぜこのような事になったのか分からない……先程調べたが体中から防衛本能として祝福を拒む毒素が放たれた! 一体これは……彼女達の信仰には何も迷いもないというのに!』
「そんな……私達の体が……有志を拒んでいるなんて」
「私だって! 子の体も心も全て有志に捧げている! それをどうして!」
「おかあしいよお! こんなのおかしいい!」
3人は、泣き叫びながら自身の現状を受け入れきれないでいた。
「まさか……俺の力が強すぎて……皆の体が耐えきれないというのか……そんな! 俺の才能のせいで!」
『!! っく! 確かに……有志は神の力をあの短時間で使いこなしていたようにも見えた……そしてさらに勇者としての力がある……神と勇者としての力が3人の体に負担を掛けていたとすれば辻褄が合う!』
「!! そんな……私達が弱いせいで」
「糞! もっと! もっと私達が強ければ……」
「私は妖精なのに……それなのに……」
嘆く3人に、神は慰めの言葉を送る。
『いや……安易に有志の体に憑依し、それをきっかけに神としての力を与えてしまった私が行けないのだ……だが例え3人に負担を掛けたとしても即死するような猛毒ではない……体を休めればすぐに完治し、再び祝福を扱える……申し訳ないがその時は苦しい思いをするかもしれないが魔王や西院円惑を倒すにはこの方法以外ない』
「!! 神様……俺は彼女達を苦しめたくは……」
「いいの、有志」
「そうだ……この世界は本来私達が救わなければならないもの……それを何の代償もなしに救えるとは思っていない……」
「私も……この使命を受けてから私はこれぐらいは覚悟していた……寧ろ命を失わない事を考えると安い代償だよ……でもこれでも使用制限が掛るのが悲しいけどね」
「みんな……おれ……頑張るよ……絶対にこの世界を救って見せる!」
『有志!』
3人は、有志に抱きしめられながら涙を流す。
『何という素晴らしい仲間達だ……これならば安心だ……』
神も確信を持って、3人の活躍を見守ることにした。
しかし、実は有志が神としての力と勇者としての力が上乗せされたことによって体が耐えきれなかったかと言えば、それは否であった。
答えは、以前から彼女達の体に存在していたあるものが、祝福に対して牙を剝いていた。
それは、イネのエイズウイルスであった。
感染者の体中の体液殆どに存在し、そして有志の信仰や祝福は状態異常を治す効果がある為、それらに反応する事を防ぐ為に、毒素を排出していた。
それは、彼女等の免疫機能を極限に弱らせて、更には回復魔法すら中和する毒素の排出により残った毒素が彼女等の体を蝕み、吐血をさせる程の体に負担を掛けていたに過ぎなかった。
イネは、そんな事を予想してテュリアメルを強姦したわけでも、感染を広げたわけでもないが、たまたまイネの体と共存を選んだことによって、彼女等のウイルスも身を潜める様になっていたが、それ等は有志の新たなチートとなる神の力を制限するものへと機能する結果となってしまった。
恐るべし、イネのエイズウイルス。




