記録209『負けない! 皆の為にも!』
有志は、Jr達の分散された攻撃に対して防戦一方であった。
「糞! コイツ等! 一人一人が!」
「はははははは!! 私はそんな強さじゃないぞ! 私は! わだあじいいいはああ!!」
ピア―Jrは、少しずつ体が膨れ上がりつつあった。
「アイツ! 自滅する気だ! 自業自得だ!」
「おばえ……ほんきで……いっでる?」
ピア―Jrは、顔を歪ませながらケタケタと嗤う。
「黙れ! 貴様は力に溺れた事による責任で罰が与えられるんだ!!」
「ぶ!! ぶははははははは!!」
だが、ピア―Jrは死ぬ事はなかった。
「あああ……そうですか……貴方はそういう事を言って欲情する変態さんですか? 気持ち悪いですねえ……いやあ……正義とは変態集団の集まりなんですかあ? 自分の言葉に酔って善がって……気持ち悪いぞ? 勇者?」
「黙れ! 酔っても善がってもない! 事実だ! 漫然たる事実だ!」
有志の聖剣が、突如光出す。
(ふーん……あの聖剣は本当の正義ではなく……勇者が正義だと確信すればするほど強くなるって事か……確かにこの世界には決定的と言えるような正義なんてない……いや……正義というのは大体が曖昧で歪だ……なら何を持って正義と呼べるのか……それは己が信ずる道であり、正しいと思う方向……神が示したものというより勇者が正義だと確信し続ければし続ける程威力が増すって事か……これ以上のヘイト行為は私自身が不利となるか……)
聖剣を観察しながら、ピア―Jrの歪に膨らむ体は徐々に人間の体へと変化し続ける。
「さてと……私の体も完成しつつある……サクラン・ドウ様の魔力や戦闘経験が入り込む……借り物ではあるが……私なら使い熟せる……どれだけあの方と私が一緒に居たか……」
少し嬉しそうのしながら、ピア―Jrは体の形成に集中する。
「っく! まさか! Jrを使って足止めを! どこまで卑怯なんだ!」
有志の言葉と同時に、聖剣の光は増す。
「不味いな……アイツどんな理由があろうと敵として勝手に邪悪判定してくるぞ……」
ピアーJrは、それでも集中して何とか体の形成を間に合わせた。
「さてと……ここからは、私も参戦だ……」
その姿は、サクラン・ドウのようなガリガリな姿ではあったが、どこか強者のような雰囲気を醸し出していた。
「貴様! 一体何をした!」
「ふう……なるほど……これは目醒めという奴ですか……」
ピア―Jrは、有志を見据える。
「何が目醒めだ! 貴様のような奴がそんな者になれるわけがない! 神の前に跪けええええ!!」
有志は、聖剣を構えながら、セイクリッドファイアーボールを撃つ。
「ほう……これは……」
ピア―Jrは、少し嬉しそうにしながらまるで分っていたかのように有志の攻撃全てを躱して、有志の頸動脈を斬り刻んだ。
「ぐぶああああああ!」
「有志!」
シャイニャスは、自身の斬り飛ばされた腕を回復させながら叫ぶ。
「来るな! 来てはダメだ! シャイニャス! レイシャ! レティリア! アイツはもう俺しか倒せない!! セイクリッドヒール!」
首筋の頸動脈を回復させて、何とか致命傷を塞いだ。
「血は減っていますが? 大丈夫でえすかあ?」
ピア―Jrは、嗤いながら有志の首に再び傷を付ける。
「まただ! どうして正々堂々と戦わないんだ! 子の卑怯者めえ!」
「神の力を利用している貴方が卑怯と言いますか? どこまで傲慢なんでしょうねえ……」
「違う! 俺は神に選ばれた正当な力だ! だから正義であり卑怯ではない! だがお前は違う! 自身が強くなる為だけに人の命を利用し、更に人を苦しめるだけの物だ! それを卑怯と言わず何だと言うんだ!」
有志は、言い返しながら攻撃を繰り返す。
「さてと、終わらせましょうか? ダークネスファイアー」
「!! 何だそれは!」
ドス黒い炎が、有志を襲った。
「セイクリッドファイアー!!」
何とか、セイクリッドファイアーがダークネスファイアーを相殺した。
「はあはあはあ」
「おいおい、もうへばったのか? カッコ悪いぞ?」
「黙りなさい! 有志はカッコ悪くありません! 有志は力強く! 逞しく! 勢いがあり! そして何より粘り強いんです!」
「おいおいおい、お前……いきなりS〇Xの話をするなよ」
「はあ! 何を言ってるのですか! ふざけないでください!」
シャイニャスは、ピア―Jrの言葉に怒りを覚える。
「え? まさかお前自分で気付いていないのか? ああ! そうか! 深層心理に……まあいいか」
「よくもシャイニャスを辱めたな! ふざけるなああああ!」
有志は、ピア―Jrの言葉に怒り、聖剣が光によって刃が見えなくなる程になった。
「ほほう、それが限界だな……オーバーヒートを起こしている様だぞ?」
「違う! これは! 正義の心だあああ! 俺は負けない! 皆の為にもオオオオオ! セイクリッドおおおおお!!」
有志は、聖剣を上に掲げて今までの怒りを溜め込む。