記録206『技の代償』
サクランとピア―Jrの連携は完璧であった。
「プロテクションの綻びを探しなさい……」
「はい……パパ」
緻密な魔力操作を行い、そこからシャイニャスのプロテクションの弱点を探し出す。
「見つけました! あのヒビです!」
「ああ、分かった……」
そして、サクランが指を差した瞬間、ヒビの入った部分から業火が出現する。
「きゃああああああああ! ヒール!」
「ほう……回復魔法も……」
少し関心を見せるサクランを見て、ピア―Jrは嫉妬の目で見る。
「パパ……ママや私以外に関心を持たないで」
「ははは、嫉妬とは嬉しいですね」
サクランは、楽しそうにしながらシャイニャスを見る。
「小技の多さだけは認めましょう」
「小技……ですって……これは私が懸命に……」
「これの事ですか?」
すると、
サクランは、手からヒール魔法を見せつける。
「!!」
「そして、これもこれもこれもおお!! 私は全属性魔王の他に、やろうと思えば聖魔法、そして闇魔法すらも扱えるのです……まあ本来ここまで仕えて多様性があると言えましょう……分かりましたか? 小技が多いと言った理由が……つまりあなたは小技だけが得意という事ですよ」
シャイニャスは屈辱を感じた。
(そんな……私はペプリア国でも神童と呼ばれたぐらいに自分の魔法の扱いに対して自信があった……でも……こんな男に……)
悔しそうにする姿を見て、サクランは嗤った。
「まだまだですね……たかが事実を突き付けられた程度でその無様を晒すとは……ああ……貴方に才能なんてないのですよ……確かにこの世では天才がいる……しかしそれは自覚してなるものではないのです……他人に認められた程度で図に乗っているようでは私の様に極意まで立つことは不可能……私は私の願いを叶える為に必死に今まで魔導を磨き上げた、貴方にはその目的も目標も存在しない……ただ自身が強くなっている事に対して悦に浸っているだけ……それは目標ではなくただのオナニーです……しかもただのオナニーじゃない……突き詰めない……ただの気持ちいだけで終わる下らないオナニーだ……世の中には芸術家が居ますが彼等は自身のオナニーを作り上げてそれを突き詰める事で極意に向かっている……例え他人に否定されようと……しかし貴方のそれは本当に人に認められるだけの汚らしいものだ……そんなあなたに我々を殺す術などありません……卑怯な事をしない限りね」
その言葉には、何処か確信めいたような意味が込められていた。
しかし、シャイニャスは別の事を考えていた。
(このままじゃ有志を助けられない! どんな力でも良い! どんな方法でもいい! 私も! 私の力を存分に発揮出来るようにしたい! そして奴等に一矢報いたい! そうすればきっと! 有志! 私に力を!)
この期に及んで、自身の力を信じ、更には有志に救いを求めた。
「ふ、まあいいでしょう……」
そして、何度も張るプロテクションを何度も壊す事で徐々に、シャイニャスの魔力を削って行った。
「きゃあああああああ!!」
「はははは!!」
「弱い……転生術をするまでもなかったかな? でもいずれ試したかった……追い詰められたと思い込む事で更なるステージに立てた事だけが貴方の価値だったね……それ以上はない」
ピア―Jrはケタケタと嗤いなっがら、シャイニャスを見下す。
そして、止めを刺そうとした瞬間だった。
「エクスプロージョン」
轟音共に建物が崩れていく。
しかし、ここはマジシャンハウスであり、マゾル国が築き上げた結界。
自動的に回復出来る。
シャイニャスは、建物から落ちた瞬間声がした。
『シャイニャスよ、聞こえるか?』
(!! 一体……)
『私は神だ……君を救う為に連絡を取っている、有志がもうすぐ来る! 君が有志に祈りを捧げたお陰で有志が魔王バファハイドに勝てる見込みが立てるかもしれない! 良いか! 君は今神としての魔法を有志と同じく使える! それを使ってこの危機を回避するんだ!』
「私に……神の魔法が……」
そして、シャイニャスの頭に一つの呪文が浮かんだ。
「セイクリッド……ヒール」
「「!!」」
圧倒的である、何か理解出来ない魔力を感じた。
「なるほど……いいでしょう……」
「パパ?」
「良いですかピア―……世の中には、確かに自身の野望を叶える為の極致があります……でもそれは野望や欲望、そして願いだけではありません……極地にはもう一つあります」
「それは何ですか?」
「ズルです……ズルも極地に立てばそれはある意味力なのです」
「パパ?」
ピア―Jrは、良く分かって無さそうにすると、無傷のシャイニャスが現れた。
「何で……エクスプロージョンは当たった……無傷なわけ……」
「げえっご!!」
だが、同時にシャイニャスは血を吐いた。
(これは……力を……神の力を扱った代償?)