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記録19『悲惨な跡地』

アレンは、一通り泣いて心を落ち着かせた。


「何があった」


そして、淡白に村人達に質問した。


「村長……実は、国の奴らにやられてしまって……お前等は国に貢献しない上、この土地を不当に占拠したと……不法滞在の罪状で処刑すると言われて……」


悔しそうに事情を話す男の手には、小さな子供が抱えられていた。

アレンは、知っていた。

その子供は、その男の子供ではない。

そもそも男の妻も子供もとっくに病気で死んでしまったからだ。

それでも、その男は未来ある子供の成長をずっと見守って来た心優しい男であった。

人間のまま死のうとしたのも、子供に怖がられたくないという思いから来ている事も知っていた。


「私は聞いた! アイツ等は私達は不要な存在だからだって! ペプリア国のファルトコン王も望んでる事だって!! それで……私の子を……アルーを……こんなにしてえええ!!」


泣きじゃくりながら、女は自分の子供を揺らす。


「俺達……これからどうすればいいんだ……」

「仲間がこんなに死んで……力が……俺達にもっと力があれば……」

「糞! 糞! クソオオオオオ!」


皆が、絶望している中、惑は姿を現す。


「話は聞いたよ、まあ大変だろうけど村の復興は諦めた方がいい、あの国の目的は魔族によって村が壊滅したという演出が欲しいんだから」


その言葉を聞いた瞬間、村人達は唖然とする。


「はあ!」

「何だよそれ!」

「いっ意味が分からない」

「どっどういう事だよ! 何でそんな!」


村人達は、惑に問い詰める。


「僕も詳しくは知らないけど、勇者に滅ぼした村を見せて魔族に襲われた事にしてたよ? その後勇者が去ってから、魔族に襲われた跡地としての観光名所になるとか、貴族達がそんな事を話してた」


村人達は、頭を抱え始めた。


「頭がおかしい」

「どうしてそんな事になる」

「もう言葉が出ない」


だが、惑は更に追い打ちを掛けるように村の方向へ指を差す。


「まだいるから聞いてみる? マジだから……」

「え……」

「嘘だろ」


アレンも村人達も、さすがに気になるのか、惑と共に村の方へと向かった。

すると、数人の貴族達が村を眺めるように見ていた。

まるで、自身で作った作品を見て浸っているかのようだった。


「いやあ……まさかここまで上手くいくとは……」

「我々も頑張った甲斐があった」

「うむ、あの下民共の住処ごと滅ぼす事で、魔族の仕業であるという雰囲気はあの勇者様の反応を見ただけで十分分かった! 我々は勇者様に魔族を憎む心を与え、容赦なく倒せる為、切っ掛けを与えたのだ! これは世界の救済の為であり正義だ! そしてここは魔族に破壊された悲惨な光景としての観光スポットとして完成した、これで我々は鉱石と勇者召喚の国として有名になる!」

「ロードル様! さすがです!」


そんな事を話している様子を見て、アレンは怒りに任せて飛び出ようとする。

しかし、惑に止められた。


「どうせ出たって勇者に村を滅ぼした魔族として殺されるよ?」

「それでもいい! 行かせてくれ!」


アレンは、頭に血が上って冷静になれなかった。

しかし、惑は続けた。


「君にとって奴等に負けるより、村人を襲った屑野郎として終わるのが一番屈辱的だと思うんだけど? 違うの?」

「!! それは……」


惑の言葉に、さすがにアレンは止まった。

アレンは、自身の村を救いたくてオーガになった。

しかし、惑の言う通り、今この場で奴等を襲えばアレン自身が大切な村を襲った残虐な魔族として扱われる。

それは、アレンにとって最低最悪の屈辱であることを、惑に教えられてしまうとさすがに泊るしかなかった。


村人も、悔しそうにしながらその場で押し留まる。

自分達が出たところで、勝ち目もない上、それをアレンの責任にされる可能性が出て来るからであった。

そして、村人は貴族達の事実を知る事が出来、その場を後にした。


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有志は、村の悲惨な現状を見て怒りに燃えていた。


「シャイニャス、俺……この村に人達の為、絶対に魔王に負けるわけには行かない……時間が掛かっても良い! ペプリア国で1ヵ月間力を付けて、確実に魔族や魔物を滅ぼせるように……」

「有志……ありがとうございます、我が国の村民の為にそこまで怒ってくれるなんて」

「そんな……俺なんてまだまだ」

「そんな事ありません、実際有志は聖剣を抜いて、そして騎士団長との稽古を受けた事によって力を付けている事は私にだって分かります、だから絶対に大丈夫です! ここまで慎重に私達の世界の事を考えてくれるだなんて……感謝をしても足りません」

「ありがとう、シャイニャス」


二人は、互いに抱き合いながらキスを交わす。


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イネは、惑に聞いた。


「惑? 魂視認が出来るんだよね? それで死んだ人は蘇らせること出来ないの?」

「探してるんだけど今死んだ人の魂が見当たらないんだよねえ……何でだろう? 生き返らせた人は近くにいたけど……まあそれでも死んだ人は魂は少し遠くにいてその後飛散した。

「飛散? え? つまり砕けたって事?」

「多分? よく分らないからそこもまた研究したいけど……今は現状の把握と今後どうすべきかを考える必要があるかな?」

「そうか……」


そして、惑とイネは、アレンや村人達と話し合う事になった。

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