記録204『合格者』
ピア―は、一通り終えると賢者モードになっていた。
「これは……力が奥底から湧き出てくるような……」
魔力の流れた、まるで自然に、その上自身の体を動かすような当然そのものに扱えるようになっていた。
それなりに、集中力が必要であり、術によっては呪文が必要である。
その全てが呪文なしで発動可能と思えるようである。
「これがイメージを極限まで高めた妄想力、想像力では勝てないのなら妄想による強化を行う事で更なる魔導の行使を試みるのです……動機とは不純であれば不純である程、上達が早いというでしょ? 私にとってそれが魔導を高みへと誘いました……」
「黙れ! 貴方達のその行動は許される事ではないです!」
「五月蠅いですねえ……貴方はまだ穢れていないから及第点で残そうと考えているのに……不合格にしますよ? 死にたいのですか?」
「!! それは……」
入門生の一人は、サクランに睨まれ体を強張らせる。
「分かればよろしい……」
そして、サクランは残った入門生達に説明を施した。
「分かりましたか? 私が行う修行内容を……妄想による性行為が貴方を賢者へと誘います……賢者の境地に何度も立つことが出来れば魔導の極限を立つ事が出来ます……」
「いやだあ……」
「気持ちが悪い……」
「へえ……」
「ひいい!」
冷たい目で睨むサクランに、入門生たちは恐怖で顔が歪む。
「ではいいですね? 開始です」
「いや! いやあああああああああああああああああ!!」
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「これが極限……これが強さ……これが魔力の境地!!」
ピア―は、自由自在に扱える魔力に感動を覚える。
「良いですね! ピア―……貴方はやはり才がある……ほとんどの者はそこまで辿り着けない……本当に悲しい事に……」
「全て先生のお陰です! でなければ私はここまで来れませんでした! さあ! そこの薄汚い者を殺しましょう! 殺して魚のえさにでも……」
「こらこら……それじゃあ魚が可哀そうでしょ? 汚い汚物を魚に食べさせるわけには行きませんからね」
「そ! そうでした!」
明らかにシャイニャスを馬鹿にする発言。
シャイニャスは、それでもプロテクションを冷静に貼り続けて耐えた。
「有志……有志いい……」
何度も何度の有志へ祈りを捧げ続ける。
「お願い有志……私達を助けて」
普通であれば、そんな事をしても無駄である。
有志は神ではなく勇者である以上、奇跡を起こす事は出来ない。
しかし、その時奇跡が起こった。
「!! これは!」
「な!」
「何ですかこれ!!」
シャイニャスの魔力がいきなりサクランやピア―の魔力量より上に立った。
「はあ! おかしいです! こんなの!」
「焦る気持ちは分かります……だが落ち着きなさいピア―」
サクランは、師範であるだけの事はあるのか、魔力を練る。
「私の魔力……ここまで高まるとは……有志に私の祈りが届いたみたいですね」
シャイニャスには、確信的な想いがあった。
それもそのはず、有志に祈りを続けた事によって起きた奇跡の正体は、有志の体に神が宿ったからである。
つまり、一時的ではあるが、有志は神様となったのである。
この世界で魔導を極めるには、自身の魔導に対する解釈を変え、更にイメージを強く持つ事である。
それをサクランは、妄想の力で引き上げた。
だが、もう一つ方法があった。
それは、神に仕えることである。
この世界を作り上げた神への信仰心が高いほど、神からの恩恵は強い者となる。
そして、それらを極め師者が修道女、大司祭等の信仰形の魔法使いである。
その者等が、強い所以の一つは神の恩恵を強く貰う事によって魔やアンデット、更には邪悪な者への相性が高くなる。
そして、邪悪と思われる者は、神がこの世で絶対に認めることのない者であり、今まさに、レティリアである聖剣の精霊である者が敵視する者と同期する。
つまり、現在邪悪の対象となるサクランはもちろん、ピア―もその対象として捉えられることが出来る。
「サクラン・ドウ……ピア―……貴方達は真実愛を持つ者を見下し更にはごみの様に殺していきました……そんな貴方達こそゴミであり、穢れです……私はそんな者を許すつもりはありません、有志と旅をする使いとして成敗します!」
「シャイニャス! 貴方はもうただの魔法使いじゃない! 貴方は有志を信仰する大司祭だよ!」
「ふふふ、ありがとう……レティリア」
その姿を見て、サクラン・ドウは本能で危険だと察知した。
「ピア―……申し訳ございませんが良いですか?」
「!! はい……でも私には分かる……これは死ぬのではありません……私が生まれ帰るのです……」
「はい……転生術を使います……覚悟は良いですか?」
「はい!」
二人もとっておきを出すつもりでいた。