記録203『入門試験』
「ああ……あああああ」
パンタメスは、恐怖で震え上がる。
目の前で、マイセルが燃えて、そのまま死体になった。
焼かれた肉と骨だけになり、見るに堪えない姿である。
「いやあ……いやあああ……」
「その穢れは不合格です……何が不合格になったか分かりますか? そこで転がっている貴方……正解すれば命ぐらいは見逃しますが?」
「ええ……えええ……あああ……」
「残念……時間切れ」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
パンタメスも、その場で焼かれて死んだ。
「あああ……ひいいいい!!」
「たすけてええ……たすけてええ」
貴族の魔法入門生達は、震え上がる。
「いやあああああああ!」
「ババラア!!」
ババラアは、悲鳴を上げながらドアから出て逃げようとする。
しかし、何度ドアを開けようとしても開ける事が出来なかった。
「何でえ! どうしてええええ!!」
「いやだ……いやだあ……」
「ああ……あああ」
ピア―も、圧倒的な魔力の前に震えていたが、それを目の当たりにして、恐怖が事実のものとなった。
(だめだああ……私は殺される……ここを乗っ取る為に準備をしていた私は絶対に……)
「殺されるですか? フフフ」
「!! ああ……バレて……」
「ええ……分かります……私の妄想力は今あなたが感じ取れるものでは測りしえない程の力を有しております……だが……殺されるというのは見当違いです……実に惜しい」
「え……」
ピア―は、キョトンとする。
「貴方には才がある……貴方には可能性がある……あのボンクラ教師は貴方の凄さに気付いていないようでしたが……実に悲しい……だが貴方は受かった……実力がある事は分かっていますし貴方であればあの試験は簡単でしょう……敢えて貴族が答えやすいような問題を混ぜても全く問題なかったなんて……」
「ええ……」
何が起こっているのか分からない状況に、一人の入門生が異議を申し出る。
「そいつは貴族では……」
「はい、不合格」
「いあああああああああああああああ!!」
そして、焼かれて灰となった。
余りの異常な状況に、入門生達は口を塞ぐしか方法がなくなった。
どんな言葉が、どんな行動が、どんな事が師範であるサクラン・ドウの機嫌を損ねるか分からないからだ。
「さて、貴方は合格です……そちらに立って下さい……最初は拒否していただいても構いません」
ピア―は、言われた通りに、サクランの指差す方向に、立ち尽くす。
すると、サクランが目の前に居るにも関わらず、何故か裸のサクランが現れた。
「拒否しますか?」
「え?」
すると、裸のサクランは、突如ピア―を剥いた。
「!!」
顔を赤くするが、ピア―は何処か嬉しそうであった。
「おや……その顔は初めてだからという訳ではなさそうですね……なるほど……答えてください」
「これは魔力の塊……魔導はイメージの世界……こんなにも完璧な自身を作り出すなんて……」
自身の分身を魔力の身で作り上げるのは難しい、そしてそれを視認するのは作るよりも難しい。
この中で視認出来るのは、今のところピア―のみである。
「ほほう、素晴らしい……では今からは誰からも見える様にと」
すると、魔力で作り上げられたサクランの姿は濃くなった。
「え」
「サクラン先生が……二人?」
「はあ……まああいいです」
サクランは、何かガッカリしながら自身の分身にピア―を襲わせた。
「……はあ……」
ピア―は、少しウットリとした表情でサクランに全てを委ねた。
「ピア―さん! ここで指導です! そこは貴方自身で受け止めるのではなく貴方も私の様に作り上げて受け止めるのです! それこそが元来の純愛! 純愛を力に変えなさい!!」
「は!」
ピア―は、サクランの教えを守る為、自身のいつも見ている裸体姿を思い出した。
「違います! 感じるのです! 理屈でなくイメージ! 何処のどうあるかじゃなく自身とは何かを当然にすれば考えるという行為を短縮できます!」
「はい!」
そう、自身の体は意外と自身では完全には理解出来ていなかったりする。
しかし、サクランは自身の体を当たり前のように理解出来ていた。
ガリガリの体、やつれた顔、隈のある目元、そんなものはいつも見ている。
だからこそ、感覚で理解出来ている。
それをピア―にも実戦させようとしている。
そして、ピア―は自身に意識を強く持った。
すると、ピア―の目の前に全裸のピア―が現れた。
「ああ……出来た」
「良く出来ました……動かせますか?」
「えっと……うう!!」
すると、裸体のピア―はサクランを抱き締めた。
「素晴らしい……このまま行為に進みましょう」
「はい!」
そして、二人は妄想を使って性行為を行った。
「「きしょ」」
「黙りなさい」
「消えないさい」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「いぎぎが!!」
一人は燃やされて、もう一人は体が爆発して死んだ。




