記録200『魔力生命体』
神が作ったルール、それは様々ある。
その中でも、生殖行為や妊娠にもルールが存在している。
宗教の中では、避妊を禁止している所もあれば、人工授精を生殖の尊厳に反するとして、認めていない場合もある。
そのルールは、この異世界でも存在していた。
寧ろ、この世界では人工的な妊娠などあり得ないと、そもそもから存在を全否定していた。
生物は、生物同士の愛と行為でしか、絶対に産まれるわけがないと考えられている。
その為、それ以外での生命誕生を考えもしなかった。
そして、その行為にまで至れない者は、全て生物としての欠落者として見下されている。
オスもメスも、分別なく生命としての義務を果そうとしない。
周りと違うというそんな生易しいものではなく、そんな簡単な事も出来ないのかという考え方であった。
だからこそ、この世界の全ての人間、亜人、獣人達は、親の進める相手との結婚、中には愛する者との結婚を強く望んでいた。
しかし、0ではなかった。
一人、そんな事すら考えない者が一人いた。
サクラン・ドウは、生まれた瞬間から人とは何かが違った。
「ねえ……今日……いいよ」
「え! 本当に!」
「キスして」
「ああ」
「貴方、愛しています」
「私もだよ」
それら全てを、サクランは蔑視していた。
「穢れている、下らない、頭がおかしい……そして何よりとてつもなく汚い」
サクランにとって、寧ろその行為自体が理解出来なかった。
自身の体を使って交わる行為。
寧ろ、それらの欲望をぶつけるなら別の方法があるのではないかという考え方をした。
その行為は、確実に自身を穢す。
穢さない為にはどうするべきか。
自身に宿る魔力によって様々な物事が解決する。
ならば、その魔力自体を上手く扱えば、自身の体を穢すことなく、必要な事を行う事が出来るのではというこの世界では歪な考え方であった。
どうしてそこまで、体との行為を拒むのか。
サクラン自身、その行為に対する欲望はあった。
しかし、それでも体を使いたいという想いは一切なかった。
ならば欲望を叶えつつ、生命としての尊厳を守る方法を考える人生を、サクランは考え続けた。
その為、まず行ったのは自身の魔力の練り上げと術式の構築。
それらを人生の全てを掛けるつもりで、行動をした。
母親と父親、そして兄弟はサクランの行動を異端だと罵った。
サクランは、そんな家族を邪魔だと判断した。
「死ね」
その一言で、家族は全員焼かれて殺された。
魔法の適性属性は、いかにその者が属性に対して上手くイメージ出来るかで決まる。
サクランは、その全てのイメージがそもそも簡単な事であった。
その為、この世界では珍しいマルチ適性の天才であった。
しかし、サクランの性格と容姿によって女性からは当然のように嫌われていた。
そんな自身を見下す女性達すらも、サクランは次々と焼いて殺した。
気に入った女性は、硬直魔法を使用して動けなくして、実験に利用した。
当然、実験に利用された女性達は全て壊れた。
第一に行ったのは、体に魔力を注ぎ込んで女性の腹に人間の体同様の形を作り上げて、自身の知識を植え付ける事をオナニーしながら行った。
結果は失敗し、その女性は気が狂った後、死亡した。
第二の実験は、妊娠した女性の人の体が形成される前に、自身の魔力を流し込み、相手の子供を自身の子供として乗っ取るという行為をオナニーしながら行った。
結果は失敗し、子供は中で死亡、女性は二度と子供の産めない体となって精神を壊した。
サクランは、必要のない女性として扱い、廃棄した。
第三の実験は、自身の種を魔力で取り出して、女性に植え付ける行為であった。
オナニーをして、種を取り出しそれを植え付けようと探したが、見つからなかった。
結果は失敗し、自身が種なしである事が分かっただけであった。
女性は、八つ当たりで廃棄された。
そして、次の実験に移る前に、サクランは30代になった。
30歳になって、サクランの魔力は突如飛躍的に上がった。
魔力を上げるには、純潔をも守り、その上で魔導を極めるという前提条件をクリアして、更に30歳になるという隠し条件であった。
生命を作る為に、魔導を極めたサクランは、その隠し条件をクリアしていた。
そして、自身の才能を理解したサクランは、ある事に気付いた。
「今マジシャンハウスにいる薄汚い男……穢れ男……奴はあの場に最適な男か? いや違う……少なくとも僕より強く無い者にあの場は相応しくない、ならば僕が奪おう……あの穢れからマジシャンハウスを奪い取ろう……」
そして、穢れの女生とその子供を殺害し、サクランはマボーを殺害した。
そして、第四の実験を始めた。
それは、イメージを使った子作り方法であった。
妄想で、目の前の女を犯し、そして、妄想により作り上げた幻影に魔力を宿す。
相手にその妄想との行為を強要し、魔力を相手に注入する方法であった。
そんなに上手く出来るのか、流石にサクランも不安を覚えた。
しかし、その方法は一発で成功した。
しかし、出来上がるまでには至らず、半々ではあった。
だが、今までで一番手応えがあった。
それからは、子供の体を研究し、その体を形成する為の術式を作り上げる事に専念した。
そして、幾度もの失敗を乗り越えて、サクランは遂に完成させた。
子供の体が出来上がる様な術式を構築し、それを種の様に魔力の膜で覆う。
それを妄想で女性の体内に注入し、卵子に受精させる。
そうすれば、自身の子供を完成させる事が出来るのでは。
そして、それは遂に成功した。
サクラン・ドウという、人間はこの世界で、神のルールに反する方法で、魔力生命体を作り上げたのであった。
知識の元は、自身の記憶を埋め込んだことによって、生まれた瞬間から、既にA級冒険者の素養を持つ元気な子供達が完成したのであった。
「さあ! シャイニャス・ペプリア!! 圧倒的不利を解くとご堪能あれ!!」




