記録199『絶望②』
シャイニャスは、入門生達に自身の知っている全ての魔法を教えた。
「貴方は水魔法の適性が高いのでこの書物をお勧めします……そして、技術に関しては私が教えれる範囲で教えますので」
「はい! ありがとうございます!」
「サクランが来られるまでに出来ることをしましょう……でなければ奴の独裁は続きます……」
入門生達も、必死でサクラン打倒の為の特訓を受けていた。
有志への信じる心を力に、50人全員が必死に頑張っていた。
そして、時は来てしまった。
サクラン・ドウが帰って来たのだ。
「皆さん……訓練の時間という訳ではなさそうですね……」
サクランは、呆れながら入門生を見据える。
「さて……穢れ女……貴方ですね……こんなくだらない事を始めようと考えたのは……」
シャイニャスを、見下すようにドスを効かせた声で問う。
「ええ! 貴方の事が許せません! 何故なら魔導という餌で貴方は自身の欲望を満たしているだけです! そんな事をして良いとは私には到底にも思えません!」
シャイニャスの怒りの言葉に、サクランは呆れ返る。
「分からないとは……本当に下らない穢れだ……やはり私は人を見る目が合ったようだ……貴方のような穢れをここで潰します」
怒りの籠った声に、入門生は戦闘態勢に入った。
「貴方は51対2で勝てるつもりですか! そう考えているのならば、貴方は身の程知らずです……そして、今の私達には勇者、天山……」
「まさか……天山有志如きを信じれば力に変換され強くなるとでも? そんな他人だ寄りの下らない妄想で私に勝つつもりとは……それに……51対2? ハハハハ! そんなのはすぐに覆せる……君の陳腐な妄想と私の偉大なる妄想……その実力差を見せつけましょう!」
「妄想なんかではありません! 全て事実です!」
どっちも譲らない口論、そんな事は一つの答えを示せばすぐに解決されてしまう。
事実という答えの前では、どれだけ言葉をぶつけようと無駄なのである。
「51対2を! 今覆す!! 想像妊娠魔導術……発動!」
「は?」
気持ちの悪い言葉と共に、サクランは魔力を飛ばす。
「いぎぎがあああああひぎゃああああああああ!!」
「いだいいだいいだいいい!!!お腹がアアアアア!!」
「ふぐらぶ! ぶgぶあああああああ!!!」
50人の腹が突如膨らみ始めて、50人の入門生が床に倒れる。
「皆! どうしたんですか!!」
悲鳴と共に、徐々に腹を抱え始める。
「いあy!! わがる!! なに! なんでええ!!」
「馬鹿ですか貴方達は? 私の妄想の何を観ていたのですか? これだから貴方達は成長がないのですよ? 妄想でも行為はしているんですよ……貴方の肉体がそれを現実だと認知し、魔力を注ぎ込むとそれを種に育つのです……そう……私の子供!! サクラン・ドウJrが!!」
『いぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
悲鳴を上げる入門生達全員の腹が突き破られて、50人の子供が現れる。
『オギャアア!! オギャアアアア! オギャアアアア!』
そして、一斉に目を開けて、赤ん坊一同がサクランの元へと浮かびながら整列する。
「これぞ創造出産召喚! 私の子作り法! サクラン・ドウJrトークンです!!」
「な……なあ……貴方はなんてことを……イカれています」
シャイニャスは、余りにも常軌を逸した魔術に、怒りと恐怖でいっぱいになる。
「そんな体たらくを見せていいのですか? 始まりますよ……私の子供達と私、そしてピア―との連携攻撃が、いや……狩りを教える為にもまずは子供達にさせるべきでしょうか?」
ニタニタと嗤いながらサクランは、サクラン・ドウトークンに攻撃をさせる。
「あ、そうそう、我が子達は丹精込めて魔力と私の知識を注ぎましたのでA級冒険者レベルはありますよ?」
「なあ!!」
『バブー! バブー!!』
泣き声と共に、様々な属性魔法のランスを弾幕の様に放つ。
「いやああああああああああああ!!! プロテクション!!」
ギリギリで、シャイニャスはプロテクションを張って防御するが、ヒビが入る。
「いいぐうういいぎぎぎっぎいいいいい!!」
口や目から血が噴き出しながらも、何とかプロテクションを張り続けた。
「なんて攻撃……有志……私をお助け下さい」
有志に祈りを込める。
しかし、そんな程度で力が手に入れば苦労はしない。
シャイニャスは、ランスに腕を貫かれる。
「いやああああああああああああああああああああああ!!」
「ハハハハハハハハ! ハアハハハハハハハ!!」
「あははははは!!」
悲鳴を上げるシャイニャスに、サクランとピア―が笑い声を上げる。
「無駄な信仰を見せて!! 下らない下らない!」