記録198『魔導を目指す者ならば』
「ああ……ああああ……」
マボー様は、ファルナスさんとミョウナスちゃんの死体を見て泣いていました。
「全く下らない男だ……魔導を目指す者とは思えない……」
「黙れ外道が!! 貴様のような屑に言われたくない! 人の愛を! 人の想いが魔導を進歩させるのだ! 人の心を知るからこそ人は人の為にこの世界を変えようとする!! 貴様の考え方は明らかに間違っている!!」
「なら勝ってみなさい……この私に……大切な者を二人も守る事の出来なかった魔導の探究者さん?」
「貴様ああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
マボー様は、怒りに任せてサクランに襲い掛かった。
「下らない戦い方だ……」
「アhギャアアアアアアアアアアアアアアアナバババババババ!!」
マボー様は、炎で焼かれた後、雷撃魔法が直撃しました。
私には何が何だか分からなかった。
「さてと、今度は……」
「や! 止めてえええ! マボー様ああ!!」
「氷結魔法と行きましょう!」
そして、そのままマボー様は氷漬けにされ、街にそれが晒されました。
「見よ! この無様さを! 大切な者を助ける事も出来なかった男の末路を!! 愛と言って自身を穢した者の! 魔導を冒涜せし者の末路だ! 下らないくだらない!! ヒャハハハハハ! さてと、このマジシャンハウスはこれから盟約に従い私が受け持ちます……入門する者は覚悟する様に」
それを言って、奴はこのマジシャンハウスを独裁し始めたのです。
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「何と言う外道……許せません!! 人の愛を! 人の心を! 冒涜して言うとしか思えません!」
「はい……それから奴は私達入門生を妄想の餌食にしていました」
シャイニャスは、ナナラの話を聞いて激怒した。
ナナラは、共感してくれるシャイニャスに感動を覚えた。
今まで、サクランの独裁によって、他の入門生達も絶望で反抗する意思すら奪われていたのであった。
「ナナラさん! 私はこのマジシャンハウスを! マボー様の意思を! 貴方こそが受け継ぐべきだと思います!」
「!! シャイニャス様……でも私にあの男を殺す手段が……それに例えシャイニャス様に手伝っていただいたとしてもあのピア―様にも勝てなかったのです! サクランの強さは伊達じゃありません!」
「確かに……私はあのピア―に負けました……でもそれは私個人の力によるものです……私には勇者……天山有志とその神様の加護を使えば勝つことが出来ます」
勇者という名前を聞いて、ナナラの目に少し希望が芽生えた。
「勇者様が……この近くに……」
「ええ、今はソードマンハウスにいると聞いています」
「!! ソードマンハウス……あそこも悍ましい三人組に奪われたと聞いています……今頃」
「大丈夫です! 有志がそんな者に負けるはずがありません! 信じることは力になるのです!」
その言葉を聞いて、ナナラは勇気が湧いた。
「そっそうですね……確かにこのままだと奴の思うがまま……信じればきっと勝てます! 何故なら私達には勇者様が付いているんですから!」
その声が聞こえたからか、他の入門生達も駆け寄る。
「それは本当ですか!」
「勇者様が! 近くに!」
「あああ! 会ってみたいです! きっとあのゴミと違って私達を大切にしてくれますわ!」
「ああ! 勇者さまああ~」
何処かトロンとした、紅潮した表情をする入門生達は、戦うための意思が芽生え始める。
「そうです! 勇者様を信じれば勝てます!」
「はい! 勝てます! 何故なら勇者様は正義なんですから!」
「私も! 正義は必ず勝つという言葉! 大好きです!」
「ええ! きっと正義は奴という悪を打ち倒します!!」
それぞれが、ぞれぞれの正義に従い、悪であるサクラン・ドウ、その愛弟子ピア―を倒すべく、熱を上げていた。
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「サクラン様……」
「分かっている……フン、思い知らせて上げましょう……私の妄想の押し付けと言う種がどれ程の効果を見せるか……楽しみだ」
サクランは、戦闘準備の為、魔力を練っていた。
「私も手伝います」
「頼む」
そして、二人は魔力の妄想練習を始めた。
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「サクラン・ドウ! 今度こそ貴方を殺して見せます!」
そして、入門生と共に、シャイニャスは有志に祈りを捧げ続けた。
「信じる! 有志様の正義を!」
「天山有志様……私は貴方に心を預けます……」
「ああ有志様……私にサクランを殺すための力を!」
「有志様あ~」
皆は、天山有志に信仰心を捧げ続けた。
祖の信仰こそが、彼女達の武器になるという事を信じて。
信じられる者は救われると有志が言ったのをシャイニャスは覚えている。
本当は、信じる者は救われるであり、何処か意味を間違っていそうな表現方法ではあるが、天山有志にそんなのは関係なかった。




