記録193『ソードマンハウスの閉館』
一人の女性は悟ったような表情で、3人の死体を見る。
「アイニー!! ようやく迎えに来れたよ!!
ファンタビーは、嬉しそうにしながらアイニーを抱き締めようとする。
「あの子が……」
「パパンカツがパパ活をしていた時にいたあの少女が……」
『うむ、これでアイニーも救われ……』
「うぐ!!」
神が言い終える前に、アイニーは鬱陶しそうな表情で合気を使用し、ファンタビーを押さえつける。
「邪魔……」
「!! アイニー!! 一体何を……」
ファンタビーは、信じられないものでも見た様な表情でアイニーを見つめる。
「で? 私が見る限り有志さん……いや……貴方の体を使って神が3人を殺したと思われますが……」
「!! 一瞬で状況を把握しただと?」
「当然です……ソードマンハウスは我々一族がずっと管理して来たものとなります……ここに入れば何が起こったのか……そして、管理課に入っている師範ポジションの者がどのような状況になっているかぐらい即座に理解出来るようになっております……何故ならこのソードマンハウスは我々の一族が作り上げた戦士育成システム性の結界なのですから」
「!! 結界!」
「馬鹿な……ただの建物だとばかり……」
『!! 確かに……私の目からよく観察すれば分かる事だ……どうして今まで気づかなかったと思えるぐらいに!! まさか……この神である私ですら欺く事の出来る巧妙な結界だと……』
神ですら、騙す事の出来る結界。
そんなのを作れる者が存在する事に、神ですら驚いていた。
「当然ですよ……そもそもこれは人間であるこの国……マゾル国が作り上げたんですから……」
「!! マゾル国だと!! まさか!! 1000年以上前から魔族と契約をして魔族になる事を目的とした人類の敵!! 反人間軍だと!! まだ奴等はそんなおぞましい事を考えているのか!!」
「まさか……アイニー……ここは……」
「魔族になる事の出来る人間を作り上げる為の戦士育成機関ですよ……魔族になるのもそれなりの才能か……もしくはそれなりの肉体と精神力が求められます……まあ二つあればほぼ確実に魔族へと進化を遂げられますが……」
アイニーの説明に、神は怒りを覚えた。
『ならここは潰して……』
潰す、その事を考えれば神はすぐにこのソードマンハウスを破壊する事が出来る。
しかし、西院円惑の信仰妨害のせいで神の雷を発動出来なかった。
もし行うとすれば最後の一回である、現世への顕界が必要となる。
それを使えば、神は消える。
神にはどうする事も出来なかった。
「なるほど……貴方が壊したのですね……ならばここも破棄される事でしょう……」
「待ってくれ!! まさか……僕を魔族に……」
「いえ……貴方は才能がないので100年ぐらい働いたら死んで貰う予定でした……まあこの三人が邪魔は父を殺してくれ、そして貴方との結婚を阻んでくれたからその必要もなくなったんですけど……だけどまあ……まさか殺されてしまうとは……」
少し残念そうにしながら、マイニーは死体を撫でる。
「でもそうですね……彼等は神をこの世界に顕界させるまで追い詰めてくれるとは……ある意味役目を果たしてくれました……この一部を持って帰ればきっとマゾル国の王……イビル・マゾル様はお喜びになるでしょう」
『!! イビル・マゾルだと!! まだ生きておったか!』
神は、怒りに燃えた。
「誰ですか! それは!」
『1000年前から存在した王……またの名を魔に魅入られし王と呼ばれていた! 奴がバファハイドをダークエルフと結託し! この世界に呼んだ元凶だ!』
「!! まさかそんな! 邪神をこの世界に!」
「はあ……はああ………はああああああああ!!」
マイニーは、呆れすぎて大きい溜息を三回吐いた。
「とにかく……私達はここを破棄します……一族が頑張って作り上げましたが……ルールである師範を殺した者が次の師範ルールに抵触している以上ここを使う事はもう出来ないです……ま、まだ保険が一つありますから可能性はありますが……そこも見て来るとしましょう」
そう言って、マイニーはそこを立ち去ろうとした。
「させると思うか?」
目の前に、有志が立ちはだかる。
「なるほど……勇者として私を逃さないと……ではこういうのはどうですか?」
そう言って有志に襲い掛かる。
「フン! 俺を倒せると思うな! 神様の憑依で俺だって……!!」
しかし、突如目の前にいたマイニーを見失った。
「なあ! どうして!」
と同時に、窓が割れる音がした。
「!! 逃げられた!! 糞! 襲う様に見えて逃げる事を優先したか!!」
有志は、追いかけようとするが既にマイニーは見えなくなっていた。
「有志!」
「ああ!」
『追うぞ!』
「ここは俺に任せて下さい! そして……マイニーと……捕まえたらマイニーともう一度話をさせてください! 絶対に! 絶対の彼女の目を覚ませて見せます!!」
「……ファンタビー……分かった! 任せろ!」
そう言って、有志達はすぐさま外に出てマイニーを探しを始めようとした。
しかし、その時であった。
突如、轟音が後ろで鳴り、振り返るとソードマンハウスが爆破されていた。
「そんな……ファンタビー……」
「ああ……馬鹿な」
『糞……ここまでするとは……』
その時、レティリアが現れた。
「有志大変!! シャイニャスが!!」
「!! シャイニャス……確かシャイニャスも修行を……」
有志は、急いでレティリアの案内でシャイニャスを助けに行った。




