記録192『師範の最後』
有志は、ファンタビーに話し掛ける。
「ファンタビー、あいつ等が居なくなった今、このソードマンハウスは君に託されることになる、それでいいかな?」
「お任せ下さい! そもそも師匠は俺にこのソードマンハウスの師範を任せる予定だったんです!」
「そうなのか!?」
その言葉を聞いて、有志は驚きつつもファンタビーに確認をする。
「師範をあいつ等が殺したと聞いた……どうしてか聞いても?」
「はい、アレは1年前の事です」
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師範は、俺の腕を見込んで娘さんとの結婚を許してこのソードマンハウスを譲ろうとしていました。
そんな時の事でした。
「うおおおーーーい! ここに12になる娘がいると聞いた! パパ活させろおおおおおお!!」
そこへあの外道、パパンカツが現れたのです。
「貴様何者だ! 娘とパパ活させろだと? ふざけるな! 今すぐ帰らないと痛い目を見ることになるぞ!」
当然師範は、激怒して怒号を浴びせました。
しかし、パパンカツは全く動じず寧ろ師範を見据えていました。
「へえ、ふーん、こいつが師範かよ……ただの老人じゃあねえかあ!」
「人を見た目で判断するな、わしが見るに貴様はまだまだ足りてもいない、そんなお前何ぞに娘を渡してたまるか!」
「お父様」
「お前は下がっていなさい、アイニー」
しかし、お嬢様は首を振られた。
「違うの、私の下着がないの、一式」
「下着が一式ないだと!」
「それは私の仕業だ! シターギガ参上! とう!!」
そして、性懲りも無くシターギガが現れて堂々と下着を着て見せつけのです。
「貴様あ!!」
「お、シターギガだ」
「ういいいい、酒はどこだあああああ!」
「次から次へと何だ!!」
「ランクゴ、お前も来てたのか?」
奴等は、いきなり入ってきて傍若無人を振舞いました。
「さあ、早くパパ活を」
「ここに良い酒があるって聞いた! 出せ!!」
「フハハハハ! 見よ! この美しいファションを!」
「ふざけるな! 貴様等!」
師範も我慢の限界で、奴等を追い出そうとしました。
しかし、奴等はとんでもない事をしたのです。
「ぐぬぬ! 分からないならこうだ!」
「貴様が悪いんだ! 酒出さないからだ!」
「下着の良さを思い知れ!」
まず、パパンカツが大振りで殴ろうと襲いかかりました。
その動きに合わせて師範は、足の腱を切ろうとします。
「なんてな!」
「な!」
そしたら、奴は師範の動きを読んだのか余った片手で師範の顔面を掴み、地面に叩き付けました。
「今だ! シターギガ!」
「下着殺法! 拘束下着!」
「うぐぐぐううう」
「師範! 貴様等師範に何……グハァ!」
「そこで大人しく見てな」
俺は、師範を助けようと加勢しようとしましたが、後ろから来ていたランクゴに後頭部を酒瓶で殴られて動けなくなりました。
「くそおお」
「オラ! オラ! さっきの威勢はどうしたよお!」
「うぐ! があ!!」
「師範!!」
「ハッハッハッハッ!! 手も足も出ない様だね!!」
「下着で口と鼻を押さえてやる!!」
「うぐううううう」
「オラァ! エールっ腹ブレース!」
「ンンンン! ぶっあ!!」
すると、師範は動かなくなってしまったんだ。
俺は悟った、師範は殺されてしまったんだ。
「……あ、やば」
「これ不味くね?」
「ああ……死んでるな……」
奴等も不味いと思ったのか、逃げようとした。
だが、アイニーが止めた。
「待って下さい、貴方達は私の父であり、このソードマンハウスの師範を殺しました」
「何だ? 嬢ちゃん、仇討ちか?」
「いえ、今日からここの師範であるのは止めしたパパンカツさんの喉蹴りだと確信しました」
「え? 俺のプレスは?」
「プレスも強力でしたが瀕死に追い込んでその後パパンカツ様の喉への蹴りがヒットし死にました、その為パパンカツ様が師範となり、他2人にはサブリーダー、簡単に伝えますとリーダーをパパンカツ様、副リーダーをランクゴ様とシターギガ様にお任せしたいと考えております」
奴等は、驚愕した。
だが、俺には分かっていた。
アイニーが、このソードマンハウスを、父の残した形見を存続させる為に、こんな辛い決断をしたという事を、このソードマンハウスの権限を担えるのはソードマンハウスの師範を超えた者のみである事が条件だ、譲る事でも可能かも知れないと師範は仰っていたが、奴等が俺にそれを譲るとは思えない。
更に、アイニーは続けた。
「これで母と娘である私は今日から貴方達にお仕えします、何なりとお申し付け下さい」
「おお! そうか! じゃあ……パパ活しようぜ!!」
「畏まりました、パパ」
「うーん!! 良いねええ!! 出来たら甘えた感じで!!」
「パパ〜、アイニーとデートして〜」
「おい! 酒持って来い!」
「ここにある女の下着を全部持って来い!!」
「畏まりました、母様!」
「はい、こちらにいらして下さい」
「まって……ぶはあ!」
「貴方は門下生でしょ? 稽古はどうしたのですか?」
「そうだ! 酒買って来い!」
下着を運ぶのを手伝え!!」
こうして奴等の傍若無人で最悪な稽古生活が始まったんだ。
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「何て奴らだ! 許せない!」
「ああ、1人相手に寄って掛かって!! そんな事は許されない事だ!」
有志の怒りに、レイシャも同意する。
「俺もそう思います! でも今はもう奴らもいない! 奥様とアイニーに知らせなくては!」
そんな時であった。
「パパ〜、どうしたの〜? 早く行こうよ〜」
少女が1人、ソードマンハウスに入ってきた。
「あれ? 死んでる? …なるほど、そういう事ですね」
状況を見て、少女は悟った。




