記録185『信仰』
有志達は追い詰められていた。
沢山いたはずの門下生達は、既に殆どが死体として転がっていた。
「糞!! なんて事を!!」
「ハハハハ!! どんだけ弱ええんだよ!!」
パパンカツは、嗤いながら有志を相手に余裕を出していた。
「油断していると痛い目を見るぞ!!」
「ほう? で? いつ見せてくれるんだ? さっきから待っているんだぞ?」
余裕の表情で、有志達を翻弄しながら門下生達を殺していく。
「破門! 破門! はもおおおおおん!!」
ランクゴは、割れた酒瓶で門下生達の首を正確に斬り付ける。
「糞!! こんな酔っ払いにいいい!!」
「勝てないってか!! だああはははははは!!」
ランクゴは、レイシャの鎧を酒瓶で斬り付ける。
「っぐ!!」
「お前さあ? どこまで弱いんだあ? 門下生共より格上かと思ったがよおお!! そうでもねえなあ!!」
「っく!!」
シターギガは、請け負っていた門下生の下着(女性)を全て奪った上で、切り刻んで殺していた。
男は、愛する者の下着を奪われ、更にそれを穢された事によって絶望の表情で涙を流して死んでいた。
「ギャアハハハハハ!! お前の下着も奪ってやろうかあああ!!」
そして、レイシャの股倉を見た。
「ジュルリ」
涎を垂らしながら、厭らしく指を動かす。
「糞!! 貴様あああ!」
シターギガは、素早く動いてレイシャの下着を奪おうとする。
その時であった。
『レイシャ……有志……聞こえるか』
「!!」
「この声は……」
その時、時は止まった。
同時に、有志とレイシャの動きも止まる。
しかし、それでも思考する事が許されていた。
『有志、レイシャ……君達のお陰で私は力を少し取り戻した』
「良かった……皆に信仰心を取り戻してくれたお陰で……」
「神様……バファハイドが……」
『ああ、分かっておる……西院円惑のせいでこの世界の希望が減り始めている……もう手段は選べん』
その言葉を聞いて、有志達は苦い表情を浮かべる。
『だからこそ私が助言を与える』
「神様!! そんな事をすれば!!」
「レティリア! シャイニャスのところを見ていたんじゃ!!」
「神の力を手に入れたとはいえこの世界に干渉し過ぎてしまっては!! 神様の身も危うくなります!!」
『良いのだ……私が責任を取れば良い事であればそれでよい……いいか! 有志! パパンカツは、相手の思考を洞察で読んでいるのは分かるな! 私に身を任せてくれ』
「!! 良いんですか!」
『ああ! 第三者である私が君の動きを変えてしまえば確実に勝てる! そしてレイシャ! ランクゴは、酒を多く飲む事によって千鳥足の状態で縮地を使っている! それを攻略するには奴の次の動きを私が教える! そして相手を詰め寄る技である縮地を千鳥足でも使い熟せる為の奴の見えている風景を見せる!』
「風景……そういえば沢山見ると言って……」
そして、神は有志に糸を張り、レイシャの目に力を籠める。
「な! 何だこれは!!」
何と、自身が大量に配置されている。
『奴は酒の飲む事で幻覚を見ている……それを自身の千鳥足になる方向へと配置しているんだ……長年のアルコール摂取によって自身がどう動くかを感覚のみで理解している……そこに自身の縮地で幻覚に詰め寄る技として利用している……つまりは仮レイシャと言ったところだ……』
「なんて気持ちの悪い!」
『そして、シターギガは厄介だ……奴は女の全ての匂いを追っている……臭いを目で追っても奴がどの匂いにつられるか……そして繊細さを打ち砕く事は難しい……だから二人で倒すんだ!』
「「はい!!」」
そして、時は動き出す。
「ほらほらほらああ! どうし……なああ!!」
パパンカツは、唖然とする。
読んでいた動きとは違う動きをした有志は、回り込む様にパパンカツに詰め寄る。
「馬鹿な!! お前はさっき左に……うおお!!」
パパンカツは、寸前で躱した。
「っく!! だが!!」
「な! なんだあ!!」
ランクゴは、縮地を使った瞬間目の前に本物のレイシャがいた。
「貴様!! どういう!!」
「貴様には分からない! 一生な!!」
「うおお!!」
それでもランクゴは、上手く避けた。
「臭い臭い臭いいいいいいいいいいいい!!」
俊敏な動きで、レイシャの下着を剥ぎ取ろうとする。
しかし、何かに弾かれる。
「な!! なんだああああ!!」
いきなり動きも技も、そして触れることすら出来なくなった。
「馬鹿な! 何だこれは! ふ! ふざけるな!」
「糞! 不正だろ! こんなの!」
「どうやって勝てばいいか一瞬分らないだと!」
しかし、それでも一瞬だけ戸惑うが、それでも3人は有志とレイシャの勝利する為の方程式を組み上げる。
「ならばこれならどうだ!!」
有志に、突っ込むようにパパンカツは、突進する。
「っく!! だが!!」
有志は、パパンカツのタックルを受けてもそのままヘッドロックを決める。
「ぐば!! ばばばばば!!」
動きを制限されながらもなんとか技でヘッドロックを抜けようとする。
「放すかああアアアアアアア!!」
「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」
パパンカツの歯は、ひびが入りながらも食い縛る。




