表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/474

記録176『さよならマイッゼル』

「そん……そんな……俺は……どうすれば」

「ここまでだ……下種野郎が」

「ひいいいい!!」


マイッゼルは、惑とバファハイドに置いて行かれて泣きじゃくっていると、後ろから冷たい声が聞こえた。

有志は、聖剣を強く握り容赦のない表情で構える。


「貴様のせいで……どれだけの罪のない人達が死んだと思っている……」

「ま! 待てええ!! そうだ! 西院円惑!!! 西院円惑の潜伏先を知っている!! その情報を吐くから助けてくれえええ!!」

「……良いだろう……さっさと言え」

「有志! こいつはティーカー都市の人を殺した最低の屑です!! いくら情報があると言っても罪を償わせないのは!」

「大丈夫だ……命までは取らない……それだけだ……それ以上の事で罪を償って貰う」

「あ……ああ! 良いだろう」

(しゃあああ! この馬鹿は思ったより無能だ!! ただただ自身の独善的な想いを叶える為だけの善がり馬鹿だ!! 罪を償うにしても牢屋とかに入れられてからだ! 俺に外せない鍵などない!!)


そんな事を考えながら、マイッゼルはほくそ笑む。


「で? 西院円惑のアジトは何処だ?」

「あ? ああ! そうだな……えっと……西院円惑のアジト……」

「どうした? 言えないか?」

「いや! ちょっと待て! 今思い出す!」


(おかしい!! 記憶が! 思い出せない! 何処だ! いやそもそもどうやって魔王の魔道自動人形を作ったんだ!! 思い出せない!)


頭を抱えながら、必死に思い出そうとマイッゼルは頭を掻き毟る。


「ああああああああああ!!」

「いい加減にしろ……もう待たんぞ?」

「ちょっと待ってくれ!! 今! 今思い出すから!! お願いだから待ってくれえええ!!」

「もういい……お前の命もここまでだ……」

「やだ!! やだやだあああ!! 俺は利用されたんだ! 唆されたんだ!! そうだ!! 悪いのは奴等だ!! 西院円惑だ! そうだ俺も被害者だ!! だから俺だってお前の保護対……」

「ホーリーインパクト」

「嫌だ! 待て!! ま……」


必死の抵抗を終える前に、ホーリーインパクトが直撃した。


「イギギッガアアアギイガイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


マイッゼルは、光の中に包まれた。

有志は、チリになったマイッゼルを見下す。


「結局こいつは自身の欲の為にしか生きることの出来ない屑か……」


有志は、チリを足で崩してそれを地面に擦り付けた。


「貴様はそのまま染みの様にしみったれた人生を受け入れろ」


そして、有志達はそのまま立ち去った。


---------------------------------------------------------------


「ねえ? 惑?」

「うん?」

「どうしてマイッゼルを見捨てたの?」


イネの質問に、惑は首を傾げながら答える。


「別に見捨ててないよ?」

「え? でも魔王に命を助けて貰う時マイッゼルの事を言わなかったのは何で?」

「え? だってあいつも開発に関わってたんだよ? 僕が庇わなくたって助かる方法はある……それを見抜いたまでは良かったんだけど……途中から自分で魔王の配下になった……つまりもう僕の手から外れてしまったという事だ……彼も本望もだろう……」

「え?」


エレンは、惑の言葉の意味が分からなかった。


「だって、最後には魔王様の為に死ねたんだよ? 尊敬した者、愛した者、大切な者の為に死ねるって事はこの世界にとってとってもとっても素晴らしいっていう倫理をどっかのネット掲示板で聞いた事がある……でもそういう眉唾っぽい物ですら言葉を聞いてそれが真理だと思えるならそれはある意味で真理だ……僕は誰が言ったから素晴らしいじゃなくて、誰であろうとどれだけの価値ある言葉を言ったかで進化は始まる……僕はそういうタイプだから……なので彼も幸せに決まっている……」


エレンは、良く分かってなさそうな表情になった。


「そうですか……それは……まあ幸せでしょうね」


取り敢えず同意することにした。


---------------------------------------------------------------


「魔王様……和平の方は」

「爺……久しいな」

「!!」


バザルは、恐怖が体の中から溢れ出た。


目の前にいるのは、自身が仕えた史上最悪の魔王と呼ばれた邪神。

バファハイドであった。

バファハイドは、現魔王の首を持っていた。


「此奴は殺した……和平なんぞという甘い言葉に縋った罰だ」

「それは……はい」

「爺? 貴様は何故此奴の言葉に乗った……理由次第では万死に値する」

「……魔王の権限ですので」


バザルの言葉に、バファハイドは溜息を吐いた。


「はあ……まさかこんな程度の低い奴が権力を振り翳して威張るようになるとは……嘆かわしい……まあ良い……ならば許そう……で? 貴様はどうしたい? 今なら真実でも殺さないでおいてやろう」

「ははは、お戯れを……私がどうしたいかは既にご存じのはず……」

「確かに」


バファハイドは、ワイングラスを持ってバザルに渡す。


「飲め」

「ありがたき幸せ」


バザルは、酒を一気に飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ