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記録16『遊び』

「あのグズは一体何をしているんだ!」


ラマガルは、怒りのままにグラスをメイドに投げつける。


「うう!」


額に血を流しながら、床で割れたグラスを片付ける。


「全く! 魔族如きが! 命じられた……いや、言いつけ一つも守れんのか! 子供以下か!」


ラマガルは、息を鳴らすように、涎をダラダラと垂らし唸る。


「どうかしましたかな? ラマガル殿」

「!! これは……宰相の御子息の……ロードル様!」


ラマガルは、すぐさまお辞儀しながら跪く。

そこには、丸々と太った少年が立っていた。


「いえ! 実は私が隷属させていた魔族の反応が消えまして、恐らく死んだかと思います! それで言いつけも守る事も出来ない無能さにヘきへきしておりまして!」

「なるほど、確かあの使わなくなった村の子供を攫っているのが流行っているんだったな、もしかして言いつけとはその事か?」

「!? えっと、その……」


図星を突かれてラマガルは、慌てふためく。


「そんなに震えるな、安心しろ、私も父も、それにファルトコン王でさえもあの村がなくなる事を願っている」

「!! それは……どういう?」


希望に縋るようにラマガルは、ニタニタと嗤いながらロードルの話を聞く。


「君も知っているだろ? 我が国で勇者が召喚された事を」

「ああ! たしか天山有志という御方が異世界から召喚されたと」

「そして我が国の洞窟に聖剣が見つかった……その聖剣から漏れ出た魔力が希少な鉱石を生み出している、それだけでも我が国は潤っているが勇者様がその聖剣を抜く事で観光地としても他の国の者が訪れる事となるだろう、そうすればもう我が国で食糧を生産する必要はない! 寧ろあんな村があってはせっかくの観光地が台無しになる、ならばあの村には滅んで貰い、魔族軍侵攻の跡地にして、魔族軍がどれ程恐ろしいのかという演出スポットにすればいいのではという意見があってね」


ラマガルは、ロードルの話を聞いて目から鱗であった。


「なるほど、確かに迫る絶望の前に降りた希望……そうすれば勇者様の魅力がより伝わり! 更には魔王がいかに恐ろしい存在であったかを知らしめることが出来るのですね!」

「それだけじゃない! この演出を残す事により、我が国で勇者召喚と聖剣を抜いた事実が歴史として後世に語り継がれていく! そうすれば最早存在するだけで我が国は安泰なのだよ!」


ロードルは、演説を終えると気持ちよさそうにし、ラマガルに提案をする。


「ラマガルよ、5日後に我々はあの村に視察に行く、一応は我々の領地の一つだからな……その時にあの村人共を殲滅する事となっている……出来れば君にも手伝って欲しいのだが?」

「!! よろしいのですか! そんな楽しそうな事に誘っていただき!」

「ああ! ぜひ来てくれ! 他にも友人を呼んでいる! あの村を焼き打つ事でまるで魔族が襲ったかのような演出に見せるんだ!」

「ありがとうございます! このラマガル! 懸命に働かせていただきます!」


ラマガルの言葉に、ロードルは微笑む。


「では、5日後までに準備を進めてくれ」

「は! おい貴様等! 何をボサッとしておる! 荷支度の準備をしろ!」

「はい!」

「承知いたしました!」

「ついでに冒険者バワカとアワホを雇え! オーガを飼う時役に立ったからな!」


その言葉を聞いて、ロードルは残念そうにする。


「申し訳ない、ラマガル殿……実はその冒険者なんだが……勇者殿に対し、理不尽な暴力を振るうという問題を起こして冒険者登録を剥奪されたのだよ……」

「そうだったのですか! それは失礼いたしました!」

「いや、いいのだ……伝えていあかったこちらのミスだ……すまない」

「いいえ! そんな! 教えて頂きありがとうございます!

「そうか、では頼んだぞ」

「はい!」


こうして、5日後にラマガルは村の殲滅部隊に参加する事となった。


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ロードルに対し、執事のような男性が声を掛ける。


「良いのですか? 子供達だけで……」

「父上も私に任せると言って下さった、それに役に立たなければ奴を捨てればよい、命を懸けて村を守った貴族として名が残るのだから文句はあるまい、まあたかが弱った村人にてこずる事もあるまい」

「確かに……分かりました、私達もついて行きますのでどうか怪我のないように」

「ああ! 分かっておる!」


この行動が引き金に、この国にとんでもない災いが降りかかる事となるとは、まだ彼等は知らなかった。


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アレンは、イネとの特訓でだいぶ動けるようになった。


「ワニャアアア!」

「フン!」


4日間で、イネのハイスピードで繰り出される拳、フットワークによる移動での錯乱、動体視力を見て攻撃を躱す動き等を覚える事により、攻撃を守り、躱す動作を習得、攻撃のタイミングによってはイネに当てる事が出来た。

そして、イネとの訓練が終わったある日の事であった。


「よし、明日から魔物と戦おうか? 近くの森でファングがこの村を襲おうとしている、それを退治して食い止めよう! 大丈夫! 私が付いている! 何かあればすぐに加勢するから!」

「はい! 師匠!」

「うんうん、仲が良くて素晴らしい」


その言葉を聞いて、アレンは惑に微笑みかける。


「俺は貴方にも感謝しています、貴方のお陰で本来もっと時間の掛かる特訓がこんな短期間で魔物を倒す許可が下りました! きっと俺がこの村を守ってみせます!」

「うんうん! その意気その意気! 改造した甲斐があったよ! 森には僕も付いて行くよ、ちゃんとデータを取って君を強くするからね!」

「はい! ありがとうございます!」


アレンは、惑とイネに感謝をしながら今日ももつ煮を食べた。

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