記録172『仕方ないなあ』
有志は、何度もウェルットの首の後ろにあるチップの外角を壊そうとする。
「ホーリーインパクト！ ホーリーインパクト！！」
「くが！！ だが！！ 勝てる！！ 首筋に何度も攻撃しても無駄だ！！」
ウェルットは、指を少し上に動かす。
「ぐああ！！」
有志は、チップに集中しているせいで簡単にウェルットの攻撃を受けてしまう。
「糞！！ 何処に！！ 何処からくる！！」
それと同時に、有志はウェルットを見失い、再び攻撃を喰らってしまう。
「っぐあ！」
「有志！！」
「見えた！ シャイニャス！！ 合わせてくれ！！」
「レイシャ？ 何か考えがあるの？」
「分かりました！」
有志をサポートする為に、動き出した。
「良いか！ 有志を襲っているのは確かに奴だがそれは奴が使っているのは遠距離の物理だ……目に見える何かではある」
「なるほど……その当たる瞬間を狙ってプロテクションを張るという事ですね？」
「ああ！ お願いだ！！ 見つけ次第私が斬り倒す」
「お願い！！ レイシャ！」
惑は、思いっきり話し声に聞き耳立てていた。
『で？ どうする？ ウェルット？』
「大丈夫だよ……無視して良い……僕は勇者を殺す事が目的だ……今のままじゃダメだ……なら敢えて追い詰めて欲しい……そしてアレを実行して貰えるようにお願い」
『今のままでは勝てないのは分かるけど……今でも良いよ？』
「ごめん、少し覚悟が欲しい」
『分かった』
惑との通信が終わると、戦闘に集中する。
「くらえ！！ ホーリーインパクト！！」
「うぐ！！」
だが、有志の攻撃はウェルットの腕に当たって壊れた。
「あ！！ 何て事だ！！ 糞！！」
「フン、そんなんじゃお前は勝てないぞ？」
ウェルットは、煽る様に戦闘を続ける。
「糞！ 子供になんてことを言いわせる！ 屑が！」
「俺何も言ってないけど……」
惑は、少し苦笑しながら答える。
「黙れ！ 貴様さえいなければアアアアア！！」
「……まあこれからそうなるかもねエ」
「え？ どういう事ですか？」
「まさか……いや違うよな」
惑の不敵な笑みに、エレンとマイッゼルは青ざめる。
「今だ！！」
「はい！！」
シャイニャスが、プロテクションを張って有志の一部を包む。
「こ！ これは！」
背中には、拳に形をした鉄の塊があった。
「やっぱりサイボーグはロケットパンチっしょ？」
惑は、嬉しそうにしながら共感を求める。
「黙れ！ はあ！！」
レイシャは、そのまま拳を壊した。
「っく！！」
「ありがとうレイシャ！ シャイニャス！ これで集中できる！！」
そして、有志は攻撃を気にすることなくウェルットの後ろへと移動した。
「これで最後だ！！ ホーリーインパクトオオオオオ！！」
そして、ウェルットの首にあるチップの外角に直撃した。
「やったぞ」
「ふむ」
「ああああ！！」
「ヤバイヤバイｙバイア！」
惑以外の二人が焦る。
「はあ……期待外れだ」
惑は、目を凝らしてウェルットを見る。
「あれ？」
「なんで？」
エレンもマイッゼルも、不思議そうに見ている。
「なんだ？ 攻撃……いや当たったが壊れてないのか……外角が」
「えええ」
「びっくりしたあ」
ウェルットのチップを守る外角は未だ破壊されていなかった。
「仕方ない……君達の想いに根負けしたよ……俺が壊して上げよう」
「！！ 糞！！ バカにしやがって！！ 当然だろ！！ ウェルットを解放しろ！！」
惑に対して、有志は怒りを込めて言い放つ。
「は！！」
「何考えてるんだ！！」
二人は、唖然としながら止めようとするが。
「えい」
惑は、あるスイッチを押した。
「ばあかあああああああああ！！」
「糞ガアアああああ！！」
二人は、惑に罵声を浴びせる。
すると、ウェルットの首にあるチップは爆発して、ウェルットの後頭部が爆ぜる。
「！！！ 貴様……なんて事を……」
「酷い」
「貴様……子供を弄ぶだけ弄び……道具にように捨てるのか」
「何て外道……」
あまりの悲しさなのか、3人は涙を流す。
「いや……弄ぶのはこれからさ」
「ああがああああああああ！！」
ウェルットは、首を引掻き出す。
「な！ 何だ！」
「ぐっぐあがうがうがうがあああああああああああああああああ！！」
呻きながら身体がボコボコと膨らみ出す。
そして、皮膚から血管が浮き出て内出血を起こし皮膚から垂れだす。
「貴様！！ 西院円惑！！ ウェルット君に何をした！」
「君が望んだことだよ？」
「黙れ！！ こんなの望んでなんてない！！ ウェルットの洗脳を解けと言ったんだ！」
「？ 何か勘違いしているみたいだけど……ウェルットのそのチップは洗脳じゃなくて制御装置だよ？ あ！ もしかして漢字一文字間違えた？ 良くあるよくあるうう！！ テストでのケアレアミスに繋がるから気を付けてね！」
「黙れえええええええええええええええええええええ！！」
しかし、惑を襲おうとした瞬間、背筋が凍るような感覚が走る。
「なに！ この感覚！！」
「ひいい！！」
「ああ……そんな……貴方なんてことを」
レティリアは、何か分かった様にウェルットを見る。
