記録165『試してワクワク実験!』
「凄くないが必須だと? 偉大である事がそんなにも」
「いけない! そうそれがいけないんだ! 僕等は偉大じゃないから知ろうという欲求と好奇心が生まれる! 神に対して憧れるのは弱いからこそだ! 力強い者を神格化するのはある意味では憧れからなるものだ! 憧れるからこそその力を手に入れようという想いが生まれる! その想いこそが僕等の力の原動力だ! だが君は祖先の偉大さを笠に被って自身を認めて貰う事にヤッケになっている! いいかい! 錬金術師に必要は認めて貰える事ではなく好奇心と弱さと憧れだ! 君の祖先もそうだったんじゃない? だからティーカー都市を作った……それを君は……」
「……私は間違っていたのか……あの開発も……間違っていたと?」
涙流すマイッゼルに対して、惑は頷きながら肩を叩く。
「開発は間違っているかは分からないが……考え方が間違っていた……まあ奴等はそこに付け込んだかも分からないけどね……本当に君の開発が恐ろしかったのか、それとも嫉妬か、それとも勇者がいるからか……」
マイッゼルの膝は落ちた。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!」
そして、そのままボロボロと涙を滝のように流しながら呻く。
「じゃあどうすればいいんだ! 俺はあの研究の為に全てを費やした!! しかし! しかしそれを否定されれば俺の人生の殆どが無駄になる! 祖先たちの想いも無駄になる! 勇者の代わりに作り出す者達は……それを作るのにどうすればいいというのだあ!」
その姿を見た惑は、背中を摩る。
「それは未だに作るに至ってないという事だよね?」
「ああ、……その通りだ……そしてそれは永遠に叶わない……」
「?? 国の人は君に作ってはいけない理由としては勇者がいるからと危ないからっと言ったんだね? どう危ないのかは聞いた?」
「いや……勇者に比べれば弱いだとか……後世に残る物は危ないとか……俺の様に力に溺れるとか……」
「ふーむ、つまりはどんな災いが起こるのかも、勇者より弱いかも、力に溺れるのも……結局予測だけって事か……」
「ああ……その通りだ」
「なら試せばいいさ」
「は?」
「へ?」
「また始まった」
「プランに出来る事ある!!」
「皆の者……また何か始まるから準備しろ!」
惑の言葉に、エルフ二人は固まり、エレンは呆れ、プランはワクワクし、ドワーフは慌ただしくなる。
「だってそうだろ! 僕等錬金術師は好奇心と弱さと憧れが大切! 今この研究には好奇心となるものがある! 奴等はナニに怯えているのか! 勇者と比べて何が劣るか! 力に溺れるような力とは? 具体的な内容がない! ならその具体的な内容に好奇心が働くとは思わないかい?」
「!! 確かに……俺はそれを知らない……知らないという事は知りたい……俺も錬金術師だ……知るという喜びは知っている……その好奇心の心を知っている」
「そうだ! 君も焦がれただろ? 素晴らしくも焦がれたその想いが僕等の大切にしてきた想いだ! 試してワクワクな実験を始めようじゃないか! ひとまず! そのティーカー都市は君が居なくなったから貴族の遊び場になっているはずだ! 金儲け? 善がる為の街? ならば君の裁量でどうにかして良いと思わないかい? だってそこは君の祖先が作ったんだろ? つまりは所有物だ! 破壊ならば破壊をすればいい! 創成なら創成をすればいい! それが僕等の信ずる科学と呼ばれる正体だ」
嬉しそうに語りながら、惑はマイッゼルの開発の話を進めた。
「ほほう、改造人間か……魔物を組み合わせるの?」
「いや、違う……我々は古代の遺物を見つけた……そしてそれらをほぼ完全な者として作り上げる事が出来る!」
「それは?」
「古代の魔王だ」
「!!! 古代の……魔王? そう言えば現代の魔王は?」
「いや……古代の魔王だ……現代の魔王は強いが……だが古代の魔王は歴代最強と呼ばれている……そして現代の魔王は未だ成長中だ……云わば今の勇者と同じだな……」
「勇者? ほほう、つまり今の勇者も魔王も……現在古代には勝ててないと?」
「その通り、古代の魔王は勇者を瀕死に追い詰める程だった……だが負けた……だから勇者に劣ると言われている……」
「ぶ!! マジかよ……」
流石に、惑は吹き出してしまった。
「おいおい、馬鹿に」
「してるさ! だってさあ! 瀕死に追い詰めたのに……ぶふうう!! 勇者に劣るって!! ああははああははははは!!」
腹を抱えて大爆笑した。
「いやいや、だってあはははは! だめええ!! ちょっと待ってええ!」
「ああ、……ぶふ!!」
マイッゼルも、今考えると笑いが止まらなくなった。
「「ギャハハハハハハハハハ!!」
笑いは、しばらく続いた。
イネはそんな二人を見て、呆れた。
「はあ、この二人は気があるかもしれない」
そして、テュルメアスとミュリュアメルを抱いた。




