記録151『おめでた』
「ペガサスが妊娠してしまった!!」
イネの言葉に、一同が驚愕した。
「え? コイツ雌なの?」
「違うんだ惑! ペガサスは無性なんだ!!」
イネは、言い訳をするように惑を説得する。
「で? どうするんですか? 無性なのは分かりますがこれでは剥製にするのは……」
「? 別に構わなくない? 堕胎させれば」
「止めてええ!! 私子なの!!」
惑の無神経な言葉に、イネは泣き喚いた。
「でも生まれるまで時間掛かるだろ? どうする?」
パラベは、呆れたように言った。
取引相手とは少なからず延ばせる。
しかし、馬の妊娠期間は11カ月、どうするべきかを皆悩んだ。
すると、貴族の取引相手がやって来た。
「いいではないか……」
「ラバナルバ様!」
ラバナルバと呼ばれた貴族は、少し楽しそうにしながら現れる。
「まさかペガサスの子供が見れるとは……なかなか目の保養として良い! 私は珍しい物好きでね! その子供を見てみたい! コレクションには出来なくともね!」
ラバナルバも少し、乗り気でペガサスの子供が生まれるのを楽しみにしていた。
「ふむ、まあ僕も実はいうと生まれる子供に興味がある、なら生まれるまで僕等で面倒を見れば良い! でもペガサスって聖魔力を与えればいいの? なら餌係はプランちゃんになってその観察を皆で交互にするという方向で行けばいいのかな?」
惑の提案を聞いて、皆納得した。
「剥製はどうするんじゃ? しないのか?」
ドワーフの言葉に、貴族は嗤う。
「剥製にはしてくれ……私も使いたいからな」
「全く物好きだなあ……」
ドワーフは呆れる様に、頭を掻いた。
「さてと、ワシは時が来るまで待つ以外ない、後は任せる」
ドワーフは、部屋を出た。
「さてと、ペガサスを追っている奴等を撃退しながらペガサスの出産に付き合う……イネ、君ではなくエレンに任せる、プラン、実験の為に今回は実戦となる……11か月間はここがバレない様にしないとね」
「はい」
「わかった~!!」
嬉しそうにしながら、プランはエレンの肩に乗っかる。
「集落だから大丈夫だと思うが……聖魔力に引き付けられる可能性もある……プラン、君の高聖魔力を出してペガサスの偽装をし続ける……栄養となるものは多く必要だな」
「となると食料とか……まあここには備蓄がいっぱいあるし貴族もいる……すまないが珍しい物を見る為に色々と出費してくれますか?」
「構わない、その程度の出費、私にはなんてことない」
そう言って執事に大量の食料の用意を指示した。
「プランなら何でもおいしいよ! 土でも草でも人間でも動物でも魔物でも魔族でも全部全部聖魔力に出来る! でも聖魔力に変える度に疲れるから沢山必要! だから食料であればもっとあれば良い!!」
プランは嬉しそうにしながら、貴族の食料を楽しみにしていた。
プランはまず、ドワーフの大量の失敗作を食べ尽くした。
「美味しい美味しい美味しい美味しい美味しいい!! とってもとってもおいしい!!」
プランの聖魔力は、味の良しあしによって決まる。
その為、在庫をいくら食べても大した聖魔力得られる事はなかった、プランの言いたい事に理由を理解出来始めた。
「プラン、これは一流のシェフが作った食べ物の一つだ、いる?」
「いるー!!」
プランは、美味しくステーキを食べた。
「聖魔力ううううううううう!!」
「うむ、実に高い聖魔力を得られた」
プランの体から大量の聖魔力が溢れる。
「ちょっとだけ抑えて」
「うん!!」
プランは意識して、聖魔力を抑える。
「さてと、外に出ようか? 集落の外に出てここから離れよう」
そして、惑はイネを残してエレンとプランと共に外へと向かった。
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「ペガサス……一体どこへに攫われたのでしょうか?」
「分からない……だが西院円惑の事だ……奴に酷い目に遭わされないように守らないと」
「確かにそうだな……このままだとペガサスまでもが奪われてしまう」
「これ以上奴の好きには出来ない!」
有志の言葉に、レイシャも同意する。
「私も! ペガサスから放たれる聖魔力を……!!」
レティリアは、何かに気付いた。
「どうした?」
「いま……物凄い大量の聖魔力を感じた……何これ……力だけなら有志と同等……いやそれ以上かもしれない」
「何!! そんな……奴が……」
「これはまさか……西院円惑が人体的に作った……その可能性があるよ!」
一同が、恐れた。
西院円惑が、勇者を超える何かを作ろうとしているという悍ましい事実を、そしてそれらが勇者である有志を襲おうとしているという恐怖。
それは、世界の奪われる可能性や魔王と手を組まれる可能性を秘めていれば脅威そのものであった。
「すぐに止めないと! でなければ手遅れになるかもしれない!!」
「俺が止める!! 奴を倒さないと魔王を倒しても意味がない! なら止めるべきは西院円惑だ!! 狡猾な奴を必ず討ち取る!!」




