記録148『自身を作る』
「ちょちょちょおお!! やめ!!! ヤバいってええ!!」
イネは、天才的な感覚で寄生エレンの攻撃を避けていた。
「ぐがあああああ!!」
「プラン? エレンの自意識ある?」
「ちょっとギリギリかな? 少し慣らしは必要かな?」
暴走するように乱暴な攻撃を繰り返すエレンを、難なくイネは躱す。
「うーん……びっくりはしたけど……そこまで難しい感じではないな~エレンちゃんそんな程度なの?」
「ぐが!! ぐぎいい!! うるざあいいい!! イネエエエエエ!!」
「あ! エレンの意識が少し戻った!」
「うんうん、イネが良い刺激になっている……これこそが互いに高め合うって事かな?」
「うおおお!! 言っていいる場合……うわあああ!!」
イネは、野生の勘を徐々に研ぎ澄ましていく。
「ヤベえやべえ!! うわお!!」
何とか攻撃を紙一重に避けて良き、更に避ける動作を小さくしながらエレンを見据える。
「ぐがああ!! くらええええ!!」
エレンも、徐々に自身を取り戻して攻撃が最適化されていく。
「エレンちゃん、最適化するのは良いけど……それだと読みやすい……非合理的な動きも混ぜないと……そんな事をしてどうするみたいな動きも混ぜないと……人なんだからさ」
イネは、体につるを刺し込みながらイネを掴んだ。
「ぐが!!」
「せい!!」
そして、そのままイネはエレンを頭突きで昏倒させる。
「いいでえええ!! いだいいだいぢあい!!」
「はいはい、採取……そして合成」
惑のスキルで、イネに空いた穴は塞がった。
「ふー」
「いいね君! 本当に良いよ!」
「そりゃどうも」
イネは、溜息を吐きながら惑の頭を小突く。
「痛い」
「五月蠅い……いきなり始めるな」
「君なら大丈夫でしょ? そこに関しては信頼しているから」
「はあ……」
イネは、惑に対して呆れながらも笑う。
「まあいいね! エレンちゃんもこんな無茶な方法を取れるようになればいいね……復讐は何も生まないなら自身の命を賭して叶えればいいよ、囚われるなというけど逆に囚われない方がおかしいよ、そうやって非合理な考え方もあの勇者にとってとてつもなく厄介そのものになるよ? 君にはそれしかないと思えるほどの強い復讐心を持とう!」
「……」
「エレンちゃんがブス―ってしてる」
「ははは」
「お姉ちゃん大丈夫? プラン無理させ過ぎた?」
「大丈夫……囚われれば……もっと囚われなければ……殺す……絶対に殺す」
「良い願いと目標だ……視野を狭べろ……見るべきものを一点に集中させろ……周りは気にするな……君が殺すべき相手は?」
「ペプリアの生き残った姫、騎士、そして召喚されて勇者……」
「君自身が討つ?」
「他は良い……誰が殺しても……勇者は私が殺せるなら殺す……どんな卑劣でもどんな卑怯でもどんなやり方でも……運が良くても良いから殺す……死んだ死体を見て実感すれば復讐は出来る……」
「ックックック」
惑は、嬉しそうにエレンの頭を撫でた。
「ビジョンを見ろ……勇者を殺す為のビジョンを……そして怒りを力に全神経を使って今出来る事の全てを取り入れろ……その後の体の事は気にするな……なーに、死んでも復讐を遂げればいいだけの事」
エレンの目には、ドス黒い炎が灯る。
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「有志……大丈夫ですか」
「ああ、大丈夫だ……今だって皆を愛せてるだろ?」
「ああ……今日も良かった……」
「嬉しい……有志」
「落ち着きます……本当にありがとう」
有志に、4人は抱き着く。
テュリアメルは、涙を流しながら有志の腕に縋る。
「テュリアメル……君の心の傷を忘れさせる……イネ……あの子はきっと西院円惑によって操られている……彼女を解放して俺の愛で目を覚まさせて上げるよ」
「有志……何て優しい……」
「そして、エレンちゃん……彼女に偽りの真実を与え……俺を復讐させるという卑劣なやり方……俺が気に喰わないからって相手の精神を脅して利用するなんて……下劣その者だ……奴の思い通りにはさせない……エレンちゃんの目を覚まさせないと……そして森の精霊を助けて皆俺の愛で解放するんだ」
「きっと出来ますよ」
「ああ! 有志の愛は特別だ!」
「きっと皆喜ぶよ!」
有志は、嬉しそうにしながら皆を抱き締めた。
次の日、勇者一行は買い物に来ていた。
「レイシャ、刀を特注で作らせたよ! ドワーフの若衆が丹精込めて打ったらしい!」
「有志、ありがとう!!」
レイシャは、嬉しそうにしながら有志に抱き着いた。
「シャイニャスには杖だ! これは鉱山で取れた希少な素材で作って貰ったものなんだ!」
「ありがとう! 有志!」
「レティリア! これは妖精族の力を引き上げるネックレス!」
「ありがとう!!」
「テュリアメル! この弓と弦はドワーフが昔取ったドラゴンの素材で作ってくれたそうなんだ!」
「ありがとう!!」
そして、有志は、皆の装備と道具を揃えると、再び旅に出た。




