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記録13『改造人間前診察』

アレンは、惑達のいる小屋へと向かう。

自身が改造人間になる事で、村を守る為にはその方法以外思い付かないからだ。

そして、今日がその当日である。

緊張しながらも、アレンは小屋のドアをノックした。


「御免下さい!」


しかし、反応はなかった。

不安になりながら、アレンは何度かドアを叩き続けた。

すると、ドアがゆっくりと開いた。


「ああ……来たんだね……入って」


そこには、酷く顔色の悪い惑が立っていた。


「え? 大丈夫ですか?」

「大丈夫大丈夫、ちょっと昨日色々としていてね……それで少しMP不足なんだ……まあ入ってよ」


フラフラとしている惑に、案内されて用意されていた椅子に座らせられた。


「じゃあ僕は少し寝るよ……万全の状態で君を改造したい……大丈夫……きっとうまくいくから」


そのまま、ウトウトとしながら惑は眠りに着く。


「あ! すみませんね! 惑が、昨日からずっとネズミで実験して、それを私が退治してたんだよ、大丈夫! 私はまだ起きれるから! 魔物が来ても気付けるし村の護衛は滞りなく出来るよ!」

「ハハハハ、そうですか」


まだまだ元気そうにしているイネを見て、アレンは苦笑いを浮かべる。


「多分45分ぐらいで起きるからそれまで寛いでて」

「はい、分かりました」

「ちょっと飲み物持ってくるね!」

「お構いなく」


アレンは、イネを見送ると、少しの間椅子で寛ぐ。


「ん?」


すると、いすの腰掛けに何か紙が括り付けられていた。

紙を解いて開封すると、そこにはこう書かれていた。


『イネの用意する飲み物は飲まないように』


アレンは、何が何だか分からなかった。

先程、飲み物を用意すると言って奥に入ったイネからの飲み物を受け取らないのは失礼ではないかとも考える。

手紙を読んでいると、イネが一人分の飲み物を運んできた。


「お待たせ、さあどうぞ!」


笑顔で、飲み物を置いたイネの表情は、アレンが見ても分かるぐらい、何かを企んでいるように嗤っていた。


「いえ、お構いなく」

「いえいえどうぞ」


しつこく飲み物を勧めるイネに、アレンは少し恐怖した。

イネも、なかなか飲みそうにないアレンを見て、焦れったくなったのか、飲み物を手に取りアレンに迫る。


「いいから飲んで! すぐに良くなるから!」

「何を言っているんですか!」


イネが、無理矢理に飲まそうとする為、アレンは抵抗する。

そして、その反動のせいで飲み物の入ったコップは落ちて地面で割れた。


「あああ! もおお!! せっかく入れたのにいいい!」

「何でそんなに飲ませたいんですか……」


アレンは、イネの執着に少し恐怖しながら距離を取る。

イネは、不機嫌そうにしながら黙って寝室に向かった。


「ええ……何なんだアイツ……」


不審に思いながらも、イネに警戒を向けながら、惑が目覚めるのを待った。


そして、45分後


「おはよう」

「うわ!」


惑は、本当に45分で目が覚めた。


「そんな早く起きて大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと目が覚めてるから」


惑は、立ち上がると零れた飲み物を見た。


「やっぱりアイツ……」


そして、濡れた床を見ながら雫をすくい臭う。


「精力剤か照……イネえええ!」


大声でイネを呼ぶ。


「何? 惑お~」


イネは、つまらなそうにしながら現れる。


「この精力剤は君が倒したネズミの睾丸で作った?」

「!? こう……」


アレンは、股間を押さえながら顔が引き攣る。


「私が倒したもん、私が使っても良いと思ったんだけど?」

「その為に残しておいた、感覚でそういうのも何となく……いや君の場合は嗅覚があるか……それで作れるのも凄いな……」

「べつに……ただ私自身が匂いを嗅いで興奮出来るように作っただけだよ」

「調合の為のテイスティングは凄く重要な事だよ、味を見たり香りを感じたりして品質とか異常がないかを見分ける為って聞いた事がある……ネットで」

「? ね? は?」

「何でもない、こっちの事……それより早速君の改造を始めようと思うんだけど……取り敢えずこの契約書をよく読んでサインしてね」

「へ?」


渡された書類を読むと、そこには改造を施す前の注意事項と書かれていた。


「何ですかこれ……」

「見た通りの注意事項、それをよく読んだ上で改造手術を施行しても良いならそこにサインをしてね、ちゃんとよく読んでね……健康状態にもよるから、後ここ質問事項ね」

「わっわかりました」


そこには、改造手術による副作用や失敗の可能性、現在の健康状態と病歴の記載欄があった。

他にも、煙草は吸っているか、酒は飲んでいるか、どのくらいのペースで吸ったり飲んだりするのかを記載するように指示されている。

そして、注意事項には、人間の改造に対して、死に至る可能性、後遺症の可能性、副作用などが記載されており、死に関しては拒絶反応、魔力不足による死、後遺症は、改造部分の壊死、麻痺、場合によっては脳障害を起こし、植物人間になる場合等が記載されていた。

副作用は、鬼人化による疲労、慣れない体による運動能力の低下、オーガとしての弱点が現れたり等が記載されている。

一通り書き、読み終えたアレンは、契約書を惑に渡す。


「病歴はなし、でも昔頬が腫れて苦しかった、おたふく風邪かな? 煙草も酒もしていない、現在気になることもないと、薬も飲んでいない、まあそんな金あったら食料に回すか……取り敢えず君自身も見るから」

「見るって……ちょ!」


そう言うと、惑はアレンの目や胸に耳を当てて心音を聞いたり、肺の呼吸を調べたりした。


「うん、あまり精度は良くない状態で調べたけど大丈夫だろ……熱は……」

「うおお!」


惑が、突然顔を近付ける為、アレンは飛び退こうとするが、頭を押さえられ動けず、そのままデコを合わせられる。


「うん、平熱だな」

「びっくりした……」


アレンは、驚きながらもされるがままになっていた。

そして、惑は説明を続ける。


「じゃあ、次は改造のコースを選んで貰うね」

「こーす?」

「まず一つ目は、完全オーガコースで君自身の遺伝子にオーガの遺伝子を組み込んだ上、魔石と角を合成して、スキルを全部君自身に追加する事で、人間とオーガの融合体になる改造、二つ目は半完全オーガコースで遺伝子は組み込まずスキルや魔石、角を合成して見た目と力だけをオーガと近くする改造、三つ目はオーガ能力コースでスキルだけを君に追加して強くする、ただし鬼人化だけは組み込まない、何故なら魔力不足で体を壊して死に至るから、どのコースにする?」


三つの選択肢の中から、選ぶように指示され、アレンは悩んだ。


「惑さん、どのコースの方がリスクが高いですか?」

「一番危ないのは半完全オーガコースかな? 何度も実験した中で、魔石による拒絶反応で死んだネズミの数が多かったら、メリットとしては見た目はオーガでも一応は人間として生きる事は出来る、2番目に危ないのが完全オーガコース、人間ではなくなりオーガと人間の融合たいだから魔石に対する拒絶反応がほとんどなくなる、なんせ完全にオーガという魔族と同化するから、でも遺伝子的に合わない個体は死んだから2番目に危ない、一番安全なのは能力オーガコースだ、なんせ人間の状態でオーガのスキルを追加して人間として強くするからね、出も魔物を倒せるかといわれれば本人のポテンシャルも影響してくるから改造手術の安全性的にはお勧め出来るけど村を守る事に関してはお勧めできないよ」


その言葉を聞いて、アレンは考えた。

自身が一番叶えたいことは何であるのか、見た目も心もそのままの人間として力を付け村を守るか、見た目だけをオーガにして、死ぬ可能性を視野に入れてでも心を人間のまま村を守るか、それとも、人間を止め、見た目も完全にオーガにして何が何でも村を守り通すのか。

少し悩んだ結果、アレンは決断した。


「完全オーガコースでお願いします、俺には村を守る使命がある、その使命を守る為には妥協は許されない、人間のままでは他の魔族や魔物に勝てる保証はないし、だからといって半完全オーガでは更に強い魔族や魔物を確実に倒せるとも限らない上、改造で死んでしまっては元も子もない、だからこそ俺は覚悟を決める、心も体を売ってでも親父の残した、そして妹が守ろうとしている村を絶対に守りたい! だから錬金術師さん! お願いします!」


惑は、黙って頷きながら微笑んだ。


「その言葉が聞きたかった……出はさっそく改造へと移る、覚悟は良いかな?」

「ああ! 絶対に力を手に入れて見せる!」

「イネ! 君は村の警備をしておいで! 凄く長くなるから徹底的に!」

「分かった!」


イネが外に出て行くと、惑とアレンは寝室へと向かった。

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