記録133『見返してやれ!』
オプセテは、有志達と一緒に魔物の森へと入って行った。
「この森であれば魔物がいつでも現れる、ヘイト笛を吹けばやってくるがどうする?」
「いや、そこまでしなくて良い、俺の為に少しの危険を皆に負わせるわけには行かない……勇者である貴方がいれば大丈夫でしょうがこれは僕の冒険者としての矜持です」
「!! 素晴らしい心掛けです……例え強くなるためとはいえ、冒険者としての誇りを大切にするあなたのその素晴らしい心をいつまでも守ってください」
オプセテは、嬉しそうにしながら魔物を待った。
そして、森の奥から物音が立つ。
「gっぐあああ!!」
ゴブリンが10体現れた。
オプセテは、剣を構えてゴブリン達を見据える。
そして、スキルを発動する。
「2秒!! 体の動きが早くなった!!」
「凄い!! 2秒ごとに動きが洗練されている!!」
「何て速さだ……しかも力強さもある!!」
「ゴブリンがあっという間に倒されていく!!」
「凄いです!」
6体のゴブリンが、斬り殺されて、残りは4体となった。
4体は、距離を取って矢や投擲をぶつけてくる。
「ぐg!!」
「なんて卑怯だ! 魔物は! 特にゴブリンは知恵を付けているから尚質が悪い!」
「人間の知恵をそんな風に使うな! 外道共が!」
有志とレイシャは、ゴブリンの行動に怒りを覚える。
しかし、それでもオプセテは冷静になりながら息を大きく吸った。
そして、吐き出すと同時に投擲物を跳ね返した。
「ぐが!!」
「ぎぎゃ!!」
「ぶふう!!」
「っぐいいい!!」
一体以外は、殺された。
そして、一体は逃げようと森へと向かうが、オプセテのスピードが一気に速くなり、そのままゴブリンを斬り殺した。
「凄い!! 凄いですよオプセテさん!」
シャイニャスも、驚きながらオプセテを褒める。
「こんなすごい冒険者を捨てるなんて! きっとその冒険者は愚かだね!」
「はい! きっと嫉妬していたんですよ! そんなくだらない人達の事は忘れて! これからは自分のパーティーを組んで新しい冒険者としての人生を送るべきですよ!」
レティリアとテュリアメルは、オプセテを捨てた冒険者を罵倒し、オプセテを褒めちぎった。
「そうだな……そんなくだらない奴等はきっと今頃ダンジョンで君を捨てた事を後悔しているだろう……俺には分かる、その時はきっぱり断ってやるんだ! 悔しがっている姿はスッキリするぞ! ザマアって言う奴だ!」
「なるほど! 分かった! ありがとう!」
オプセテは、喜びながら有志と共に冒険者ギルドに戻った。
そして、5人は自信満々にオプセテを出送った。
「頑張れ!」
「期待しております!」
「貴方のような冒険者が増える事を願っている!」
「君は素晴らしい冒険者になるよ!」
「私も応援しています!」
「はい! ありがとうございます!」
嬉しそうにしながら、オプセテは受付へ行った。
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次の日であった。
「オプセテさん!」
「!! 勇者様! 昨日はありがとうございます! 今日パーティーを誰かと組もうと誘ってみようと思いまして!」
「そうか! 頑張ってくれ!」
そんな事を話していると、受付嬢の声がした。
「何ですって! パーティーパパルが戻ってきていないですって!」
「パパル?」
「俺を追い出したパーティーです」
「!! きっと今頃ダンジョンで君を捨てた事を後悔して……」
しかし、そんなザマア展開を期待していた有志の心を裏切るようにギルドのドアが開いた。
「戻りました」
「……」
「……」
『!!!!』
戻って来た冒険者達を見て、ギルドにいたオプセテ、そして勇者一行以外が何かに気付く。
「あれは?」
「俺を追い出したパーティーパパルです……あれは俺を追い出した元凶のパパルリーダー」
「フーン……それほど強そうには見えないがな」
有志が、パパルの悪口を言ったが、パパルは少し見ただけで無視した。
「何だアイツ……」
「有志に図星を突かれて気まずいんですよ」
「全く情けない男だ」
そんな中傷をしていると、袋から大きな宝石を出す。
「これは!! ジュエルタイラントの核! 魔力高石!!」
受付嬢は驚きながら唖然とする。
「すまない、いきなりジュエルタイラントが現れてな、対応に追われた」
「いえ!! 寧ろA級冒険者であるパパルパーティーが対応するべき相手ではないのに! よくぞ無事で帰ってきてくれました!」
「ああ、かなり追い詰められたが、何とか勝てた」
「はい! この核を見れば分かります……核を取るには倒さないといけません! そんな相手に勝てたなんて! きっと貴方達はS級冒険者として認められると思います! なので出来るだけギルド長には私が言います!」
「ありがとう……頼む」
少ない言葉数に、他の冒険者も少しビビりながらひそひそ話す。
「嘘だろ? アイツ等本当にパパルパーティーか?」
「前ダンジョンに入った後とは全然違うぞ? 雰囲気が全然」
「ダンジョンでジュエルタイラントに会ったんだ……一皮も二皮も剥けるだろうよ」
「そうだな」
そんな期待の目に彩られ始めていた。




