記録116『壊滅』
「何だこれは……」
有志は、目の前の現状に恐怖した。
何も残っていないのである。
全てが焦土とかしたクレーターのような光景に、怒りすら覚えた。
「そんな……ここは亜人であるリザードマンがいたのに……そんな沼である柔らかな土すら……こんなに……」
「前に来た時にはこうではなかった……リザードマンの戦士とも私は知り合いで魔王への戦いの為、協定を結ぶ護衛として来た事だってある」
「私もその場にいたわけではありませんが、何度かここには訪問しました……」
「酷い……誰がこんな……」
「西院円惑……こんなことが出来るのはアイツしかいない」
「そうだね、僕がリザル君を強くした結果、この爪痕を残せた……」
突如後ろから声がして、有志は振り返る。
「西院円惑おおおおおお!!」
「ヤッホー! ララルア街以来だね!」
嬉しそうにしながら惑は、手を振った。
「貴様あ! 自分が何をしたのか分かっているのか!」
「うん! 凄いでしょ! これが科学の力さ!」
「何が科学の力だ! 貴様の身勝手でどれだけ罪のない者が死んだと思ってるんだ!」
有志の言葉に、惑は首を傾げる。
「おかしいな? それは君も同じじゃないのか? だって以前の街でぷー子ちゃんを、最後に会ったララルア街で人間の汚染に苦しむドライアドを、無法地帯では支配者アルマダさんを殺したじゃないか? それは君にとってはノーカウントなのかい?」
「黙れ! それは貴様が人を唆し変えてしまったからだろう! それをぬけぬけと俺の責任にするのか! どれだけ貴様は卑怯者なんだ!」
「ふーん、なるほど……僕の思い通り君のエゴは着々と育っているようだね……僕のこんなくだらない煽りにも屈しないぐらいには正義はしっかりしてきたようだ」
「何が言いたいんだ!」
惑は、ニタリと嗤いながら言い放つ。
「掌の上ってことだよ」
「貴様あああああああああああああ!」
その言葉と同時に、有志は惑に襲い掛かった。
そして、そのまま聖剣で斬り付ける。
『残念! 記録ってこういうふうにも使えるって知らなかった……全くスキルは精神によって左右されるとはよく言ったものだ……ここに僕のメッセージを残した記録を置いたんだけど……上手く会話が予想出来て良かったよ』
惑の姿は、記録スキルで残しただけのホログラムであった。
『ね? 言ったでしょ? 掌の上だって! それよりいいの? この跡地を作ったのは確かに僕が作った者だけど、者って事は元凶がいるよ? 例えここに僕が本当に居て殺せたとしてもこの跡地を作った存在を殺さない限りこの殺戮は続くよ? さあどうする? 勇者? どうするヒーロー?』
「糞おおお!!」
『じゃ! 健闘を祈るよ!』
そして、残されたホログラムとして残っていた記録は燃え尽きた。
と同時に、目の前に大怪獣リザルが現れた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
圧倒的な大きさ、圧倒的な破壊力、圧倒的な絶望感、有志以外の仲間達にもそれは伝わった。
「有志! 逃げてください!」
「ドラゴンだと! どうしてここに!」
「どら……ゴン? これは本当に? それにしてはあまりにも」
「有志! 本当にまずいよ! 何か異様だ! そのドラゴン!」
「皆! 俺はだい」
「大丈夫じゃない! だから早く! 私を信じて!」
レティリアの必死の言葉に、有志は悔しそうにしながら逃げる事を選択した。
「糞おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
咆哮と共に、腹にある核らしき部分が白く光り輝く。
「そんな……何あれ……おかしいよ……早く皆逃げてえええええええええ!」
「え!! え!! エスケープ!!」
シャイニャスは、有志が近くに来た瞬間、逃走魔法を掛けた。
と同時に、キノコ雲を上げながら、大きなクレーターがもう一つ出来た。
----------------------------------------------------------------
「はあはあはあ」
「シャイニャス! 大丈夫か!」
「ごっごめん……なさい……でも……少し……はあはあ」
恐怖のせいか、シャイニャスは過呼吸となっていた。
「今は休ませよう、近くに町があるはず……そこの宿屋に……」
レティリアは、完全に元気がなくなっていた。
レイシャもテュリアメルも訳が分からないのか、動揺が激しかった。
「一旦休もう……このままでは勝てない」
有志は、口から血を流しながら宿屋へと向かった。
----------------------------------------------------------------
「惑? いいの?」
「いいのいいの!」
惑は、嬉しそうにしながらプランを観察していた。
「プランならあのメテオ以上の核になれるよ! 同時にエレンお姉ちゃんの正気を失わせないように排出と吸収を同時に行えるんだ!」
「凄いねエ! あの研究をして良かったよ! 見て分かっただろ? やりたい事!」
「うん! 惑凄いよ! 勝てるイメージが湧いてきてよ!」
プランは、嬉しそうにしながらエレンを見る。
「ね! エレンお姉ちゃん!」
「うん、そうね、頑張ろう……私はその為の剣を磨く」
エレンの覚悟を見てプランは涎を垂らす。




