記録115『大怪獣リザルがやって来た』
地響きを鳴らしながら、一歩一歩確実にリザードマンを踏み潰して前進する大怪獣リザル。
言葉を失い、感情も失い、記憶も失う程に聖魔力を核となるメテオの動力源として動き続けていた。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ひゃあああああああああああああああああああ!!」
「来るな! 来るな! 来るなああああ!」
「助けて!!」
「死にたくない!」
「地獄だ! 地獄だああああ!」
「どうしてドラゴンがここにいいい!!」
逃げ惑うリザードマン達は、着実に踏みつぶされ数を減らしていく。
「ははは!! ハハハハハハハハハハハ!! ここなら! ここなら殺されない!!」
「ああ! 俺達は頭が良い! 他の馬鹿共は確実に踏みつぶされる場所で逃げ惑ってやるぜ!」
高台に上ったリザードマンは、自身の安全が保障された為か、愉悦に浸りながら逃げ惑う者達を見下している。
「ほおおら! 逃げろ逃げ……」
しかし、一瞬にして高台は、消え去った。
大怪獣リザルには当然尻尾があった。
その尻尾が、高台を蹴散らしたのであった。
そして、そこにいたリザードマンは当然蹴散らすと言って生易しい死に方はしていない。
肉片すら、どこへ行ったのか分からないぐらい、瓦礫の中に埋まってしまった。
「怯むな! 我々の最大火力の魔法を使えばきっと!! 唱えよ! 魔法部隊!!」
『我等リザードマンが天に願う! 理を超えた最大最強よ! 我に応え給え! エクスプロージョン!!』
大怪獣リザルの足元に、勢いよく爆発が現れ巻き込んだ。
大きな煙を上げながら大怪獣リザルの姿は消えた。
「やったぞおおおおお!」
「直撃だああ! これで我々は救われる!!」
しかし、喜ぶにはまだ早かった。
煙で消えたのであって、死体や破片を確認したわけではなかった。
大怪獣リザルは、ただ煙の中に包まれて視界に消えただけであった。7
「は?」
「なんで?」
「おかしい……こんなのおかしいぞ?」
リザードマン達に、絶望という煙が包み込む。
目の前には、絶望以外のものが映らなかった。
リザードマン達の心は壊れた。
「おかしいって……ハハハ……だって……我等が扱う最大出力の魔法だぞ? こんなのって無いだろ?」
どれ程言い訳をしようと事実は変わらなかった。
そして、大怪獣リザルは腹の核であるメテオが白く光り輝き始める。
それは徐々に腹から喉へと上がっていく。
大怪獣リザルは、大きく口を開けて空気を吸い込んだ。
そして、それを大量の光と同時に一気に吐き出した。
「え?」
気が付くと、大きなキノコ雲だけが上がっていた。
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「何だあれは?」
「え? 煙?」
「あれは……まさか……」
シャイニャスやレイシャは見た事のない煙に唖然とする。
有志は、見た事のあるキノコ雲に顔を蒼白させる。
「有志! どうしたの!」
「そうです! 顔色が悪いですよ!」
「そんな……まさか……アイツ……まさかあああ!!」
有志は、あんな雲を起こすものを一つしか知らなかった。
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「たまやああああ!」
「……」
「凄いですね……」
「わああ! 綺麗!! 見て見て! さっきまでの死体まで消えてる!!」
イネはドン引きし、エレンは興味深そうに見て、プランは楽しそうに見ていた。
「いやあここまでするとは思わなかった……引くわああ」
「でもこの力ならきっと勇者は殺せますよ」
「まあそうだね! 良かったね! エレンちゃん!」
「ねえねえ! プランも出来る! ねえねえ!!」
プランは、惑の裾を引っ張りながら聞く。
「ここまでは分からないけど、似たような事は出来るようにハ進める気だよ!」
「本当! やったああああ!」
「そのためにはエレンちゃんの助けが必要なんだ!」
「そうなの! エレンお姉ちゃん! プランもあれしたい!」
プランの我儘に、エレンは嬉しそうにしながら抱き締める。
「ええ、一緒に頑張ろうね」
「うん!」
イネはその様子を見て、惑に苦笑しながら聞く。
「エレンちゃんだいぶ仕上がって来たね」
「そうだね、復讐はその場のノリと気持ちで考えやすくはなるけど、完全に心の中に植え付けるには時間が掛かるんだ、云わば覚悟を持つ期間が必要って事かな?」
「なるほどねえ、で? 今のエレンちゃんは合格?」
「まあ……そうだね、もうそろそろ第二段階に進むのもいいかもね……時間が掛かるから他の研究と同時進行で」
「分かった、私も出来る限りをするよ」
イネの言葉に、惑は嬉しそうにする。
「まあ今回は良い爪痕を残したよ! あのクレーター凄いと思わない?」
まるで、母親に作った物を見せるような子供のような笑顔にイネは惑の頭を撫でる。
「そうだね、凄いよ」
「わーい!」
惑は、嬉しそうに頭を撫でられる。
「良い子良い子」
「凄いよ! お兄ちゃん!」
「わーい!」
エレンもプランも頭を撫でて、惑はとてもうれしそうであった。




