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記録110『最後まで推せ!』

ぷー子は、体の殆どがオークへと戻った。

と同時にスキルも少なからず戻った。

しかし、ぷー子にとってそれこそが狙いであった。


「私は戦士として返り咲いてしまった、もしかしたらもうアイドルになれないのかもしれない、でもこの思い出と共に私は再び線上に戻ろう……一時の夢であるならばそれでも構わない」


ぷー子は、慣れた戦闘態勢を取る。

有志は、憎しみの表情でぷー子を睨み付ける。

そして、両者は向き合う。

そして、勝負は一瞬だった。


-----------------------------------------------------------------


「あ、ぷー子死んだ」

「え!!」


惑の突然の言葉に、エレンは驚きながら膝を付く。


「そんな……だって……だってあの子あんなに頑張って……」

「差別者にとって頑張りなんて関係ないんだよ……人は死ねば等しく死体だからね」


惑はあまりに簡素な説明で済ました。


「さてと、ぷー子の記憶の映像はこっちで勝手に回収されるようにしている……だから今死んだことが分かった、契約書って便利だよね、報酬は死んだ際の情報を全てこちらの記録スキルに入るようにされているからね」


惑は、嬉しそうにしながら記録を鑑賞する。


「はあ、いいねこの最後の灯のような情報は本当に凄い……」

「なんで……」

「うん?」

「どうしてそんなに楽しそうなですか! ぷー子さんが死んだんですよ!」

「はあ、そうだね」

「!!」


惑は、ひたすらに記録を読み取っていた。


「君は僕の事を知っていたのでは? いやまだ会って少ない日々だね……イネは僕の事知ってたでしょ?」

「そういう反応になるのは何となく知ってたよ、そういう人間だってこともね……で? それでエレンちゃんはどうしたいの? 同情したいの? それとも勇者に復讐したいの? 君はどれの為に生きてるの? 人間らしいのは良いけど君の歩む道はその人間らしさを残して達成されるものなの? そう思うなら止めないけど」

「プランはね! 他の誰かがどうなろうが興味がないの! プランの存在意義は勇者をぶっ殺す一択……どこかの誰かに何かあった事で意識が逸れる事のないように生きてる……エレンお姉ちゃんは違うの?」


イネの目もプランの目も異様そのものであった。

何処か壊れたような目でエレンを見つめている。

否、見極めている。

そんな目で、エレンへの質問をしていた。


「私は……私はその……」


恐怖によって、答えに迷った。

エレンは自分がどうしたいのか、どう生きたいのかが少し分からなくなっていた。

答えを導くのは困難であった。

しかし、その答えを導くのはすぐに簡単なものになった。


「エレンちゃん朗報、殺したのは勇者だよ」

「!!!」


その瞬間、エレンの目に怒りという壊れた感情が埋め尽くす。

プランは嬉しそうにし、イネはワクワクした様な表情でエレンを見た。


「殺す……そうだった……私は勇者を殺さないといけないんだ……兄さんはアルマダさん、プランちゃんを生んだハロドル、そしてぷー子、勇者に殺された自分が大切に想う者の為に復讐を遂げるべきだという目的がある」


唱えるようにエレンは、自分の目的を頭に入れた。


「ごめん、大丈夫……で? 情報はどんなものだったんですか?」

「待って待って! ああ、これファンの分の記録も届きそうだ」

「は?」


その言葉の意味は、まだ分からなかった。


-----------------------------------------------------------------


「そんな、ぷー子ちゃん」


結果は、見るまでもなかった。

有志は、自身に与えられたステータスをフルに使ってぷー子を醜い姿に戻したままむごたらしく殺した。


「どうだ! お前等目が覚めただろ! これが真実だ! これがリアルだ! 貴様等のように自身の意思が弱い者はこんな程度の低い者に騙されて操られる! 洗脳されるんだ! これに懲りたらもっと俺みたいに努力をするんだな! まあ無理か、こんなものに心を奪われて何もかもを捨ててずっと善がってたんだからな」


見下すように有志は、ファン一同に喝を入れた。

ファンの皆は悔しそうにしながらぷー子を見つめる。

シャイニャスやレイシャ、そしてレティリアとテュリアメルは満足そうに有志の元へと駆け寄る。


「さすがです! これで彼等も目を覚まします!」

「そうだな、やはりこんなものに心を奪われてはいけない」

「最後の有志の言葉! カッコ良かったよ!」

「はい! 凄く素敵でした!」


褒めちぎられて有志は照れる。


それを怒る者は確実にいた。

しかし、絶望を植え付けられて誰も何も言えなかった。

一人以外は。


「ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子! ぷー子!」


コイ・ガチは、ただ一人推していた。


「コイ氏」

「コイ殿」

「皆推せえ! 推すんだあああ!! 俺達が推さないで誰が推すんだ! まさか殺されて戻されたからってビビってんのか!! 俺はビビらない! 引かない!! 最後までぷー子を愛し推すぞ!! 誰の者でもないならもう俺だけが推す! 俺だけが愛す!! もう俺だけの者になるが良いのかああ!!」


その言葉に、有志は怒りに燃えた。

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