記録109『化けの皮が剥がれたな!』
「はあはあ」
息が荒くなりながらも、何とかぷー子は立ち上がった。
「ぷー子ちゃん!」
「そんな!」
「ダメだあ!!」
ファン達は、応援を止めなかった。
ぷー子の体は、少しオークに戻りそうになっていた。
「ようやく化けの皮が剥がれてきたな、それが本当のお前か……」
「醜いですね……」
「全くだ……そんなお前が人を魅了しようとは下らない」
「身の程を弁えてください」
「全くだよ!」
罵詈雑言を有志達に、ぷー子は悔しそうにする。
「止めろおお!!」
「人の夢を潰すんじゃねええ!!」
ファン一同は、持っている物を勇者に対して投げつけていた。
「糞!! 止めろ!」
「何を考えているのですか!」
「黙れ! これが俺達の答えだ! バアカ!!」
そして、ぷー子は立ち上がり睨む。
「私は……ここで姿が戻ってもお前はここで倒す、エレンちゃんの復讐には協力できないけど……私はここを守る義務がある!! それは絶対に守る!」
ぷー子は覚悟を持って、元々手にしていた斧を構える。
「何だアイツ……あの斧の持ち方、ただの素人ではない」
「なるほど、人を殺しておきながら平和の象徴として立つという愚行をしたのか……聞いて呆れるな」
「何とでも言いなさい、私は間違いをしなければならなかった……この世界で、でも惑にあって状況は変えられた……間違いを犯しても、それでも出来る事はある……間違えたからこそ分かる道筋だって」
ぷー子は、同時に襲い掛かった。
自身より倍はある斧を軽々と持ち、そのまま有志に振り落とす。
「そんなの避けられるぞ」
「そうですね」
しかし、ぷー子は構わず地面に叩き付けた。
同時に、地面は抉れてその破片が砂のように有志へと勢いよく飛び散る。
「ぐが!!」
「卑怯な!」
「卑怯? 下らないわね」
ぷー子は、視界を奪われた有志に横から薙ぎ払う。
「ぐが!!」
有志の鎧は、思いっきり切れ目が入った。
「糞! 貴様!」
「貴方チート以外本当に弱いわね……でもまあ戦闘能力が無くても貴方には神から賜りし力がある、それで魔王様にも勝てるのかな?」
呆れたようにぷー子は斧を肩に抱える。
「ぬくぬくと剣を磨いた証拠ですね、戦場の剣でもない……戦場の戦いでもない、そんなのがこれからの戦いにも通じると思うの?」
ぷー子は今、アイドルではなく戦士として有志の今のあり方に疑問を持っていた。
「黙れ! 俺は選ばれた勇者だ! そんな俺なら勝てると神が信じたからだ! そして研鑽もした! レイシャは優秀な騎士だ! 冒険者として魔物も倒した!」「でもそれは自分より強者との戦いで学んだ戦いじゃないでしょ? 私は違う、かなりの不利を目にしても尚戦うしかなかった……だから今の不条理なんて怖くないわよ」
斧の柄を使って、有志の顔面を突く。
しかし、有志はその柄を掴むとそのまま斧を取り上げようとする。
ぷー子は、その勢いを利用して斧の刃の部分を円のように回し有志をひっくり返した。
「ぐは!!」
「斧なら私の方が扱いが上手いわよ……そんな棒状を持っても大きい部分を上手く回せば持ち手のバランスも崩れるわ、そして! 剛腕!!」
ひっくり返った有志をそのまま、柄を持たせたまま振り上げる。
「ぐがああああああああああああ!!」
有志は上空に飛び上がり、柄を放してしまった。
それを見計らったように、ぷー子は、斧を持ち直して刃を有志に向ける。
「糞! 貴様!!」
「有志!! グラビディ!!」
シャイニャスは、魔法を使って有志を何とか斧から距離を放させる。
「ありがとうシャイニャス!」
「いえ! 気を付けて!」
有志は、すぐに態勢を整えて剣を構える。
「チームワークぐらいは何とかあるみたいですね」
「さっきから偉そうにしやがって! 貴様だって人の事を言えないだろう!」
「なんですって?」
「簡単な話だ、お前は人から愛されたいなどと世迷言を言っていたがお前は大きな間違いだ!」
ぷー子は、何を言われるか察しが付いた。
「お前は自分の本来の姿を愛していない、そんなお前なんかが人から! いや他の者から愛される者か! そんな愚か者の何処に愛があるというんだ!!」
「糞野郎が!」
「自分勝手な奴等だ! 自分が正しいと思っている理不尽野郎はいつもそうだ! 気に食わなければこっちを悪人扱い! とんだイカレ野郎だぜ!」
ファンは、ブーイングと共に物を投げつける。
「黙れ!!」
『ぐはばあ!!』
同時に、投げつけた三人はそのまま首を落とされた。
「糞! また推し仲間が!」
「この人殺しめ!」
会場も客席も、血まみれになっていた。
そして、ぷー子はファンを守る為に、ある決断をした。
「剛腕! 堅牢! 剛毛!」
一気に、スキルを使用する事によって自身もオークへと再び返り咲いた。
「はあはあ、体が痛い……だがこれを我慢して何とか惑に再びお願いしないと」
「もうお前が人を惑わす事はない、俺がここでお前を倒すからだ!」
ぷー子は、最後の力を振り絞った。




