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記録105『護衛のコネ』

バワカとアワホを雇ったのは正解であった。

彼等は、冒険者を止めてからも冒険者としての顔は広く、寧ろ冒険者登録を剥奪された事に対して、激怒する者もいた。


「何でだよ! 貴方達のような優秀な人材の冒険者登録を剥奪するだなんて! どうかしている! ギルド長は馬鹿じゃないのか!」

「そうだそうだ! そんな結果俺等は認めねえ!」

「私だってそうよ! 何度彼等に助けられたか! 余所のギルドとはいえ! 尊敬の念ぐらいあるわ!」


動揺しているアワホとは違い、バワカは冒険者達に冷静に説明する。


「実はな、浮気調査に来た勇者一行に正直にファイナっていう受付嬢とそういう事をしたって言ったら俺がぶん殴られて……当然反撃に二発お見舞いしたが全く効かない上に一発でノックされちまってよ~その後アワホがキレて勇者に反撃したんだがやられて……それで罰としてそうなっちまったんだ……体を売って欲しいっていう依頼だったのに……」

「お前等……そこまでして故郷の病気で苦しんでいる妹に金を送ろうと……」

「体を売るなんて……そんな事をしても妹さんは喜ばないわよ!」

「お前を愛している女だっているというのに……」

「何か重い話になって来たな~」


惑は、二人がなかなかな事情を抱えている事を知って、少し動揺する。


「ああ、だが手紙でアイツにも許可を取った……さすがに何も言わずすればただの裏切りだ……アイツだってアワホの妹を大切に思ってんだ」

「ああ、本当にすまない……全て俺の事だって言うのに」

「気にするな……言ったろ? 俺もアイツもお前の妹を必ず救うって」

「あれ? 主人公かな?」


話の内容を聞く限り、完全に勇者が敵にしか見えなくなり始める。


「だがお前等の頼みは分かった、今流行りのアイドルとかいうぷー子のボディーガードをすれば良いってことだな? なら簡単だ! 冒険者の中にもぷー子ファンがいる、そいつに頼めば寧ろ金なんて要らないと言ってやるだろう」

「それはダメとは言えないのがファンの真理なんだよな~」


惑も、その考えを否定する気はなかった。

何度かアイドルのコンサートに行った際、沢山の人が大金をはたいてCDを買ったり、グッズを買ったりしていた。

そうする事によって、自身がいかにその者を愛しているか証明するつもりなんだと考えたのだ。

それは一種の信仰とも呼べる行為で、それらを侮辱する気は一切なかった。

そして、他の冒険者もその者であれば、現在の魔族と人間の共存の為、協定を結ぶのに問題がないと判断した。


「さて、この俺に今流行りのぷー子様を守れという訳か?」

「様……」


既にドップリぷー子の沼に嵌っていた。


「いいぜ! 当然引き受けるに決まってんじゃねえか! それにあの憧れバワカとアワホの二人の役に立てるなんて一石二鳥だ! え! 何? 俺死ぬの? 今日死ぬの?」


寧ろ大盛り上がりで、仕事を快く引き受けてくれた。


そして、一週間後の事であった。


「今日からバワカさんとアワホさんの交代でボディーガードとなるラザママでしゅ!! ああ! 噛んだ!! すみましぇん!!」


緊張しているのか、ラザママは声を震わせながら噛み噛みで挨拶をする。


「わー! 可愛い!! よろしくねえ! ぷー子でえーす!!」

「きゃわいい」


顔を赤くしながら、ラザママはぷー子を見ていると。


「はい! これ!」

「え? これは……」

「私のサイン! キスいるだよ! ラザママさんへって書かせて貰ったから!」

「あ!! ああああああ! これは! こればああああああ!!」


涙を流しながら、ラザママは喜びに震えた。

しかも、自分の名前を直筆サインで書いて貰ったのだ。

ファンとしてこれ程嬉しい事はなかった。


「これからもよろしくね!」

「ああわわわ」


更には握手までして貰った。


「ふむ、ぷー子の奴、完全にアイドルとして完成されたようだ」

「どういう事?」


イネは不思議そうにしていると、エレンは涙を流していた。


「分からないのですか? 所詮獣ですね」

「なんてこと言うんだこいつ」


イネは、エレンの暴言に涙を流す。


「彼女は、ぷー子ちゃんは完全に男を断ち切り女になったんです、そしてアイドルとしての自覚を見に着けた彼女に最早叶う女なんていません……私は女として彼女に負けています……でも良いんです、彼女なら」

「……エレンちゃん……惑お兄さんからの忠告ね、君は宗教に近づくな」

「? はあ神は嫌いなんでどうでも良いですけど」

「それは良かった」


惑は、少し安堵する。


「じゃ! 行こっか! 皆のいるところへ! 君は特等席で見ててね!」

「うん! ぷー子ちゃん頑張ってね!」

「うむうむ、なかなか良いアイドルだ……頑張れぷー子! 負けるなぷー子!」

「ぷー子ちゃん! 私は観客席で推すからね!」

「枕……」


イネは、枕を投げつけられた。

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