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記録99『ボイストレーニング』

「はい!! あえいうえおあお!!」

「あえいうえおあお!!」


ぷー子の次なる試練は、雄オーク特有の濁声を綺麗にする事であった。


「いいか! 声をも騙し通せ! アイドルというのは夢を見せる事だ!! 夢を見せるには偽り続ける必要がある! 夢というのは基本フィクションだ! アイドルはフィクションだ! 事実とは一切関係ない! 騙すは夢を見せる為に存在する! 詐欺師というのはそこを利用して金を儲ける! 君はそこを利用して夢を売り続けろ!!」

「はい!! あえいうえおあお!!」


惑は、自身が持っているアイドル情報を元に、ボイストレーニングをぷー子に施す。


「息が辛いか! 精神力で頑張れエ!! スキルは精神によって開花される! 滝の中! 山頂の中! 空気の薄い中! 声を出し続けろ! 走り続けろおおお!!」

「はああい!!」


当然、元戦士であったぷー子にとっては、辛くはなかった。

しかし、声を変える為の特訓自体は初めてで、なかなか進展する事はなかった。

しかし、ぷー子は諦めるわけには行かなかった。


(ここまで惑さんにして貰ったのよ! 私! いやぷー子! そして今度は声を変える為に色々な方法を試しているの! 今まで沢山耐えた! なら解放の為の耐えなんて訳ない!)


自身にそう言い聞かせながら、声を何度も何度も張り上げ、走り込み、滝に打たれ、安定した呼吸を繰り返した。

そして、肺活量がドンドンと強くなっていき、声も濁声から徐々に高い声へと変わっていく。


「ハアハア、どうですか?」

「まだまだああ! こんなもので声は変わらあああん! しかもその声は無理矢理出している感じがするうう!! 自然になるまで偽りの声を出し続けろおおお!」

「はあい!!」


ぷー子の特訓に、エレンもイネも手伝った。


「頑張って! 私応援してます!」

「凄いよ! 可愛いよおお! 可愛いよぷー子ちゃああん!!」


惑に、教えて貰ったオタ芸で二人は応援する。


「あれも見慣れろおお! アイドルというのはあの光ライトを振られながらダンスを見て上げるのも仕事だああ! 多分!」


惑は、そこだけがどうしてか曖昧であった。


そして、数週間の日々が経った。

ぷー子は、いつものようにボイストレーニングを終えた。


まだまだ濁声からの脱却には時間が掛かりそうであった。

そんな時であった・

惑が、とんでもない提案をしてきた。


「来週には歌とダンスを覚えて本番だ……チラシはもう配ってある……」

「!!!」

「な!」

「ええ!! 今の声も好きだけど……」


惑は、もうすでにライブの為の場所予約と観客の確保を行っていた。


「で! でもまだ声が……」

「頑張れ」

「でも……」

「大丈夫だ……」

「ううう」


惑は、話も聞いてくれず話を進めていった。


ぷー子は、何処か不安そうにしていた。


エレンとイネは、心配そうにしながら惑に問い質す。


「どうしてこんなに早く!」

「そうだよ! 濁声でも私は好きだけど……他の人はどうだか……」

「気持ちは分かる」

「なら!」

「だからこそ期限を付けないとダメなんだ……スキルの開花はギリギリの中で生まれるかもしれないという仮説を立ててる……実際村人のスキルの開花も命懸けの戦いの為の訓練の中で発揮されたし、君の兄も多少の理性が残ったのはギリギリのラインでの苦しみと覚悟があったからだ、アルマダだって魔族になった事で期限付きの無法都市を守る為、出来る限りをした、プラン? 君ママはどうだった?」

「……私も惑に賛成! だってそれぐらいは必要だと思う! エレンお姉ちゃんはどう?」


プランの屈託のない意見に、少したじろぎながらもエレンは納得した様子であった。


「でも惑? ぷー子の精神状態は分かってる?」

「でも彼女は今自身の夢を叶える為に戦っている……そしてそれは彼女も分かっているはずだ……実際訓練だけをしている彼女は何処か違和感を感じていたはずだ……彼女に眠る戦士の心は完全に死んでいるとは思えない……何故なら訓練に耐えたのだから……」

「!! 確かにそうだけど……でも」

「ならぷー子を! 彼女を信じて上げる事が今僕達に出来る事なんじゃないのか? どう?」

『……』


二人は、完全に惑の言葉に、納得してしまった。


それを聞いていたぷー子は、決意の目をしていた。


「私の心の中に……戦士の心……今まで耐えて来ただけだと思ってたけど……そうか……私の持っている戦士の心は……今までの戦いは無駄じゃないんだ!」


ぷー子は、すぐにボイストレーニングを開始した。

期限までに、絶対に仕上げる為。

戦いにおいて、死ねばそこで終わりという事。

つまりは、来週のライブまでに声を何とかしなければ自身の女の子人生が終わってしまうという事。

それはつまり死。


「死んでたまるか! 女の子として! 死んで!! 堪るかああああ!!」


ぷー子の必死の努力は続いた。


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「おい、聞いたか? あいどる? だか何だか……」

「踊り子とどう違うんだ?」

「なんでも踊りながら歌うらしい」

「へえ……踊りながら歌うねエ~」


面白半分に、ライブに来た客。


「この子可愛いなあ……はあはあ」

「ああ、天使だ……」


チラシのぷー子に魅了された客。


「下手だったら馬鹿にしてやろうぜ?」

「はは! そりゃいい!!」


冷やかしに来た客。


様々な者達がぷー子の初ライブに来た。

そして、遂に時間が来た。


「皆~!! お待たせえええ~!!」

『!!!!』


ぷー子の声は、透き通るような可愛らしい声、チラシより綺麗で愛らしい姿。

そして、何より可愛らしいフリルの入ったミニワンピースのよく似合う。

ピンク髪のスレンダーの、守りたくなるような愛らしい表情に会場は息を呑んだ。

そしてぷー子は、そんな会場を盛り上げる為に歌を披露する。


作詞作曲は取り敢えず惑が作っていた物を歌った。

そして、会場は大いに盛り上がった。

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