表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/474

記録1『召喚:勇者と錬金術師』

久しぶりの投稿です、忘れている方も多そう。

「勇者よ! 我等の世界を救い給え!」


ローブを着た男性が複数人の者達と共に、魔法陣に魔力を込める。

そして、魔法陣は光り輝き辺り一面に広がる。


「うう……ここは」

「うん?? どこ?」


すると二人の少年が同時に現れた。

一人は、170cm以上の身長と金髪で顔の整い、身体つきの良い制服姿の少年が現れた。

もう1人は、160cmより少し高い童顔で眼鏡を掛けた黒髪の少年で近くにいた少年とは違う制服姿であった。


「おお! 成功したぞ! しかも二人も!」

「やったああ! これで我等は救われる!」


そんな喜びの声を聞いている二人の内、一人の少年が体を震わせながら喜ぶ。


「まさか! まさか俺えええ! この世界でも人気者になっちゃう奴! 本来現実が出上手くいってない奴系が無双とかしちゃうけど何々~! 今回は現実でも人気者の俺がなっちゃう系~?」

「……」


一人の少年はテンションを上げて大喜びをしている。

しかし、一人の少年は周りを観察し、そしてもう一人の少年をじっと見ていた。

そんな中、複数人のローブの男達の中から一人が二人に話し掛ける。


「勇者様方! ステータスと唱えてください! そうすればお二人の今の実力が映し出されます!」

「おお! 定番中の定番じゃねえか! ステータス!」

「……ふむ」


一人の少年は迷わずステータスと叫び、もう一人はただじっと様子を見る。

すると、ステータスと叫んだ少年の目の前にゲーム画面の様な映像が現れる。

そこには、Name:天山(てんざん) 有志(ゆうし)と名前が書かれており、その下にHP:100000、MP:100000、攻撃力:50000、防御力:50000、スピード:15000、知力:12000、魔法:全属性使用可能、スキル:身体強化、無詠唱、自動HP回復、自動MP回復、飛行、魔法ダメージ半減、物理ダメージ半減、武器の達人、職業:勇者Lv1

と記載されていた、


「おおおおお!! 何という凄まじいステータス!」

「素晴らしい! こんなステータス初めて見た!」

「凄い凄い凄いいいいいい!」


周りにいたローブの男達は声を上げながら大喜びする。


「ふふふ、さすが俺」


有志は、誇らしげに腕を組む。


「おや? 貴方様はどうしてステータスと唱えないのですか?」


有志の凄まじいステータスに喜んでいた中、先程の男が不思議そうにもう一人の少年に聞く。


「……」

「あのお?」


少年は、ローブの男をじっと見た後、口を開く。


「ステータス」

「!!」


そして、期待した目でローブの男は、少年が出したステータス画面を見る。

しかし、その表情は曇ったものへと変わった。


「え……これはさすがに」


苦悶の表情を浮かべながら、ローブの男は少年に蔑視の目を向ける。

そのローブの男と同様に、他の者達と一緒に有志もステータスを見る。


「うわあ」

「失敗作が」

「どうやら本物の勇者は有志様だけのようですな」

「しかも職業が……錬金術師とは……ただの詐欺師か……」


皆がもう一人の少年を蔑視の目で見る。

少年は何となく自身のステータスを見た。

Name:西院(さい)(えん) (まど)

HP:1000、MP:1000、攻撃力:1000、防御力:2000、スピード:9000、知力:30000、魔法:なし、スキル:金錬成もしくは合成のどちらかを選べます、職業:錬金術師Lv1

と記載されていた。

惑は、迷わず合成を選んだ。


「な!」

「フン、ただの合成を選ぶとはとんだ間抜けもいたものだ」

「ま、所詮は錬金術師だ……」


そんな中傷な言葉が惑に浴びせられる。


「ああ! ああ! やっちゃったねエ! 君―! 俺は勇者だがまさか錬金術師で……しかも、ぷぷ! まさかそんなしょぼいステータスって! 俺より知力は高いようだがそれだけ! しかも金錬成であれば魔王退治の際、金の工面は出来るがまさか合成とは! それ? 本当に戦闘に役に立つのかあ? 選択間違った?」


有志すらも鼻で嗤いながら、惑を見下す。


「はあ」


だが、惑は興味がないのか軽く返事をするだけであった。


「!! くう! まあいい! 嫉妬を無理矢理見せないようにしてるんだろうけど、俺には分かるぞ! それより! 自分より優れている人間がいるからって嫉妬するなんてみっともない! 恥ずかしいと思わないのか!」


惑の態度に有志は少し顔を歪ませるが、すぐにニヤッと嗤いながらイチャモンつける。。


「? はあそうですね……」


しかし惑は、よく分ってなさそうな表情で返答する。

その言葉に、有志は勝ち誇りながら嗤う。


「そう思うなら自重しろよ! 分かったな!」

「はーい」


言われるがままに惑は返事をし、有志は満足そうにする。


「まあこいつはさておき! 俺は王様と謁見した方がよろしいのでは!」

「そっそうですねえ! 無能の事で失念しそうでした! 申し訳ございません!」

「ささ! どうぞこちらへ!」

「僕も陛下と謁見した方がよろしいでしょうか?」

「「「……」」」


惑が手を上げて確認すると、周りにいた者達は冷たい視線を向ける。


「ぷふふ……」


有志は、手で口を押えながら嗤いを堪える。


「まあ良いじゃないですか、コイツ何も分ってなさそうなので取り敢えず合わせて見れば良いのでは? 一度恥を掻けば分を弁えるでしょう」

「……ハハハハハハ!!」

「そのようですな! ああ全く勇者様はなんと慈悲深い!」

「このような者にも教育を施されるとは! 素晴らしい精神の持ち主だ!」

「ッククク……そっそれでは……まど? でしたかな? ソナタも陛下との謁見をしてみてはどうでしょうか? 結果は見えていますが……」

「分かりました、お気遣い感謝いたします」


惑は、皆から馬鹿にされているにも関わらず、丁寧な口調と態度で接する。


------------------------------------------------------------------


そして、二人は玉座の間へ通された。

目の前には宝石類や装飾品で着飾られて着膨れした体に茶色く丁寧に手入れをされた中年の男が、豪華なマントと杖を持ち、玉座に座っていた。

そして、その隣には同じく装飾品で着飾られている金髪の中年女性ともう一方の隣には中年女性を若くした綺麗な金髪と碧眼の娘が座っていた。

中年の男が髭を弄りながら話し掛ける。


「勇者よ、我こそがこのペプリア王国の王、ファルトコン・ペプリアである」

「同じく、ペプリア王国の女王、ファマルマ・ペプリアです」

「同じく、ペプリア王国の姫、シャイニャス・ペプリアです」

「おお! 何と御美しい! 俺は日本という国から来た勇者! 名前は天山 有志と言います! 宜しくお願い致します!」

「まあ! ありがとうございます! 勇者様!」

「いえいえ! それでは早速勇者としての使命をお聞かせください!」

「うむ」


ファルトコン王は、有志の言葉に頷きこの世界の現状を説明した。


この世界には魔王と呼ばれる魔族の王が、人間達の世界を侵攻し始めた。

村は焼かれ、人は襲われ、兵士達や冒険者、騎士達、魔法師団が戦ったが、沢山の命が失われたのであった。

そして、魔族は強靭な肉体に莫大な魔力により、このままでは人間の世界が魔族に支配されてしまう。

その為、勇者を呼んで何とか人間の世界を守ろうと思い、勇者召喚を行ったのだという。


「なるほど! それは酷いですね! お任せください! 俺がこの世界を救って見ますよ!」

「まあ! それは心強い!」

「これ程頼もしい勇者の召喚されるとは! 幸先が良い!」

「これで我々人間達も安心だわ!」


王族や貴族、そして先程の召喚の儀にいた者達は、有志を称え喜んでいたところであった。


「それでは次は僕ですね、僕の名前は西院円 惑です、正直魔王退治は面倒臭いし、職業が錬金術師の為、勇者パーティーの役には立ちそうにないので丁度いいでしょう、少しばかりお金を貰えればこのまま立ち去ろうと思います? いかがでしょうか?」


喜びの空気の中、惑は流れるように自己紹介をし、そのままお金の交渉をした。

ファルトコン王は、勇者の意気込みに喜んでいるにも関わらず、水を差された為、少し不機嫌そうに答える。


「……はて……錬金術師とは、確か詐欺師がよく使う職業の名前であったはず」


ファルトコン王は、見下すように惑を見る。


「なるほど、先程の皆の反応はそういう事ですか……恐らく良い印象ではないとは思ったのですが、そう言う事ですか」


しかし、惑は気にすることなく口下を指で押さえながら納得する。

そして、再び交渉する。


「それで?? お金の方はいくらほど貰えるのでしょうか? 今後の活動資金として頂きたいのですが?」

「ふざけるな!」


しかし、ファルトコン王は表情が険しくなり、惑を怒鳴り付ける。


「それはどうしてですか?」

「分からぬのか!」

「はい、分からないので教えてください」


惑は、全く怯む事もなく説明を求めた。

すると、有志は何かを言おうとしたファルトコン王を止める。


「王様……ここは俺が説明します、そっちの方がこの男も自分の立場を弁えるでしょう」

「うむ……ならばお願いしよう」

「で? 理由を聞いても?」


説明を買って出た有志の方へ目線を向けると、惑は疑問をぶつける。


「お前……本当に分からないのか?」

「ええ全く」

「なら説明しよう、良いか? この世界に勇者として召喚されたのはこの俺、天山有志だ! しかしお前は何だ? この世界では詐欺師と同等である錬金術師という職業、そんな犯罪者まがいな奴が勇者パーティーに入れて貰えるはずがないし、その上この説明をする前からお前は勇者パーティーに入ろうともしない、魔王退治も面倒だと言った! そんな奴にどうして活動資金が貰えると思うんだ!」

「え? だって召喚されたんだし、その責任を取って賠償金を請求しただけだけど?」

「黙れ! 分を弁えろと言ってるんだ! 勇者でもない上、この世界の為にも俺の手助けにもなろうとしないお前なんかに払う金何て無いってことだ! 俺に嫉妬しているのは分かるが、そうやって人に当たるとか最低だな!」

「全くその通りだ、さすが勇者様だ」

「有志殿は分かってらっしゃる」

「偉そうな男だ」


ファルトコン王は勝ち誇った表情になり、貴族達と共に嗤う。


「そういう事だ、貴様にやる金はない」

「では元の世界に帰す事は?」

「魔王を倒せば可能性はある……だが、我等にそれが出来たとして、どうして貴様なんかの為にそんな労力を惜しまなければならんのだ?」


ファルトコン王は、面倒そうに答える。


「でもこれ……誘拐ですよね? 許可なく召喚したんですから……」

「お前! なんてことを言うんだ! 自分の人生が上手く行かなくて、異世界に呼ばれてさぞかし調子に乗ったんだろうが、今度はこの異世界で思い通りの能力がないからって帰りたいだと! そしてこの世界に召喚されたこの国の王に対して誘拐だと言ったのか! だからお前は元の世界でもこの異世界でも上手くいかないんだよ!」

「はあ……で? 誘拐に対しての謝罪金は?」


惑の言葉に、有志は怒りの感情を向けるが惑はその言葉に乾いた返事した後、すぐに金銭を要求する。


「我々を犯罪者呼ばわりしただけじゃ飽き足らず、まだ金を要求するか! この守銭奴が!」


ファルトコン王は、我慢が出来なかったのか立ち上がり惑に対して歯を食い縛りながら屈辱への怒りを向ける。


「先程有志殿が言った通り我等が貴様にやる金なんぞない! 今あるのは勇者の旅に対しての援助金だけだ! それに! この世界が魔王との戦いで余裕などない事はあの説明で分かるはずだ! そんな事も分からんのか! 貴様は!」

「ではその装飾品を売ればよろしいのでは? それだけでも相当の活動資金にはなるかと?」

「ふざけるな! 貴様は外交という言葉を知らんのか! この装飾は外交の際、威厳を保つためにある! 他の者達もそうだ! 国の威厳を示し、国を守ろうという意思を示す為でもある! それは第一印象で分かるものだ! 身だしなみもろくに出来ない者に一体何が証明になるのだ!」

「そうですか……でも大丈夫ですよ、その綺麗な装飾品を売れと言っている訳ではありませんので」


惑のあっさりとした返事に驚く中、今度は皆が理解出来ない事を言い出した。


「綺麗な装飾品を売らなくていい? ならば貴様は何を売れと言ってるんだ?」


惑は、シャイニャス姫の方へ視線を向け指さした。


「その薄汚いネックレスを売れば良いんですよ、きっと外交の邪魔になります、大丈夫! 外交の場では相応しくなくても! 質屋であれば買い取ってくれますよ、安値でしょうけどそれであればこれからの活動資金としての足しになりますし!」


その言葉を聞き、シャイニャス姫は体を震わせ、絞り出すように話す。


「こっこれは……死んだお婆様が私に譲ってくれた……大切なネックレスなのです……」

「へえそうなんですか、じゃあ少なからず価値のある物ですね」

「お前……少し黙れ」


シャイニャス姫の言葉を聞いて、惑は期待高くネックレスを見つめるが、有志は惑の胸ぐらを掴み恫喝する。


「このネックレスを売れというのですか! 嫌です! お婆様の大切なネックレスをお金に変える訳にはいきません!」

「大丈夫ですよ!」

「何が大丈夫なのですか!」

「黙れと言ってるんだ!」


惑は、有志の言葉を全く無視して話し続ける。


「死人に口なし! 大切なネックレスを売られたからって、お婆様が怒れる訳ないじゃないですか! だって死んでるんでしょ? ははは!」


余りにも冷たく冷めきった言葉にシャイニャス姫の目からは涙が零れる。


「ひ……酷い……ううう……ああ……」


顔を手で覆い涙がボタボタと地面にを濡らす。


「あれ? どうしまし……」

「いい加減にしやがれ! 糞野郎が!」

「え? ぶぎゃあ!」


有志は、怒りに任せて惑の頬を殴り付けた。

惑は、血を吐きながらその場で頬を摩り見上げる。


「痛いなあ……何でこんなことをするの?」

「何でだと! 分からないのか! お前が何を言ったのか!」

「?? 言ったも何も……ただそのネックレス売れば金になるよってアドバイスして、お婆様に怒られるのが嫌そうにしてたみたいだし、お婆様は死んでるから怒られないよって安心させただけだけど?」

「!! 貴様ああああああ!」


有志は、飛び掛かる様に惑にマウントを取って殴る。


「いっで! ぶやあ!!」

「貴様には分からないのか! 姫の想いが! 姫の思い出が! お婆様への愛が! 貴様には!」

「いい加減にしろ!」

「ぐう!」


何度も何度も殴り付ける有志に、惑は握った拳で頬を殴った。


「痛いじゃないか! さっきから何を言ってるんだ! お前!」

「もうよい! 私も我慢の限界だ! 兵よ! この詐欺師を今すぐに城から追い出せ!」

「「「は!」」」

「ええ! 活動資金は!」

「黙れええ! 死刑にされないだけマシだと思え! クズが!」


兵士が、複数人で惑を抱えるとそのまま玉座の間から連れ出した。


------------------------------------------------------------------


「おらああ!」

「糞ガアア!」

「おらおらおらああ!」

「うぐう! あがああ!」


惑は腹蹴りを受け、頬を殴られた後、頭を踏み躙られた。


「出て行けええ!」

「うぐあああ!」


そして、倒れているところを担がれた瞬間、そのまま門の外へと投げ捨てられた。


「うう……僕が一体何をしたというのだ……全く理解出来ない、何とか拳をいなしたのに……これが勇者の力か……兵士の拳よりあいつの方が痛かった……」


何とか立ち上がりながら頭を摩り、少し考えた。


「まあいいか……それよりも今後の活動資金の為に情報収集と合成スキルについてデータを取った方が有意義な気がする……」


惑は、伸びをしながら城下町の道へと歩いて行った。


取り敢えず、2話投稿する予定です。

今日の夜に、出来た分の投稿をします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ