彼女の覚悟、彼の唯一
R15注意
ジュリナリーゼの私室に備え付けの浴室では、ショリ、ショリ、と毛剃りの音が響いていた。
「どうしよう、恥ずかしいわセシル…… 恥ずかしい……」
「もうちょっとだよ…… 動かないでね」
ジュリナリーゼはセシルにムダ毛の処理をされているのが、堪らなく恥ずかしかった。
ジュリナリーゼは人にやってもらうしかないと思ったが、適任者は彼氏のセシルしかいなかった。
セシルも「俺が剃るね♪」とノリノリだった。
とはいえ、鼻唄混じりにショリショリと処理を進めるセシルを見つめつつ、なんでこんなことになっているのだろうと、ジュリナリーゼは恥ずかしさで顔が真っ赤にさせつつ涙目だった。
「できたよー!」
そう言ってカミソリを置いたセシルは――――
「ふぇっ?」
ジュリナリーゼが疑問の声を出した時には、既に遅かった。
「ま、待って! きゅ、休憩!」
精神が限界に近かったジュリナリーゼは、白旗を揚げた。
「何言ってるの? 夜はこれからでしょ?」
セシルはなぜかパチッとウインクまでしてきた。
セシルの眼は獣のように爛々と輝いている。
ジュリナリーゼは次期宗主という責任のある立場であり、年の離れたセシルを婚約者にすることに反対や心配の声は多数あったが、ジュリナリーゼはどんなことがあっても、必ずセシルと結婚する覚悟だった。
ジュリナリーゼの夫になるのはセシルだけだ。ジュリナリーゼは今度こそ、この恋を貫くと決めている。
セシルはジュリナリーゼをぎゅうっと抱きしめた。体格差もあり、抱き合うとセシルの頭はジュリナリーゼの胸あたりにくる。
セシルはジュリナリーゼの心臓があるあたりにキスをした。
「愛してるよ…… 俺の唯一…………」
セシルは、わざとジュリナリーゼに聞こえないように呟いた。