輝く瞳の中に見た闇色
R15注意、子作り発言注意、微ヤンデレ注意
フィオナは頭をぼうっとさせながらジュリアスを見つめた。
「女性ホルモンがたくさん出て来れば自然と胸も大きくなるはずだよ」
女性ホルモンを出すための行為だろうかと思いつつ、何もこんな所で…… とフィオナは思ったが――――
「たまにはいいよね」
「うん…… 好き…… ジュリアスが好き……」
「俺も大好きだよ。胸が大きくても小さくても、俺の大切なフィーに変わりはないから。俺はフィーがどんな姿をしていてもずっと愛してるよ」
「私も愛してる」
フィオナは、もしかしたらジュリアスがこんなことを始めたのは、フィオナがアテナと胸を比べて気にしていることに気付いて、すぐにでも自分に自信を持ってほしいと行動に移したのではないかと思った。
ジュリアスは他の女には全く目もくれずフィオナだけを愛してくれる。普段から男の格好をしているフィオナにとって、ジュリアスが自分を愛してくれることは、フィオナの中で自分が女性であるという部分の、大きな支えになっていた。
「子供……」
突然、ジュリアスからそんな言葉をかけられた。
「子供ができたら、もっと胸が大きくなるんじゃないかな?」
(…………あれ?)
フィオナの思考は半分溶けかけていたが、ふと、もしここで自分が「そうだね」とか了承の答えを言ってしまったら、一気にデキ婚街道まっしぐらなのではないか、と思ってしまった。
「え、あ…… 今日危ない日なの?」
二人はフィオナの仕事のこともあって、今の所作る予定はない。ジュリアスの魔法で危険日を見抜いている。
フィオナは、ジュリアスの「子供ができたら云々」発言に、もしかしたら今日はその日なのかと、少しばかり不安になってしまった。
「今日はできる日じゃないよ。でも、フィーが近いうちに俺と結婚してもいいんだったら、そういう方法も取れるよ」
「あの……」
フィオナは困った。
「でも…… 仕事、が…………」
フィオナは、ジュリアスと結婚する時が仕事を辞める時なんだろうなと何となく思っていて、けれど近いうちに結婚というのは、すぐには答えを出せそうになかった。
「ごめんね、悩まなくていいから。ずっと待ってるって言ったのは俺だし、フィーが決断できた時でいいんだ」
ジュリアスの慈愛を含んだ言葉を受けて、フィオナの中で申し訳なさが湧き上がってくる。
フィオナは、ジュリアスが今はとても結婚したがっていることを前々から知ってはいたが、いつでもいいという彼の優しさに甘えてしまって、ずっと婚約状態を引き延ばしている。
「ごめんなさい…………」
「謝らないで。フィーが大事にしたいものを俺も大事にしたいんだ」
フィオナの心は昂り、縋るようにジュリアスに手を伸ばした。
「フィー…… いつか生んでほしいな、俺の子供……」
フィオナはジュリアスと唇を合わせた。しかし、その前に呟いた言葉とジュリアスの瞳の中に、いつもの輝かしいジュリアスの青い瞳には似つかわしくもない、何かドロッとした暗いものを見たような気がした。
巧みな口付けに翻弄されたフィオナは、ジュリアスから感じたそのほんのちょっとした違和感については、すぐに忘れてしまった。
「フィー、俺だけのフィー、ずっと愛してる…………」
「ジュリアス! 私も愛してる!」
魔法で声が聞こえないならいいかと、フィオナはジュリアスへの愛を叫んだ。
フィオナは、きっと今回の夏休みでも、ずっとジュリアスとの愛を確かめられる気がしていた。
彼の家族の笑い声と、波の音を聞きながら、フィオナはジュリアスに愛されている幸せを噛み締めていた。
長男編了
ジュリアスの希望が叶う話はこちら
「男装令嬢の恋と受胎」(短編)
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