✕✕しようか?
R15
「あっ!」
カインが投げたビーチボールが思わぬ大暴投を起こし、フィオナの頭上をピューンと飛び越えて背後に飛んでいく。
「ごめんなさい!」
「大丈夫よ」
フィオナはカインに笑って手を振りボールを追いかけた。
軽いボールは吹き抜けた風に乗ってふわふわと空中を運ばれて行き、波打ち際の近くにあった大きな岩のそばに落ちた。
砂の上にあるボールを取ろうとしたフィオナは、その直前に横から伸びてきた腕によって、岩影に引っ張り込まれた。
「えっ?」
気付けばフィオナは婚約者ジュリアスの腕の中だった。水着姿のジュリアスはもちろん上半身裸で、鍛え抜かれた美しい腕に抱きしめられたフィオナは、一気に赤面した。
「な、何でこんな所に……」
「フィーと二人きりになりたかったんだ、ごめん」
ジュリアスから少し申し訳なさそうな表情を向けられたフィオナは、すぐに彼を許した。
「うん、いいよ……」
フィオナは自分からもジュリアスを抱きしめ返した。大好きな人との密着具合に胸がドキドキと高まっていき、自然とお互いに顔を寄せてキスをした。身体が内側から熱くなってくる。
「待って、ジュリアス……」
「可愛い水着だね」
トロンとしているうちにシャツを脱がされてしまい、水着姿の披露となったわけだが、アテナの女性的で魅力的な身体付きと比べると、自分の身体は随分と貧相だった。
「あまり見ないで……」
水着姿とはいえこんなお天道様の下で、というのもあまりなく、フィオナは恥ずかしくなってしまった。
「どうして? フィーはこんなにも綺麗なんだから、隠すことない」
「きっとそう思うのはジュリアスだけよ」
ジュリアスは男性では珍しいのではないかと思うのだが、貧乳好きなのである。
仕事で泊まりが発生したある時に、その地の熱狂的ジュリアス信者が夜這いを仕掛けてきたことがあったが、その女が剥き出しの巨乳を見せつけてきても、ジュリアスは眉をしかめるばかりで欲情した素振りは全くなかった。
しかし、女を警務隊に突き出した後にお清めをした時は、フィオナの微少胸を見るなりジュリアスは美しい顔に一気に情を浮かべて、普段の数十倍色っぽくなっていたので、筋金入りの貧乳好きで間違いない。
ジュリアスはフィオナのバキバキな腹筋だって、健康的でいいね、くらいにしか思ってない。
「小さいのが嫌なら大きくしたらいいんじゃないかな?」
フィオナが少し沈んだ様子だったからか、ジュリアスがそんなことを言う。
「魔法で大きくなるの?」
途端にフィオナは目を輝かせながらジュリアスに問うた。
公式には秘密だが、ジュリアスたちブラッドレイ家は魔法使いの一族で、母のロゼ以外は皆魔法が使えたり、まだ力が発現していなくても魔法使いの素養があったりするらしい。
「いや、魔法で大きくするのは一時的なものだったり身体に影響があったりするからおすすめしない。そうじゃなくて――――」
ジュリアスは言いながらフィオナの水着の留具を外す。
「✕✕しようか?」