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微睡む牙古鳥の随筆

儚い想いを繋ぎ止めて

 外の景色の(うるわ)しさというものは、実際にその目で見て感じなければわからないもので、記憶に残る夕焼けの(あか)さは、現に目にする昼と夕、そして宵の交じる微妙な色がもたらした想起には、到底敵わないものである。あまりにも微妙過ぎて、単純な色情報で考えると「別に特筆するほど綺麗でもないっていうか、単品で考えるとむしろあんま綺麗じゃなくない?」というものであれ、その場にて空気と、ついでに新鮮な悪くない感情とともに見上げる空には、生きる喜びに紐付く何かが感じられるものだ。たぶん。


 もちろん、別に例えば「誰かが撮ってきた風景写真には、真に迫る想起がない」だの、「実際にその身を(もっ)て経験した事象以外には価値がない」だのと言いたいわけではなく、その時その場において感じることというのは、その経験も含みで感じられていることであるから、それを後から完全に再現できるわけではない…… という、たったそれだけの、単体では何ら意味を持たない話なのだが、一方で、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というのも、また純然たる事実ではあるわけで、今回はそういった新鮮な心というものを記す、これが主題となっている。

 ついでに言うと、現実には単色は存在しないので、風景が綺麗に見えるのは、その場で観測された無限の中間色(グラデーション)に由来するものだと推定できる。科学的にどうかとかは知らん。


 が、以前も別の機会に記した通り、本質的には究極デブ将であるところの私には、平時は殊更(ことさら)書き記して意味のある具象など、原則発生しないのであり――そもそも書き記して意味のある事というのは、主観的な観点足り得ないのだが――そんな中でも「与えられた機会」という、得難い不規則性(ランダム)を上手く利用し、かつこれを無為と流さないように気を付けなければ、儚い人生というものは空虚で中身のない、客観的には「まぁなんかあったらしい時間」に堕してしまうのである。

 逆説的に、今これを記載しているのは、そういうランダムイベントがあったから、より厳密に言えば友人に誘われた、ないしは()()()()ことに由来するもので。要するに「外食嬉しいヤッター!」する話である。単純(シンプル)


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 その友人というのが、高校の頃から付き合いのある親友だ。そいつは非常に病弱で、私のように図太く不健康なものからは、見ていて不安になるほどに儚いものである。下手をすれば、健康に十分に気を遣って、なお私よりも遥かにひ(よわ)な、そんな儚いものでありながら、学生の時分はバレーボール部に属しながら健康な汗を流し、それでいてサブカルチャーを好むという、あらゆる面において意外性(ギャップ)の塊である、属性過多の萌えキャラである。まったく贅沢なやつだ。

 ところで軽率に「親友」という語を用いて他者との関係性を表現すると、実のところ相手からはそう思われてはいないのではないかとか、そう表現していない誰かのことを(ないがし)ろにしているのではないかとか、諸々考えてしまうこともあるとは思うが、実のところ余程悪く思われていない限り、相手から親友と認識されていることそのものは、不快に繋がることは殆どないものと思われるので、もっと軽率に親友と言っても誰も怒らないと思う。同様に思ってもらえるかは知らん。


 ……そんなことは、どうでもよくて。二人(サシ)で高架下の某焼肉屋に出向いたのである。下戸(げこ)の親友はいつも通り…… 確かコーラを飲んでいたのだったか。もしかしたらカルピスだったかもしれない。アルコールの類は、下手をすれば粕汁(かすじる)ですら大事に至りかねないという親友は、当然ながら酒を飲まない。近年のウイルス性感染症対策でよくある、アルコール消毒なども危険なのだそうだ。なんと体の弱いことであろうか。そんな親友を対面(トイメン)に眺めながら、私は大きめのハイボールを飲んだのだけども。美味かった。ただ、味で言えばその後に頼んだカルピスサワーのほうが美味かった。味覚が子供やからな。


 高校の頃からの付き合いとはいえ、もう三十路を()うに迎えた私にとっては、人生の半分以上の期間の付き合いである親友とは、二人(サシ)で会えばこそ話せるような、思い出話も色々とあった。らしい。何分(なにぶん)、平時はあらゆる具象的記憶を忘失の彼方へと送ってしまう私にとって、相手に語られずとも思い出せることというのは、かなり限定的なものしかなく、その大半は私自身が何かしら()()()()()という、出来れば思い出したくもないような悪いこと、罪の記憶ばかりなのだ。つまり、当時付き合いのあったものから教えてもらえるというのは、思い出す上では非常に有り難いことである。

 ついさっきの出来事なので書きやすいが、親友のマッチングアプリに利用する写真などを、ちょうど大体ニ年ほど前に撮りに行ったことがあり、その結果がパートナーの獲得に繋がったらしい、ということを感謝され、言われてみて「そういえばそんなこともあったね」と懐かしさに浸ったり、そのパートナーの方も、私などというつまらんものに会ってみたいらしい、と情報共有もいただいた。本当に、幸せそうで何よりである。


 ……そのように考えれば、幼馴染(おさななじみ)――というには若干遅くからの仲ではあるが――を、そこらの()()()()()()()()()()()というのは、少し思うところがなくもない、とは言えるだろうか。そこで気兼ねなく「俺がいるじゃないか」とでも言えるような間柄であれば、万象はもっと都合良かったのであろうが(仮に出来たとて、当の親友が受け容れてくれるかはまた別だが)。

 そんなどうでもいい仮定と感傷は、心のごみ箱に捨ててしまって、楽しく焼肉に興じたというわけだ。実際のところ、食肉が嫌いでなく、または菜食主義者(ヴィーガン)というわけでもないのなら、焼肉が旨いというのは()()()()()()()()()()()()()()()()()であるため、その辺りには特に触れない。強いて言うなら、我々にとって焼肉というのは、主に塩タンを美味しく食べるための儀式であり、その合間に食う諸内臓肉(ほるもん)やクッパなどもまた、非常に美味であった。独りでは敢えて行く気にならんが、やはり焼肉もまた良いものだと断言できる。


 その後は、駅近くのデザート屋でクレープなどを食って解散した、という一言で言ってしまえるような至極あっさりとした日常の一幕ではあるわけだが、話の流れで拙作(未公開分含む)を読んでもらい、所感をいただくなどもしていた。完全に押し付けではあるのでその辺りは恐縮だが、取り敢えず少なくとも「読める」という有り難い言葉を賜ることができた。非常に重畳(ちょうじょう)である。

 そもそも特に宣伝などもせず、只管(ひたすら)にただ自分が趣味で書くだけの拙作なので、感想というのは基本的に知人から強請(ゆす)って得るものでしかなく、(いわ)くこの世には「読めない」小説というものが、特に珍しくもなく存在はするようなので、楽しんでくれる人が(自分以外にも)存在する、という事実が(こと)(ほか)嬉しいものなのである。結果にレビューを賜って、フィードバックを反映するのは大事なので、これからも精進して参りましょう。具体的には、情景描写を意識します。

 ついでに、私ももっと色んな作品に自発的に触れていきたいと思います。これについてはまぁ思うだけかもしれません。


 しかし、(たま)に食うクレープってのは、至上の甘味ですよね。生クリームとカスタードは、(まさ)しく神の賜物(たまもの)。異論は認める。


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 得るものの多かった、楽しい時間も過ぎ去って、帰り道は暗い夜を、独り寂しく歩きながら、行きも見た景色に想いを()せ。夕方の、昼と夕と宵の入り乱れる贅沢な色遣いの空も良いものながら、夜の静謐(せいひつ)な暗い青もまた、至上の景色の一つだと実感するのである。欲を言うなら、満天の星空とかもまた見てみたいものだ。高校の時分に一度だけ行った、剱岳(つるぎだけ)のキャンプ地からみた星空が懐かしい。正直「綺麗だった」という、情報密度が皆無なことしか覚えてないが。


 またこれからはどんどんと暑苦しい日に近付くのだろうけれど、春先の夜の涼やかな風が、「過ごしやすい季節」という希少な期間が現にあることを思い出させてくれる。これもまた、独り歩く故の想起なのかもしれない。誰かと居るときは、誰かのことを見てしまうから。ならば、独りの時間もまた、得難い幸福の一つなのではあろう。ずっと独りだと寂しいけどさ。



 そんなわけで、今日のまとめといたしましては、今風(モダン)に表現するならば……


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