表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになった  作者: 山野エル
第3章 この世界が思ってた以上にやばかったんですけど
79/107

幕間:分からないことばかり

~メスタを訪れた藍綬(らんじゅ)たち~



 おかしいと思ってはいた。

 街へ向かう街道で多くの人とすれ違っていたのだ。誰もが不安を抱えたような顔をしていた。


「大変な時に来たね!」


 街が上を下への大騒ぎの中、露店の商人が私たちへ声を張り上げた。第七魔王は溜息をついた。


「なんなんだ、この騒ぎは?」


「まったく、迷惑な話だよ! それより、こんな物騒なんだ。身を守るものでも買って行かないか?」


 ぐいぐいと迫る商人を押しやって、第七魔王は雑踏を掻き分けて行く。イヅメに肩を貸しながら私はその背中を追う。だが、ずっと胸の中に引っかかっていることがあった。


「なんで言葉が分かるの……?」


 このアニメみたいな世界に急にやって来て、言葉も違うはずだ。この街で飛び交っている言葉を私は何の労もせず理解できている。ということは、日本語なのか……? そんなバカな。ここでもそんなアニメみたいなご都合主義があるというのか?


「そんなことはどうでもいい。しかし、まさかこんな愚か者どもの街に辿り着くとは……」


 私はイヅメの横顔を見つめる。彼は獣人だ。明らかに私の世界とは違う異世界からやって来た存在だ。そんな彼も私と言葉を交わすことができている。よくよく思い出せば、異世界からの住人たちが集まっていたあの地下空間でも、私はコミュニケーションに苦労しなかった。


藍綬(らんじゅ)、奴に気を許すな」


 私の耳元でイヅメがそう囁いた。その眼は第七魔王に向けられている。


「分かってる。私だってあいつを信用してるわけじゃない」


 イヅメは小さくうなずいたが、その手が彼の腰に()いた太刀をきつく掴んでいるのを私は見逃さなかった。


 私たちは第七魔王に命を奪われかけたのだ。彼は私を超越者(トランセンデント)と呼んだ。それが何なのか、そして、この世界が何なのか、私は分からないままだ。そして、いまさら第七魔王に教えを乞う気にもなれなかった。


 だから、私にはもうシリウスを探して彼に会う以外、心を支えるものなどないのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ