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「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになった  作者: 山野エル
第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
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幕間:新世界へ②

~謎の敵を撃退したイヅメとナズサ~



 森を抜けて岩肌を剥き出しにした山の(ふもと)に出ると、イヅメとナズサは崖の(たもと)に奥まで続く亀裂を見つけた。


「ここか」


 イヅメは松明(たいまつ)を作って深い穴の先に目を凝らした。


「この辺りで連れ去った人を隠しておくには格好の場所だね」


 周辺の集落で聞き込みをしていた二人は情報を収集して、この場所割り出していた。


「だとしたら、さっきのあの化物はここを警備するために居たのかもしれない」


 イヅメは言いながらナズサの手のひらを一瞥した。〝鉄血の枝〟を使うために手のひらを切ったナズサは傷の手当てをして包帯を巻いていた。


 しばらく暗い穴を進むと、行き止まりにぶつかる。そこには重い鉄の扉が待ち構えていた。鍵がかかっているのか、扉は閉ざされたままだ。扉の脇には奇妙な板が貼りついていたが、それが何を意味しているのか二人は分からなかった。


「仕方あるまい」


 イヅメは千々秋月(ちぢしゅうげつ)を振るって鉄の扉を切り刻んだ。扉の向こうからは穴倉の奥底には似つかわしくない白光が溢れ出した。イヅメは松明をそばに放り捨てた。


「なに……? ここ……?」


 扉の向こうは光に満ち、床や壁や天井もこの世界の家屋とは一線を画すような材質のもので出来上がっていた。ナズサはつるつるとした白い壁に手を滑らせて呟いた。


「あの化物の身体と似てる」


「とにかく奥へ。囚われた人たちがいるかもしれん」


 イヅメは奥へ続く通路へ足を踏み出した。


   ***


 その薄暗い部屋の中央には透明な筒が鎮座していた。その大きな筒の中には、イヅメたちと同じような狼の獣人が手足を拘束されて囚われている。囚われの身のその人は、すっかり生気を抜かれたようにぐったりとしていた。


「今助ける!」


 ナズサが駆け出し、イヅメが後について部屋の中央へ向かうと、部屋がパッと明るくなる。


「君たちですか、侵入者は」


 部屋の入口に立っていたのはイヅメたちとは違う、毛のない人物だった。真っ白な肌に金色の頭髪、灰色の瞳。身にまとうのも白衣で、色味のないその姿はイヅメたちには亡霊のように映った。


「お前たちか。人を(さら)い集めているのは」


 イヅメは太刀の柄に手を置いた。それは彼なりの警告であったが、亡霊のような人物は超然としていた。


「君たちの体毛を収集して遺伝子情報を調べたが、残念ながら、君たちは取るに足らない存在のようだ」


「何を言ってる!」


 ナズサが弓を構えるが、相手は口元を歪めて、ふっと笑うだけだった。


「だが、〝越境〟の被験体くらいにはなるだろう」


 イヅメもナズサも武器を構えることしかできなかった。目の前の相手に対し、攻撃意思というものが湧き上がらないのだ。


「君たち程度の生物であれば、確率偏極(へんきょく)で攻撃意思を生じさせないことくらいは容易(たやす)い」


 どこかで何かの駆動音が鳴り始める。すると、透明な筒の中で異変が起こった。火花が散って、その火花を核にして光が(ほとばし)り始める。


「ぎゃあああああああ!!」


 今までぐったりとしていた筒の中の人物が苦痛に満ちた絶叫を上げる。


「やめろ!」


 イヅメが怒号を発するが、亡霊のような人物はゆったりと佇んだままだ。


「君たちが立っているその円形のフロアは、拡張された〝扉〟の影響下に置かれる」


「何を言っている……!」


 筒の中の絶叫が増していく。その身体から立ち上った光の柱は灰色の天井にぶつかると急激に太さを増して、イヅメたちを飲み込んで行った。

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