表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになった  作者: 山野エル
第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
61/107

12:魔を祓うもの

 青い髪の少年──シリウスは自分が見聞きしたことを言葉少なに話し終えると、私を見つめた。綺麗な金色の眼だ。


「君の中にアーガイルがいる。それは間違いない」


 夏彦の家で聞こえた私の内なる声。あれが、シリウスが元の世界に連れ戻そうとしているアーガイルという人だったのか?


「そんなアニメみたいなことが……。で、シリウスはそのアーガイルを追ってこっちに来たってこと?」


 夏彦が早くも親しげに問い掛ける。


「光の柱の出所(でどころ)を探してそこにいた連中に〝扉〟を開かせた。それで、このザマだ」


 運転席の明良(めいら)の息(づか)いが荒くなる。


「早く手当てしないと……」


「あっ!」私の横で夏彦が大声を上げる。「なんとかなるかも!」


「良い案でもあるの?」


「この前、異獣(いじゅう)が現れた時、僕が助けた子どもがいたでしょ。あの子のお父さんが医者なんだよ。何かあったらと連絡先を貰ってた」


 夏彦のお人よしが希望を繋いだのだ。私は思わず彼を強く抱きしめた。


「すぐに来てくれるってさ!」


 彼が運良く家から持ち出していたスマホで、医者と連絡を取ることができたようだった。運転席の明良は不安げだ。


「その医者から鎮守府に気取(けど)られたら……」


「大丈夫だよ。極秘で、とお願いしたから」


 シリウスは浮かない顔だ。


「ボクはアーガイルを元の世界に連れ戻さなきゃならない。だが、どうやって……」


「明良は異獣の中の人が鎮守府の地下に集められてるって言ってた。そこに行けば何か分かるかも……」


 私はそう提案するが、彼が求めているのは私の中にいる人だ。私はどうすればいい?


   ***


 しばらくして、夏彦が呼んだ医者の車が夜の闇を切り裂いてやって来た。すぐに明良の応急処置が手早く行われる。医者は真剣な表情だ。


「危険な状態だから、すぐに私の病院へ運びます。同行する方は?」


 夏彦が手を挙げる。残る私とシリウスを見て、彼は寂しそうな顔をした。


「鎮守府に行くなら、僕は足手まといだから」


「足手まといなんかじゃ……」


「僕にできることをやるだけだから気にすんなって。四路坂(しろさか)、気をつけろよ」


 シリウスの(まと)う気配に一気に殺気が(みなぎ)った。


「いいから早く行け!」


 彼の視線の先、路地の中ほどに虚無僧(こむそう)のような深編笠(ふかあみがさ)を被った忍び装束がひとり立っていた。腰に()いた太刀に目がいってしまう。

 夏彦たちが慌てて車に乗り込む中、謎の虚無僧が駆け出す。人間のスピードじゃない。

 シリウスが全身を炎で包み込み、それが弾け飛ぶと、仰々(ぎょうぎょう)しい貴族みたいな格好になる。


(まか)り通る」


 虚無僧が呟いて、抜刀する。シリウスが炎を纏った腕で斬撃を防ぐと、手のひらを相手に向け、爆炎を放った。虚無僧は直角にそれを回避して、夏彦たちの乗った車に迫ろうとする。

 私は飛び出して行った。


「ダメっ!」


 思い切り手を突き出すと、烈風が巻き起こって虚無僧を足止めする。私の……いや、これがアーガイルの力なのか?


 頭に被った(かさ)を押さえながら、虚無僧が舌打ちをする。


「やはり、魔の者か」


 そう言って、太刀を顔の前に横倒しにする。

 グッと柄を握った瞬間、周囲から一切の色が消えた。モノクロの世界の中を虚無僧が高速で突進してくる。私の目の前にシリウスの背中が横入りする。

 虚無僧の振り払った刀身から尾を引くように色彩の欠片が(せき)を切る。振り抜いた鮮やかな斬撃がシリウスに叩きつけられる。斬りつけられたわけではないらしい。シリウスはすぐさま炎で反撃しようとしたが、不発に終わってしまう。


千々秋月(ちぢしゅうげつ)──魔を(はら)う霊剣だ」


 虚無僧が刀を掲げると、再び周囲に色が戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ