表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになった  作者: 山野エル
第2章 いきなりロボットアニメみたいな世界に放り込まれたんですけど
47/107

幕間:私、お母さんじゃないんですけど

~平時の鎮守府にて~



 殯森(もがりもり)は失望とも絶望とも諦めとも取れるような眼差しを御料宮(ごりょうのみや)へ向けた。彼の執務室でのことだ。

 デスクの上には作りかけの骨骼(こっかく)兵器の1/60プラモデルが載っている。本来、本が収まるべき本棚には彼が手作りしたジオラマが鎮座していた。


「おう、殯森、何か用か?」


 海外のギャングみたいに口元にバンダナを巻いた御料宮が執務室の入口を振り向いた。その手には塗装用の缶スプレーが握られていた。


「『何か用か?』じゃないですよ。ここで遊ばないで下さい。この前、ここでスプレーしすぎてガス警報器が鳴ったの忘れたんですか?」


「換気してるから大丈夫」


「そんなことより、さっき異獣(いじゅう)出現パターン解析の件でメッセージ送ったんですけど、見てないですよね?」


 殯森は床に散らばった段ボール箱やらのゴミを手早くまとめて部屋の隅に押しやった。


「殯森よ、確率なんてものは、所詮はまだ起こってない事象をこねくり回してるだけに過ぎんのだぞ。俺たちは目の前に現れた異獣どもをぶっ倒すことを考えてればいいんだ」


 そう言い放って塗装ブースに立つプラモデルに缶スプレーの中身を散布する。そんな彼の両肩を掴んでデスクに連行しようとする殯森に御料宮は必死で抵抗する。


「ああー!! 俺のイシビベノブがぁ!!」


 フランスが有する骨骼兵器に塗装のムラができて、御料宮は嘆きの叫びをあげた。


「いいから、仕事して下さい!」


「お前、俺はアレを大切に作り上げてきたんだぞ……!」


「じゃあ、邪魔されたくなかったら片付けて下さい。司令なんかシャボン玉くらいがちょうどいいですよ」


「なんだ、どういう意味だ、そりゃ?!」


 殯森は(こた)えずに御料宮を椅子に座らせ、パソコンを操作してさきほど送ったメッセージを表示すると、そのそばに腕を組んで仁王立ちした。


「私が監視するなんて、本末転倒ですからね。無意味な時間ですよ、これ」


「分かった、分かった……。ちゃんと見とくから、殯森は自分の仕事に戻りなさい」


「信用できないんですよ」


 困惑した表情を浮かべてパソコンのモニターに意識を集中する御料宮だったが、部屋のドアがノックされる。顔を覗かせた部下が、戸惑いがちに報告する。


朝霧(あさぎり)さんがまたどこかに行ってしまって……。こちらには来ていませんか?」


 殯森は(ひたい)に手のひらを押しつけて溜息をついた。


「私が探しに行くから、あなたは持ち場に戻っていいわ」


 デスクで御料宮がニヤリとする。


「そうだ、そうだ、探しに行けぃ」


 上司をギロリと睨みつけて殯森は歩き出す。


「私が戻って来てもチェック終わってなかったら、マジでお腹にパンチしますからね!」


 御料宮は青ざめた。


 ──アレは二、三日残るんだよな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ