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第1章16と17の幕間:ぬるい指輪

~魔王からベテルギウスへの命令~



 アーガイルたちが魔王の下命(かめい)で玉座の間を出ていくと、この会合も解散となった。


「ベテルギウス、お前に頼みがある」


 魔王が声を掛けると、三人の四天王の間にピリついた空気が張り詰める。


 ベテルギウスの勝ち誇ったような顔。

 シリウスの驚きと失望の眼差し。

 プロキオンの微かな舌打ち。


 ──あなたたちはもう用済みよ。


 そう言わんばかりの目を向けて、ベテルギウスは魔王のそばに(かしず)いた。

 選ばれなかった自分から目を背けるようにシリウスとプロキオンが玉座の間を出ていくと、魔王はベテルギウスの眼前に手を差し出した。


 ハッとして顔を上げたベテルギウスの眼に金色の指輪が飛び込んでくる。


 ──?!?!


 ベテルギウスは混乱した。


 ──これは結婚?! ……私と?!


「これをアーガイルに渡してほしい」


 ベテルギウスの想像は魔王の一言で(はかな)く崩れ去った。だから、次に発する彼女の声はどこか(とげ)のある響きを帯びていた。


「アーガイルに……?」


「第四魔王は彼奴(あやつ)に接触を試みるはず。その時に私に(しら)せるようにしておきたい。これはそのための指輪だ」


「お言葉ですが魔王様、あの人間にそのような価値など──」


「できないというのか?」


 深く沈み込んだ赤い瞳が真っ直ぐとベテルギウスを捉えた。飲み込まれてしまいそうな深紅の魔眼に、ベテルギウスは死の匂いすら感じ取った。


「い、いえっ! そのようなことは……!」


 魔王はにこりと笑った。


「よろしく頼むぞ」


 ベテルギウスは指輪を預かり受けて頭を下げた。


()(がた)き幸せ」


 しかし、床に向けたその表情は言葉とは裏腹に寂しさを滲ませていた。

 指輪に残る魔王の体温を手のひらで受け止めると、ベテルギウスは立ち上がった。


「では、行ってまいります」

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