第1章15と16の幕間:城を守るもの
~魔王城に呼び出されたプロキオンとベテルギウス~
「遅い」
玉座の間で、プロキオンが腕組みをしてベテルギウスを迎えた。赤い髪が揺れる。
「私はあなたみたいに暇じゃないのよ」
ベテルギウスの冷ややかな緑色の眼が、相手にならないというように視線を返した。
「ほざけ。どうせ遊び回っているだけだろう」
ベテルギウスは意味ありげにほくそ笑んでそっぽを向くと、話題を切り上げるように言った。
「魔王様の呼び出しなんて珍しいわね」
「魔王城を空けるなんて、普通じゃないからな」
「嫌な予感がするけど……」
プロキオンが鼻で笑う。
「その予感とやらは、お前の気分次第で変わる曖昧なものだろ」
「まあ、粗忽者には感じ取れない微かな力の流れというものがあるから、あなたが分からないのは無理もないことよね」
二人の間に沈黙が訪れる。
次に口を開いたのはベテルギウスだった。
「セバスチャンもいないのね」
「いつも口うるさいジジイがいないのはせいせいする」しかし、その顔は少し強張っていた。「……本当に只事じゃないかもな」
「そうね……」
二人の視線の先で空間が歪む。
魔王たちが戻って来たのだ。




