表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/107

第1章9と10の幕間:ライバルとして

~アーガイル騎士団入団後~



 長く伸びる足で一歩踏み込むと、クラウスは練習用の剣を思いきり横に()いだ。ひょいと飛び上がったアーガイルがそれを回避すると、爪先(つまさき)を伸ばした足を空中でクラウスの鼻っ面に叩き込む。


 苦悶の声がして、クラウスが(たま)らずに地面に転がった。


「卑怯だぞ、お前! 剣技で戦え!」


 鼻血を流しながらクラウスが立ち上がる。金髪碧眼(へきがん)の端正な顔立ちが怒りで崩れている。


「俺たちが戦うのは剣なんか持ってない連中だぞ。実戦でも魔物相手にそんなこと言うのか?」


 アーガイルがニヤリと笑う。


「今は剣術鍛錬の時間だろ!」


 クラウスが両手を広げて周囲を見回す。二人一組で剣を交える騎士見習いたちが汗を流していた。


「そこまでだ、二人とも」


 剣術指南役のブロスが声を上げると、クラウスは不満を胸の中に押し込めて直立不動になった。

 ブロスが笑う。


「アーガイル、俺はお前を曲芸師にしたいわけじゃない。真面目に剣を使え」


「すんません」


 それを見て、今度はクラウスがニヤリとする。しかし、ブロスの声が飛んだ。


「だが、アーガイルの言うことももっともだぞ、クラウス。戦場で卑怯だなんだなんては通じない。今のが魔物の爪だったら、お前は死んでいたかもしれないんだ」


「ですが師匠……!」


 ブロスは軽く手を挙げてクラウスを制した。


「議論をするつもりはない。顔を拭いて手当てをして来い」


 ブロスの背中が遠ざかると、アーガイルが汗を拭くための襤褸切(ぼろき)れをクラウスに投げて寄越(よこ)した。


「悪かったな」


「ふん」クラウスは血を拭って不敵な笑みを浮かべた。「お前に成績で抜かれるわけにはいかないからな」


 そう言って、転がっていた練習用の剣を拾い上げて構えた。


「なんだ? まだやるのかよ?」


「無論だ!」


 叫ぶように気合を入れて地面を蹴るクラウスの眼は輝いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ