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第1章3と4の幕間:喪に服す

~アーガイルの葬儀の後~



 ロゼッタが泣き疲れて眠りに落ちた。

 アーガイルの父と母は階下に降りて、静かなテーブルを囲んで腰を下ろした。


「まだ実感が湧かないわ」


 母の代わりにロゼッタが泣いたからだろうか、その頬は乾いたままだった。


「あのバカ……!」


 小さくテーブルに拳を叩きつけると、父は項垂(うなだ)れた。


「あの子が騎士団に入ると言った時、私たちは止めるべきだったのかもしれない」


「いまさらそんなことを言うな」


 父の(まぶた)の裏にも当時のことがありありと蘇る。

 見違えたような凛々しい眼差しがそう告げたのだ。父はその時、驚きと共に平和を愛する心が息子にも受け継がれたのかと感じたものだ。

 あの時の思いを、父は否定などしたくなかった。後悔などなかったのだ、息子を送り出す時に。


「シルディアのために戦ったのよね、あの子」


「そうだ。正しい世界のために。誇り高き息子だったんだ」


 父は何度もそう口にした。それだけが息子の死を埋める拠り所だった。

 母は金色のプレートがつけられたアーガイルの肖像画を見つめた。シルディア王から贈られたものだ。


 そのプレートにはこうある。


【シルディアのために戦い抜いた勇者】


「勇者、なのよね?」


 父はうなずく。


 二人とも、その言葉が意味するものを心の中から探し出そうとしていたが、やがて諦めたように静かに流れ落ちた涙を拭った。

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