表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/107

第1章2と3の幕間:甘く穏やかな

~勇者が現れるよりも前のこと~



「せーばーすーちゃーんー!」


 どこからともなく魔王の声が聞こえてきて、セバスチャンはひとり微笑んでしまった。

 あの甘えん坊な声に振り回されるのは、彼にとって生き甲斐と言ってもよかった。


 早速、城内を探し、魔王の居室に彼女の姿を認めた。魔王は靴を脱いでベッドの上に大の字になっていた。


「お呼びでございますか、魔王様?」


 魔王は勢いをつけて上体を起こした。その顔が言葉多く語っている。「つまらない!」と。


「遊び相手がいない!」


 そう訴える魔王は駄々っ子そのものだ。


不肖私(ふしょうわたくし)でよろしければ、お相手いたしますが」


「セバスチャン手加減するんだもん」


 配下の者と接するのとは違う魔王のその一面はセバスチャン以外は誰も知ることがないだろう。

 セバスチャンにはそれが嬉しくも物悲しく感じられる。


「魔王様がお強うございますから……」


「ふふん」魔王はにこりとする。「私に敵う者はこの世界にはおらんからな」


「また私めが化物(クリエイテッド)をお造りしましょうか?」


「セバスチャンのセンスを私は認めんぞ」


 セバスチャンは困惑して頭を掻く。百二本の触手を持つ魔物・メヌスドラントは彼の傑作であったが、魔王は一言。


「キモい」


 そう言って一撃のものに灰燼(かいじん)と帰した。


 ベッドの上の魔王がボーッと窓の外を見つめていた。


「あーあ、強い勇者が来てくれればいいのに」


 いつもなら多少言葉を厳しくして「そんなことを(おっしゃ)るものではございませんよ」と(いさ)めるところだったが、セバスチャンは魔王の横顔をじっと見つめていた。


 ──本当に、そうなればいいですね。


 その言葉を胸の中にしまって、セバスチャンは言った。


「では、ケーキをお作りしましょう」


 途端に魔王の表情がパッと明るくなる。


「うむ! セバスチャンはケーキ作りの腕前だけは超一級だからな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ