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「世界の半分をくれてやる」と言われて魔王と契約したらとんでもないことになった  作者: 山野エル
第3章 この世界が思ってた以上にやばかったんですけど
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16:反撃の狼煙

 ちょっとの沈黙があって、魔王は冷や汗を垂らす。もう一度指を鳴らす。


「あ、あれ……?」


 俺たちには何が起こっているのか分からない。


「魔力供給を断っても意味がなかったんだろう」


 第七魔王がバカにした笑いを浮かべると、ファレルは心底失望したように肩を落とした。


「なんとなく、そんなうまいこといくわけないよなって思ってたよ」


「なんでだ……」


 茫然とする魔王にセバスチャンが進言する。


「シグニ様の魔力供給路が他にあるということでしょう。そもそも、魔王様に生殺与奪(せいさつよだつ)の権を握られている状態でシグニ様が狼藉を働くとは考えにくいことではございませんか」


「そ、そんなこと分かってる!」


「もともと期待などしていない」第七魔王も冷ややかに言う。「それに、これでシグニが何者かに操られているのは確かなことになったわけだ」


 魔王はちょっと拍子抜けしたように口をすぼませている。外見に(たが)わない子どものようだ。俺はそんな彼女に提案をする。


「シグニを造って居場所を直接()けばいい」


化物(クリエイテッド)は同じものを造っても別物だ。その手は使えん」


「じゃあ、シリウスなら?」


 魔王の顔がパッと明るくなる。


「その手があったか! でかしたぞ、アーガイル!」


「待て!」第七魔王が声を飛ばす。「そんなことをすれば、向こうにもこちらのことが筒抜けになる」


「それでもいいからやれ! レヴィト様を救い出すためなんだ!」


 ファレルがそう叫ぶと、魔王は笑った。


「やれやれ。魔族より人間の方が血気盛んではないか」


   ***


 結局、シリウスを造ることになったが、動向を探られないようにこちらの行動計画を練ってから実行に移すこととなった。


 ファレルは真っ先にレヴィト救出へ向かうと宣言したが、彼女の居場所を割り出す必要があった。シルディア王は首を捻る。


「聖女を連れ去ったからには、奴らは我々人間の煽動に利用するのではないだろうか」


「となると、再び聖都に移される可能性が」


「仕方ない。私が同行する。お前は頼りない」


 第七魔王が進み出ると、ファレルは意外そうに目を丸くしたが、すぐに礼を口にした。

 俺のすべきことはすでに決まっていた。


「俺はビジュマステへみんなの無事を確かめに。それが済んだら、シリウスを追う。魔王とセバスチャンは?」


「魔王様がシリウス様をお造りになられたら、不肖(ふしょう)セバスチャンがシリウス様のもとへ。魔王様はここをお守りください」


「いや、私が出よう」


「魔王様のお手を(わずら)わせるわけには……」


「セバスチャン」魔王が悪い顔をする。「私は少し運動がしたいのだ」


「それでは、仰せのままに」


 シルディア王は街に戻り、事態の説明と復興参加を希望していた。プロキオンが彼を守るために同行することに。


「ふん。さしずめ人魔(じんま)連合といったところか」


 魔王がワクワクしたように目を輝かせた。図らずも、人と魔族が手を取り合うような形になっていた。

 魔王がお互いの言葉を伝達できる指輪を作り全員に持たせると、俺たちは行動を開始した。


 俺は魔王城を出て、白む東の空を見上げた。

 ビジュマステへ。


 その前に、俺には確認しなければならないことがある。あの不思議な力だ。


 身体の奥底から何かを引き出すように集中すると、鈍色(にびいろ)の表層が俺の体を覆う。藍綬(らんじゅ)の世界を出る時の記憶がフラッシュバックした。これは俺の中に取り込まれた骨骼(こっかく)兵器の力に違いない。そして、顕現(けんげん)した魔族の身体にも似ている。


 ──顕現外殻(けんげんがいかく)


 そう名付けたこの力を(まと)って飛翔魔法を発動させる。魔力が俺の奥底から湧き上がるのを感じる。

 そして、一気に空の彼方へ加速した。

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