15:ひと筋の光
「その後、戻っていらしたプロキオン様にここの守護をお頼みした後で、魔王様のもとへ馳せ参じた次第でございます」
プロキオンの話を受けてセバスチャンが言葉を付足す。魔王は納得したようにうなずいた。
「統治同盟にそんな裏があったのか……」
シルディアの騎士として戦っていた俺には、耳を疑うようなことだ。
俺に視線を注ぐシルディア王は未だに俺がアーガイルであることも、目の前に魔王がいることも飲み込めないままらしい。
「そのダレンサランとシグニとかいう奴に何の関わりが?」
第七魔王がそう尋ねる。
「ダレンサランはシグニの造った化物だ。そんなことも知らんのか」
呆れるプロキオンを第七魔王が鼻で笑う。
「生憎、私はボンクラなこの世界の住人ではないのでな」
プロキオンが憤りを込めた目で睨みつけるが、魔王の咳払いひとつで場が収まる。
「さすがにシグニを殺らねばならんな。世話の焼ける奴だ……」
ファレルが勇ましく声を震わせる。
「レヴィト様を連れ去ったのも、シルディアを崩壊させたのも、シグニの仕業だ。絶対に許すわけにはいかない……!」
シルディア王がビクリと身体を強張らせる。
「シルディアが……崩壊……?」
「うむ」魔王がうなずく。「お前が統治同盟の裏で蠢く連中を焚きつけたせいでな」
「本当……なのか……?」
シルディア王はその場にへたり込んでしまう。俺は咄嗟に駆け寄ってその身体を支えた。
「残念ですが、事実です。今は生き残ったみんなが復興に当たってくれています……」
動揺に塗れた瞳が俺を見つめる。こんな王を見たのは初めてだった。
「君は……本当にアーガイルなのか?」
「もうお会いしたくはなかったでしょうが」
「魔族に寝返ったと報告を受けていたが……、今では何が正義なのか分からん」
その言葉に魔王を始めとした魔族たちが口元を歪めて嗤う。魔王は溜め息をついた。
「人間は正義という言葉が好きだな」
俺はシルディア王に手を貸して、ゆっくりと立ち上がらせた。彼は力なく微笑む。
「ずっと勇者が街を出て行く姿を見送ってきた。その度に言い知れぬ後悔を抱いてきたのだ。本当に統治同盟が腐っていたのなら、それに従ってきた私は間抜けだ……」
「俺は家族すらも救うことができませんでした。ですが、もう今の自分にやれることをやるしかありません」
シルディア王は目を丸くして俺を見つめた。
「いや、君の家族は生きている」
唐突過ぎて言葉が素通りしていた。王は続ける。
「君が魔族に寝返ったことで、君と繋がりのあった者は迫害の恐れがあった。だから、私としても都市の庇護下に置くことはできなかったのだ……。すまない」
「シルディアを出たということですか……?」
シルディア王がうなずく。
──生きている? みんなが?
「スカーレットたちもですか?」
「ああ、そうだ」
思わずシルディア王の肩を掴んでいた。
「どこに行ったんです?!」
「と、東方のビジュマステを目指したはずだ」
絶望の淵から光が見えたような気がした。
「盛り上がっているところすまん」魔王が口を開いた。「今からシグニの奴にお仕置きをしようと思う」
「居場所も分からないのに?」
ファレルが訝しんで応える。
「彼奴は私を魔力源としている化物だ。つまり、私が魔力供給を断てば死ぬ。このように……」
魔王はニヤリと笑って、指を鳴らした。




