遍く女神の戦い
失礼な事に同時に「あー!」と人差し指の先端を向けられるも、特に気にしない様子であった。
おさらいしておくとナゾ子はドロシーを星の祭壇へ導き幼馴染である「カナイ」の死を知らせた人物だ。
またクーラ曰くover end contents.の封印を解いたと証言もあるが真意は不明。
不気味な笑顔を振りまきドロシーの方へ、両手を優しく持ってまるで恋でも始まるのではないかと握られた側は頬を染める。
ふと我に返って握られた手を振りほどき首をぶるぶる横に振り回す。
「とにかく何の用事? 私忙しいんだけど!」
「この世には女神達がいる。ドロシーさんとクーラさん、貴方は信じますか?」
「いないわ! そんなファンタジー作品の世界じゃないんだから」
こっちもぷりぷり怒り始めた。嫌われてるんだか好まれてるんだか。
問われたもう一人も否定こそしていないが信じていない様子で、またしても物事の輪郭を捕えれていない。
ナゾ子は数センチ中に浮いてひらりと一回転する。今度はあどけない笑顔になって人差し指を天に向け軽く掻き回しては、黄色の柔らかい風を起こす。
「自分も女神の一人なのですよ? うふふ」
ドロシーの脳裏には女神という言葉が引っ掛かって仕方なかった。
そういえばカナイはあの時女神になる! ってよく言ってたな。と思い出が鮮明に蘇る。
ナゾ子とカナイが重なって見えた。ぼーっと顔を見てしまう。
「やっぱりドロシーさんも好きなんですか? わたしもです」
またしても首を横に振る。
「いやいや! もうカナイはいないから! 女神もいないから!」
今度はナゾ子が手を差し伸べる。手の平には七色に変化する小さな空間があった。
「ドロシーさんは女神になれる素質がある。わたし達の世界を救うのです……優しい魔女さん」
周囲は薄暗くなり、より七色の空間は誇張されクーラの瞳にも色が反射されてゆく。
手の平を上から覆い被せるように差し伸べ徐々に身体へ浸透するようだった。
髪型も変わり雑に長かった後ろ髪はぼわぼわだがまとまりもある。
本当に何も変わってないと思ったら試してみてください。自分はこの世界でやらなきゃいけない事がある。緑埜 雷太という男を探す」
「雷太君? さっき警察の魔女さんに連れてかれたよ」
「……また余計な事を」
若干不機嫌そうになりつつも低空浮遊しながら店を出た。
あまりにも突然すぎる事にドロシーはただ茫然とナゾ子の行き先を見つめていた。




