ネクロズ魔法
ここは嘘をついておこう。妄想とか精神的な病かもしれないし俗に言う厨二病を引きずってる痛々しい子かもしれない。
現実世界に魔法なんて存在しませんよと伝えてこの場を立ち去ろうと仕草をした。
「これ見て」
ドロシーの使っていたコップにマスターと共に視線を集める。集中した目つきになりながら取っ手に触れると腐って粉になって形を失ってしまう。
見た事の無いタイプの、まさに『魔法』であった。
驚いて固まってしまうと同時に妙な嬉しさと怖さ。
「分かったよ。これ渡しとくから明日ここに来て」
大都市の少し外れた場所、地名は魔女の村と書いていて正確な行き方を示したメモ帳を有栖川に渡す。
ドロシーが出た後に「今日の分は明日払うから!」と言って後を追うように出た。
虚しくも音を鳴らす扉の楽器を見て「自慢のコップ……」と物悲しげに立ち尽くした。
世界の殆どの人口が知らない、或いは噂に聞いていても都市伝説としか謳われない一つの村が有栖川の目の前に広がる。
ここだけ異世界を切り取ったかのような、そういう異質さすら感じた。
現代の子がするような私服で来たので魔女や魔道士が着るような物をまとっている人達しかいないので、既に色んな意味の視線が集中した。
老婆の小さな丸眼鏡をかけた人がゆっくりと近づいてきてじろじろと観察を始めた。
「間違いない、この子は村の者ではない。どこから来たのか?」
「え。私は大都市から来た人だけど」
手首を掴まれて「来なさい」とだけ言われなすがままに来たのは藁の屋根と雑に加工された木材の壁をした一軒家。
座れとテーブルの前へ、正面に婆さんが肘をついて腰掛けた。
「何で大都市の子が魔法を持ってるんじゃ? 長年生きてるもんでの、見れば分かる」
自分は長年生きてないし魔法使いでもなかったんだけど見たら分かった、のは何でだろうと疑問に思いつつ出された赤い色の液体を見て自分の住んでる世界ではないなと悟った。
「因みに何の魔法か分かる? 日に日にこの魔法強くなってる感じして」
「分からん。見た事無い」
「あ、はい……」
突然、ケダモノだ! と魔道士で片手に魔道書を持ついかにもという男性が、鋭利な性質を持つ風の魔法を使い有栖川に放ってきた。
腕を前に突出して手の平が風に触れる。風が目標を切り裂いてしまう直前で溶けて柔らかい風となり、ピンク色の髪を優しく揺らす。
「久々に使った、この能力。そうだ、そういえばこれを私は『ネクロズ魔法』と呼んでた気がする」




