脱出
兵士達に連れ去られた後、俺たち3人は地下牢に入れられてしまった。
「国際人道法に基づいて人道的な扱いをしてもらえるのだろうな」
「異端者が人道的な扱いを受けられる訳ないだろ」
これからの自分達の扱いに対する懸念をつぶやくと佐々木が冷静に答えてきた。
「そもそも中世に人道法なんてあるわけないか。火炙りにされないといいな」
「しかしこの牢獄どうにかならないのか」
カビの生えたベッドに穴を掘っただけのトイレ。不衛生極まりない。
地下牢で不満を垂れていると牢の扉が開かれて、1人の男が放り込まれてきた。
「お前ら会いたかったぜ」
「晴、どうしてここに」
彼の名前は石川晴、3人の友人だ。彼はほぼ毎日学校に遅刻してくる、3人とは放課後よく遊ぶ仲だ。
「お前らと仲がいいのと、独房にぶち込んだことに抗議したからだ」
「かばってくれてありがとな」
「それで、いま向こうはどんな状況だ」
「いま向こうでは俺らの関係者の洗い出しが徹底的に行われている。俺らと仲のいい奴はもちろんのこと、口ごたえしたものや独房に放り込まれた人がどうなるか聞いたもの、しまいには苗字が一緒なだけで異端者の疑いをかけられ尋問されている」
「それはまずいな、水城助けに行くよな」
「当然だ。だがまずはこの牢獄から脱出しないとな」
「どうやって脱出するんだ、ここから出られなければ助けにいけないぞ」
「安心しろ、遊星。あんま考えていないがなんとかなるだろ。俺らは元Альфа(アルファ)部隊の隊員に技術を叩きこまれたんだ。不可能はない」
去年の夏休みに四人は、仲良くなったロシア人の交換留学生に会いにロシアへ行った時に、元Альфа(アルファ)部隊の隊員である彼の親戚に1ヶ月半教育してもらった。そのため本職までとはいかないが、ある程度の戦闘技術を持っている。
とりあえず何が出来るのか把握する為にステータスを確認する。目の前に画面をイメージすると空間に画面が投影され、自分のステータスが表示される。ステータス画面の開き方については総統閣下達から教えてもらった。晴は教皇から他の同級生達と一緒に受けたようだ。
「なあお前ら、魔力を分けてくれないか。武器を召喚するのに魔力が必要なんだが、どうやら俺は少ないらしい」
「魔力を分けるのはいいが、どうやって分けるんだ」
「手を合わせて、力を流すイメージをすればいいって総統閣下が言ってたぞ。聞いてないなんて不敬だぞ、笑悟」
「おい待て、お前ら総統閣下に会ったのか」
「話せば長くなるぞ」
「いいな、俺も会いたかったぜ」
晴が羨望の眼差しで俺を見つめてきたがそれをスルーすることにした。
「それじゃあ、始めるぞ。3人とも頼むぞ」
「了解、手を合わせればいいのか。俺らもそんなに魔力ないようだけど、やってみるか」
3人から魔力をもらい再度ステータス画面を見る。魔力がスキルを開き兵器の項目を押すと大量の兵器が表示された。
俺たちはとりあえず小火器を召喚することにした。自分と笑悟にはAK-74を召喚し、遊星には前衛としてVANT-VMとPP-91、晴にはAK-47を渡した。そしてドアの鍵を破壊するためのC-4爆薬を召喚する。持ち込んでいたマカロフPMは遊星に渡した。
マガジンを銃に挿しコッキングレバーを引いてセーフティを解除、扉の鍵にC-4を設置し脱出の準備をする。
「よし、始めるぞ」
そう言って遊星が起爆スイッチを押し爆破した。彼を先頭に隊列を組み牢から出る。
「何が起こった」
爆発音を聞いて看守達が駆けつけてきた。
「Огонь(撃て)!」
俺がそう命令をすると3人が射撃を開始した。
軍事解説
Альфа(アルファ)部隊
ロシア連邦保安庁に所属する特殊部隊。対テロ作戦や人質解放を主任務とする。ロシアの特殊部隊の中でも最高峰の実力を持つ。
モスクワ劇場占拠事件やベスラン学校占拠事件に参加している。
AK-47
SKSの後継として開発され1949年にソ連軍に正式採用された自動小銃。
世界一有名な銃と言っても過言ではないくらい名の知れた銃。国旗や国章にも使われているほどである。
石川のAK-47は1953年から製造が開始されたⅢ型。
Ⅱ型との外見上の違いはレシーバーと銃床の間のスチールブロックが廃止されスリングスイベルの位置が変更されていることである。また切削工程が増えコストが上がっている。
AK-74
AKMをベースに5.45x39mm弾を使えるよう再設計された自動小銃。
外見上の違いは大型化した新型のマズルブレーキ、ガスピストンへの発射ガス導入部の角度、夜間に7.62x39mm弾のAKとの識別用に銃床に掘られた溝と銃尾に追加されたショルダーパッドである。
PP-91
PP-71をベースに開発されたサブマシンガン。
外見上の違いはバレル、フロントサイト、グリップの形状とストックの取り付け角度と形状が変更されている
主にロシア内務省に配備されている
VANT-VM
主にロシア内務省で使用されているバリスティックシールド。
重量が24kgあるためシールドハーネスを使用して体で持つことによって負担を軽減させることもある。5mの距離で7.62x54mm弾を防げる
皆さんお久しぶりです投稿主です。私生活が忙しくて長らく投稿出来ていませんでした。4月ぐらいまで不定期更新が続きますが失踪したわけじゃないので今後ともよろしくお願いいたします。