表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/56

第45話 ゼントVS大勇者ゲルドン③

 俺、ゼント・ラージェントと、大勇者ゲルドンの試合は、まだ続く!


 俺のチョークスリーパー……! 背面馬乗り(バックマウント)状態からの、裸締(はだかじ)め……かかった……ついに!


 ぐぐぐ……。


「こ、このぉ……! ゼントォォ!」


 うつ伏せのゲルドンはそう言いつつ、耐える。俺は右腕で、ゲルドンの頸動脈(けいどうみゃく)を締める。

 だが、ゲルドンは首が太いから、俺の細い腕ではなかなか極まらない!


 ぐぐぐぐっ……!


 俺は力を入れる。


「させるか、ゼントォ……」


 ゲルドンは指を、自分の首と俺の腕の間に、何とか差し入れようとする。首が締まるのを防いでいるのだ。


(ぐ……っ。ゲルドン! しぶといヤツだ!)


 俺の腕の力も、少しずつなくなってきた。ゲルドンも必死だ。


 しかし、ゲルドンも体力がなくなってきて、冷や汗をかいている。


 ──俺は()けに出た! 俺はいったん、チョークスリーパーを解いて……! 横からゲルドンの側頭部にパンチだ!


 ドガッ

 ドガッ

 ガスッ


「うぐっ、ぐぐぐ……」


 ゲルドンはうめいた。どうやら、ゲルドンは組み技になった時の、打撃の防御が下手らしい。自分で攻めてばっかりいたからだろうか?


 ガスッ


 その時、うつぶせになっているゲルドンの振り回してきた肘が、俺の(ほお)に当たった。


「う、ぐっ!」


 い、(いて)ぇ!


 俺は思わず声を上げた。な、何だ? この痛さは! まるで鉄で殴られたようだ!


 俺はついに、背面馬乗り(バックマウント)状態から、バランスを崩された。


「フフフッ」


 ゲルドンはニタリと笑って、俺を蹴っ飛ばし、スッと立ち上がった。


 また、俺とゲルドンは、立って闘うことになる!


 そういえば、ゲルドンの両肘(りょうひじ)には、青いサポーターが巻かれている。あ、あれが、俺の(ほお)当たったのか!


「審判!」


 ミランダさんが気付いたようだ。


「彼の両肘(りょうひじ)のサポーターの中に、何かが入っているわ!」


 しかし、審判団たちは聞こえぬフリだ。

 審判はゲルドンのサポーターをチェックする気がない……?


 俺はゲルドンをにらみつけたが、ゲルドンは言った。


「ああ、肘サポーターの中に、『何か』は入ってるぜ? かた~い金属のようなものがな」

「ゲ、ゲルドン! どういうつもりだ!」

「誰も俺には注意できねえ。俺はこのトーナメンとの『主催者』だからな!」


 ゲルドンは再び、ニタリと笑った。


 俺は逆に集中した。こんな反則野郎に負けるわけにはいかない──。


「どおおりゃあああーっ!」


 ゲルドンは襲いかかってきた。


 上から振り下ろすようなハンマーパンチ!


 しかし、俺はそれをよく見ていて、パンチを()けた。


 ガスウッ


 俺は──左アッパーをゲルドンのアゴに叩き込んでいた。カウンターだ!


 ゲルドンはひるんだような表情で、目を丸くしていた。しかし、ゲルドンは踏んばり、強烈な前蹴り!


 ガシイッ


 だが、当たったのは俺の右ストレート! 前蹴りを()け、その瞬間、ゲルドンの(ほお)に叩き込んでやった。


「うう……ゼント、てめぇ……。どうなってるんだ、てめえの強さは……」


 ゲルドンは、肩で息をしている。体力が切れてきたらしい。両膝(りょうひざ)に手をついて、休んでいる。


(何だ、この大勇者は。もう息切れか)

(情けない大勇者だ。もう出て行こう)


 ん? 変な声が俺の耳元で聞こえたぞ?


 その時だ。


 何と、ゲルドンの耳や口、鼻から白い霧のようなものが、ヒュッと出ていった。


 それと同時に、ゲルドンの闘気(とうき)が、ひゅるりと弱まったような気がした。


 まさか? サーガ族とやらの亡霊(ぼうれい)が出ていった……?


 ようし──ここだ!


 俺からいくぜ、ゲルドン!


「う……! ま、待て!」


 俺は一歩足を踏み出した。ゲルドンはあわてて、両手を構える。


 ガシイッ


 俺はゲルドンに、右フックを彼の耳の後ろに叩きつけた。耳の後ろは──急所だ!


 ひるむゲルドン──しかし、ゲルドンの目が、ギラリと輝いた。


「俺も──俺だって、大勇者なんだ……。国民のヒーローだ。だから、負けるわけには、いかねええんだああああーっ!」


 何と、ゲルドンの体が光り輝いたような気がした。それは、亡霊たちの不気味な、蜃気楼のようなもやではなかった。ゲルドン自身の、内から出る本当の闘気(とうき)のようだった。


 ゲルドンの左フック! まるでぶん回すような、渾身(こんしん)の力を限りを尽くしたパンチだ。


 バスウッ


 俺は左手で受ける。


 ガッスウウッ


 今度はゲルドンの左前蹴り!


 俺は咄嗟(とっさ)に両腕をクロスして、防御する。


 重い蹴りだ、ゲルドン! しかし──ここだああっ!


 俺は武闘(ぶとう)リングを足裏で蹴り、全体重を乗せ……!


 手の平の下部を使った打撃──右掌底(みぎしょうてい)を放っていた。


 グワシイッ


 逆に、俺の右掌底(みぎしょうてい)は、ゲルドンのアゴに叩き込まれていた。


 ──完全に急所に入った──。


「あ、あぐ……!」


 ゲルドンはヨロヨロとふらつき……しまいにはようやく……ついに!


 リング上に、両膝(りょうひざ)をついた。


「ゲルドン……ダ、ダウンか?」

「お、おい、マジか? 大勇者が?」

「あれ、完全にアゴに入ったぞ……! ゼントが勝った……?」


 観客がざわついている。

 審判団も眉をひそめて、相談している。あわてている表情だ。


 しかしゲルドンはリングに両膝(りょうひざ)をつけている。


「……力が……(ひざ)に入らねえ……」


 ゲルドンは、何とか立ち上がろうとした。

 しかし、立ち上がろうとした瞬間に、よろける。そして、リングに張りめぐらされているロープに寄りかかった。


 立つのか……?


 いや、ゲルドンはふらついた。──そして、またリングに(ひざ)をついてしまった!


「降参だ……」


 ゲルドンは首を横に振りつつ、言った。


「俺の負けだよ、ゼント」


 審判団はゲルドンの様子を見て、困惑していたが、やがて渋々(しぶしぶ)と、魔導拡声器(まどうかくせいき)を手にした。


『えー……は、8分11秒、ギブアップ勝ちにより、ゼント・ラージェントの勝ち!」

 

 ウオオオオオオーッ


「や、やりやがったあああああーっ!」

「ゼントのやつ、大勇者を倒しちまったあああ!」

「すげええーっ! 体重差を乗り越えた!」


 観客たちが声を上げる。


「やったああああーっ!」


 リングに上がってきたのは、エルサだった。

 エルサは俺に抱きついた。


「すごい、すごい、すごい、ゼント! 本当にすごいよお!」

「分かった分かった、落ち着け」

「ありがとう、ありがとう、ゼント!」


 エルサは泣いている。ゲルドンに不倫をさそわれ捨てられ……色々あったものな……。


 ゲルドンといえば、白魔法医師の診察を受け、タンカに乗せられた。


「ゼント! ゼント! ゼント!」

「優勝しろよー!」


 観客席から、俺を呼ぶ声がたくさん聞こえる。

 

 俺は──大勇者に……因縁(いんねん)の男に勝ったのだ。



 

 俺とエルサは、武闘(ぶとう)リングから下りた。


 しかし!


 リング下で待っていたのは、セバスチャンだった。


 彼は握手を求めてきた。


「まさか、まさか。大勇者を倒してしまうなんて、お見事ですね、ゼント・ラージェント君」


 セバスチャンはにこやかに言った。あきらかに作った笑顔だ。


 俺は握手に応じなかった。セバスチャンは話を続ける。


「まったくゲルドンは、使えない、情けない男ですよ。観ていて笑ってしまいました」

「ゲルドンの秘書兼執事が、ゲルドンをそんな風に言っていいのか?」


 俺は聞いたが、セバスチャンはひょうひょうと言った。


「別に構いやしません。私はもう、ゲルドンの秘書はやめましたから。今日限りで」

「なに?」

「私は、すでに武闘家(ぶとうか)連盟会長。立場はゲルドンより上です。しかも、決勝で君に勝てば、念願の国王親衛隊長(しんえいたいちょう)に任命されることが決まりました」

「こ、国王親衛隊長(しんえいたいちょう)!」


 国王親衛隊(しんえいたい)といえば、グランバーン王につかえる、グランバーン王国最強の戦士たちじゃないか。

 セバスチャンが、その隊長になるってのか?


「名実ともに、私の立場、権力はグランバーン王に次ぐNO2となります。君を倒せばね……。ゲルドン? 大勇者? そんなもの私の足元にも(およ)ばんね。だから、ゼント君、悪いけど」


 セバスチャンは急に俺をにらみつけた。


「私は、君には絶対に、勝たねばならないんですよ! 自分の野望のためにね!」


 セバスチャンから、不気味な闇色(やみいろ)蜃気楼(しんきろう)が発されている。

 ゲルドンと一緒だ。いや、ゲルドンよりも、闇色(やみいろ)が濃く、もっと強力な恐ろしいエネルギーを感じる。


 こいつも、サーガ族とかなんとかの亡霊(ぼうれい)に取り()かれているのか?


 ……おや? その時、エルサが俺の前に出た。エルサの横には、アシュリーもいる。


(エルサ?)


 俺は首を(かし)げた。エルサとアシュリーは、セバスチャンを目の前にしている。


 衝撃(しょうげき)だったのは、アシュリーがセバスチャンに言った、一言だった。


「パパ……。もうひどいことは、やめて」


 な、なん……だと……? パパ……?

☆作者からのお知らせ


 このお話を読んで、「面白かった!」と思った方は、下の☆☆☆☆☆から、応援をしていただければうれしいです。


「面白かった」と思った方は☆を5つ


「まあ良かった」と思った方は☆を3つ


 つけていただければ、とてもありがたいです。


 また、ブックマークもいただけると、感謝の気持ちでいっぱいになります。


 これからも応援、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ