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第21話 その頃、ゲルドンは⑤

 大勇者ゲルドンは酒場で、ホビット族のドルバースにケンカを売った。


 そして──ホビット族のドルバースは、大勇者ゲルドンに肘打ちをくらわせた。


 ゲルドンは、痛めたアゴをさすりながら立ち上がり──。


「ホビット……いい度胸だ。地上の果てまでぶっとばしてやる。チビ野郎」

 

 とつぶやき、両手をギチリと構えた。戦闘態勢──素手の勝負だ。


 超小柄なホビット族と大勇者ゲルドンのストリートファイト──。


 見ものだ!

 

 酒場の野次馬たちは息を飲んで、二人の対決を見守った。クオリファは心配そうだったが……。


 ドルバースの頭の上で、ゲルドンの右拳──右フックは空を切る。


 その瞬間、ドルバースは一歩前に出て、その小柄な体格を利用し、ゲルドンのふところに踏み込んだ。


 ドガッ


「ぐへ」


 ドルバースの左ボディパンチは、ゲルドンの腹に叩き込まれていた。

 見事に急所をとらえており、ゲルドンの体は丸まって、前傾姿勢となった。


 ここで!


 グワシッ


 ドルバースは素早く、またしても得意の肘打ちを、ゲルドンの頬に叩き込んだのだ。

 前傾姿勢だったゲルドンに、見事な攻撃だった。


「うおおおっ!」

「す、すげえ、あのチビ!」

「ホビットの野郎、ケンカ慣れしてやがるぜ!」


 ゲルドンは目を血走らせ、倒れず踏んばった。さすが大勇者。ドルバースの体重が軽かったということもあって、肘打ち攻撃に威力が少なかったという事実もあった。


「あ、ぐ、ち、ちくしょう」


 ゲルドンはそんな声を上げる。


「冷静にやらねえと──」


 ゲルドンの顔色が変わった。キュッと両手を構える。これはゲルドンが本気で、戦闘態勢に入ったことを示していた。


 ガスッ


 ゲルドンの左の軽いパンチ──左ジャブだ!


 いきなりの素早い攻撃に、ドルバースは反応できなかった。ドルバースのアゴを軽くとらえた。またもう一発ジャブ、今度は(ほお)。そして最後にゲルドンは──。


 ガッ


 ゲルドンの下段回し蹴り! ローキックだ!


 ドルバースは(もも)を蹴られて、ひっくり返った。


「おお!」

「すげえ」

「さすが大勇者様だぜ!」


 野次馬たちが声を上げる。


「くっ!」


 ドルバースはひっくり返った時、背中を打った。しかし、すぐに横に転がり、立ち上がる。


「へへへ……」


 ゲルドンはニタリと笑った。


「フフッ、冷静になれば、ざっとこんなもんさ」

「そうかな?」


 立ち上がったドルバースはぴょんぴょん、とその場をジャンプしてみせる。


「効いてねえんだよ、大勇者さんよ! ジャブも下段蹴りも、すべて急所を外したぜ?」


 ドルバースの言葉に、ゲルドンは冷や汗をかいた。そ、そんなバカな? 効いていないだと? 

 ドルバースは続ける。


「てめーの攻撃が遅ぇから、ポイントを外すことができるんだ。なんだお前、本当に大勇者のゲルドンなのか? ニセモノなんじゃねーの?」


 しかしだ。ドルバースは実は、ゲルドンの攻撃は効いていた。ケンカ慣れしたドルバースは、このようなハッタリ発言もお得意だった。

 しかし、今のゲルドンにはその演技を見抜く余裕はなかった──。


 ゲルドンは顔を真っ赤にした。

 俺は正真正銘(しょうしんしょうめい)の、本物の勇者だ!


「俺は、負けるわけには、いかねえんだ! てめーを(つぶ)す!」


 ゲルドンは何と、横の席の鉄製ビールジョッキを手に、ドルバースに殴りかかった。


「う、うおっ……」


 ドルバースはさすがにあわてた。しかし、ゲルドンも焦っており、動きが雑だ。ドルバースは無事、その凶器攻撃をかわすことができた。

 ゲルドンは声を上げた。


「う、そ、だ、ろ」

「ふう──。危ねえな。うそだろ、じゃねえよ」


 ドルバースはため息をついた。


「そのビールジョッキは重いぞ。そんな(おそ)(にぶ)い攻撃が効くと思ったか? 武闘家(ぶとうか)にそんなチンケな反則攻撃が効くかよ、大勇者さん」


 ゲルドンは再び冷や汗をかいていた。


 野次馬はクスクス笑っている。何としても勝たないと……どうする?


 ゲルドンはジロリとクオリファを見た。


「お前の出番だ」


 ゲルドンはクオリファに言った。


「うっす……」


 クオリファは静かに言った。クオリファも、自分の師匠、そして尊敬する大勇者をコケにされて、我慢がならなかった。


「っしゃあっ!」


 ドガッ


 クオリファはいきなり、ドルバースに向かって横蹴りを胸部に見舞った。

 ドルバースは3メートルふっとび、酒場の壁に激突した。


 ケンカはまだ続く──。

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