表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/56

第18話 エルサの過去②

 俺はミランダさんの魔法で、エルサの過去──17年前の出来事を半透明の体で見ている。


 モンスター討伐が終わった後、フェリシアを妻にしているゲルドンは、あろうことか、エルサに不倫(ふりん)関係になることを持ちかけた──。


 ゲルドンとエルサ、そして新しいパーティーメンバーの銀髪(ぎんぱつ)の少年(名前不明)は、モンスターを討伐(とうばつ)した。

 その後、中央地区のギルドへ向かった。グランバーン王国最大のギルドだ。


「おい、バルーゼ、ワーウルフとビッグマウスを討伐(とうばつ)したぜ」


 ゲルドンはギルドに着くと、さっそくギルドマスターのバルーゼ氏に言った。ゲルドンの(ほお)は、エルサにぶたれて赤くなっている。


「ほぉー! あの難敵、ワーウルフとビッグマウスをですか? さすがですね!」


 ギルドのマスター、バルーゼはもみ手をしながら大げさに言った。ふん、大勇者のゲルドンに頭が上がらないってのか。

 するとゲルドンはニヤニヤ笑いながら、後ろのエルサを指差し、バルーゼに言った。


「それでだな。このエルサが、一身上の都合で、ギルドをやめたいんだとよ」

「な、何?」


 エルサは後ろから、驚いたように声を上げた。


「あたしがギルドをやめたい? ゲルドン、何を言ってるんだ? あたしはそんなことを希望した覚えはない!」

「──バルーゼ、命令だ。さっさとエルサのギルドの登録を抹消(まっしょう)してくれ」


 若きゲルドンはエルサの訴えを無視して、冷たくバルーゼに言った。バルーゼは困惑した表情で、ゲルドンとエルサを交互に見ている。

 お、おい、ゲルドン。お前、何を言っているんだ? 意味分からんぞ。


 一方、クスクス笑っているのは、銀髪(ぎんぱつ)少年だ。一体、こいつは誰なんだ?


「おい! 何を血迷ったことを言っているんだ、ゲルドン!」


 エルサは声を上げた。


「ギルドの登録がなければ、あたしはどうやって生活すればいいんだ! 今まで剣士一本でやってきたんだぞ。バルーゼ、ゲルドンの言っていることは無視してくれ!」


 すると、ゲルドンは何と暴力的なことか、エルサの胸ぐらをつかみ上げた。


「じゃあ、エルサ──。俺とのさっきの約束、受け入れてくれるよな。受け入れなきゃ、娼婦(しょうふ)にでもなって、体で(かせ)ぐんだな」


 ドガッ


「うっ……」


 エルサは床に放り投げられた。

 そうか! ゲルドンは再び、エルサに自分と不倫(ふりん)関係になることを持ちかけている。それを受け入れろ、と(あん)に迫っているのだ。


 周囲の人々は、驚いてゲルドンたちの方を見ている。


 この世の人間は、皆、ギルドに加入している。そこから職業を手に入れるのだ。ギルドをやめるとなると、まともな仕事につくことは不可能だ。

 つまり──ギルドから登録抹消(とうろくまっしょう)されれば、この世でまともに生きていくことは不可能。

 一度、登録抹消(とうろくまっしょう)されれば、三年間は再登録できない。


「な、なんだ、何かトラブルか?」

「いやまて、ありゃ、勇者のゲルドンじゃねえのか?」

「お、本当だ。グランバーンの大スターじゃねえか。何のさわぎだ」


 ギルドにいた人々は、(うわさ)をし始めた。


「ゲルドン様、もうそれくらいで」


 謎のもう一人のパーティーメンバー、銀髪(ぎんぱつ)の少年は笑いながら言った。


「いや、しかしだな、セバスチャン」


 ゲルドンは床に投げられてたエルサを、にらみつけながら言った。セバスチャン? 誰だ?


「皆が見ていますから、ここのところはおさめて」


 銀髪(ぎんぱつ)少年──セバスチャンは静かにアドバイスした。ゲルドンはハッとして、あわてて周囲の人たちに言った。


「お、おお! さわがしくして悪かったな。別に何でもねぇよ。ちょっとした、金のトラブルさ」


 ゲルドンはエルサを見やりながら言った。金のトラブル? 大ウソだ。

 ゲルドンは、しゃがみ込み、静かに言った。


「エルサ──。お前とフェリシアは親友だったな。だけど関係ねえよ。エルサ、お前が俺様を受け入れたら、今後、いい生活をさせてやるぜえ?」


 ゲルドン……まるで悪魔のような顔だ。


 パシイッ


 エルサはまた、ゲルドンの右頬(みぎほお)を平手で叩いた。


「断る! 幼なじみの──親友のフェリシアを裏切れない!」

「……強情な女だ」


 ゲルドンは右頬(みぎほお)をさすりながら舌打ちし、セバスチャンとともに、外に出ていった。


(後は……現実の世界で話す。戻ろう)


 現在のエルサの声が、俺の耳元で響く。


 俺は──冷や汗をかいていた。何でこんなことになっているんだ?

☆作者からのお知らせ


 このお話を読んで、「面白かった!」と思った方は、下の☆☆☆☆☆から、応援をしていただければうれしいです。


「面白かった」と思った方は☆を5つ


「まあ良かった」と思った方は☆を3つ


 つけていただければ、とてもありがたいです。


 また、ブックマークもいただけると、感謝の気持ちでいっぱいになります。


 これからも応援、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ