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邪武器の娘  作者: ツインシザー
人間領
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聖誕祭


 最近学園では聖誕祭の舞踏会のことが話題になっている。

 ここ、グラッテン王国首都、グラッテリアでは聖誕祭の日の夜に、王城において主な貴族があつまり、舞踏会が行われる。

 これにはほとんどの子供たちは参加できない。せいぜいが王族と子爵家以上の子供だけだ。

 なので参加できない子供たちは街の催し会場を借りて盛大に自分たちの舞踏会を行うのだ。


 ダンスの授業中、話題はその舞踏会のことでもちきりだった。

「ねぇ、あなたはどちらの舞踏会にお出になりますの?」

「私、ある男爵家の男子からダンスに誘われていますの。ですから生徒会主催の舞踏会に参加するつもりですわ」

 壁際の女子たちはそんな話題をかわしながらキャイキャイしている。

 城の舞踏会は若者には少し居心地が悪い。爵位をもった人間たちがそれに見合う仲間と集い、大人の話をする。

 つれてこられた子供は将来のためにそんな大人の仲間入りをさせられるが、途中であきて城を探検しはじめるくらいしかやることがない。

 10代も半ばならそんな中でも将来のためにつるむ友人を見つけられるだろうが、10をいくつか過ぎた程度ではまだまだ将来の展望はわかりにくいだろう。

 なので、生徒会主催の舞踏会に参加する生徒は割と多いらしい。


 舞踏会か。

 シアはどうするのだろうか。誰か男子に誘われれば、行くと言い出しそうではあるが・・・今一番その可能性が高いのが、セシル君である。

 今ダンスホールの中ほどで踊っているシアとセシル君。オレのいる場所からでは二人の会話はわからない。

 どうするんだろうな。

 というか、セシル君も女子人気が高いはずなんだけども、最近セシル君はシアと仲良くしてくれている。


 で、どうするんだ?

「ん。パパ、くるよ」

 来る?

「お城の舞踏会。あの男の子が」

 あのってことは・・・そうか、あいつか。

 ”聖剣”を手に入れた、あの少年か。

 王の招待者として城の舞踏会に呼ばれたと言うことか。

 それならシアの選択は予想が付く。

 オレたちも城の舞踏会に参加するんだな?

「んっ。」

 よし、聖剣を手に入れた勇者のヒナに会いに行こうか。



 ちなみにイオ君はどうするの?

「ボクですか?、舞踏会には参加しません。というか、生徒会主催の会場の警備をします」

 でしたか。

 シアは警備に参加しなくて申し訳ない。

「いえ、かまいません。シエストリーネ様や爵位の位が高い子息の方々は生徒会主催の方ではなく、お城の舞踏会に行くようですからね。護衛が必要と言うならそちらでしょう」

 流石に城の警備ともなればシアの力がいるとは思えないがね。

 この国の最高の戦力があるだろう。

 王を守る王宮騎士団もあるだろう。

 シアが戦力として頼りにされる場面なんてこれっぽっちもなさそうだ。

 そういやセシル君はどうするんだろうか。シア、セシル君から聞いてる?

「ん。お店の常連がいるから城に行くって」

 なるほど。セシル君とは向こうで会えそうだ。ただしシアの相手をしてくれるとは限らないけど。あいさつ回りで忙しいかもしれないからなぁ・・・。

 とりあえずは帰って義父ミルゲリウスに城の舞踏会につれていくように頼まないといけないな。

 城の中に入るのは2回目か。

 舞踏会、少し楽しみである。




 ”聖誕祭”と呼ばれる祝日がある。12月の終わり、神聖の加護を持つルーデリアス神が世界に祝福を授けた日と言われている。

 ルーデリアス神と言えばルデリウス神聖国の第一信奉神であったが、ルデリウス神聖国が崩壊した今でもかわらずに祝日を祝うようだ。

 聖誕祭には家族と団欒を囲みケーキを食べる。そしてルーデウス神に感謝をささげるのだ。


 アンナは楽しそうにしている。

 シア付きのメイドであるアンナは聖誕祭に向けて特にやることがあるというわけではない。

 しかし聖誕祭の当日には使用人全員に豪華な食事とケーキがふるまわれるのだ。

 多少の無礼講も許される。

 アンナは食事で出るケーキと無礼講で行われるくじ引き会が楽しみらしい。

 掃除する作業にも身が入ると言うものだ。「ひゃぁ」パリン

 ・・・入るといいな。


 アンナは割れた花瓶をかたしながら、時折手をさすっている。

 グラッテリアの冬は乾燥している。冬は湿気もないので水の冷たさが肌に刺すように感じるのだろう。

「・・・・・・」

 シアは少し思案したあと、化粧ダンスの引き出しから紙で包装された袋を取り出した。

「・・・アンナ、こっちへ」

「どうしました?、お嬢様」

「聖誕祭の日にしようと思っていたけど、これをアンナに贈るわ」

 はい、と言ってアンナに渡す。

「開けてみて?」

「え、ええっ。わたしなんかに、いいのでしょうかっ」

「ん。いい。アンナのために用意したのだから、喜んでもらえるとうれしい」

「シアお嬢様・・・、あ、ありがとうございますっ。たいせつにしますっ」

 そう答えて紙袋をぎゅっと抱きしめる。

 その様子を、シアは満足そうに眺めている。

 袋を開けてもいないのに、大切にすると言う。

 シアにはもったいないようなカワイイ従者だった。

「・・・開けてみて」

「・・・はいっ」

 ペリペリと紙袋を開けると、小さな小箱と一本のマフラーが出てきた。濃いピンクのかわいらしいマフラーだ。

「わぁっ、かわいいです。いただいていいんですかっ」

 アンナは冬用の手袋とマントは持っていても、帽子やマフラーは持っていない。そのあたりはきちんと調べてある。

「こちらは・・・え、高価な物ではないですか?」

 小箱の中には乳白色の小さなブローチが入っていた。

 仕事中でも華美にならないように、色と造形を地味に作ったブローチだ。付与に暖気を発するものが付いている。冬場の水仕事の辛さを和らげてくれるだろう。

「たいせつに、します・・・」

 まもなく聖誕祭がやってくる。

 聖誕祭の日に雪が降ると、その日は幸せがあふれていて空からあふれ出た幸せが降ってきているのだという。

 シアとアンナの幸せが、その一部になれることを。


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