学園は学園祭1
秋も深まったころ、学園祭の準備が始まった。
シアは部活動に所属していないからクラスの手伝いと、風紀委員の見廻りをしていた。
どこの世界でも学園祭は低予算で行われる。
木板にハケで色を塗りながらクラスの男子が固まって話している。
「いいか?今年の学園祭はいつもの学園祭とはちがうらしいぞ。武器の携帯も許可されてるし、護衛をつれて歩くこともできるんだ」
「らしいな。まだ先生から話はされてないが、どうやら不審者が学園祭にあらわれる可能性があるらしいな」
「でも、だから何なのさ。この年になって学園内で護衛を連れ歩く小心者なんていやしないだろ」
「あほ、そういうことじゃない。学生同士もいっしょに行動することを推奨されるってことだ」
「いっしょったってなぁ・・・、女子と回れるならいざしらず」
「いや、女子と回れるってことだ」
「何で」
「いつもより、エスコート役を言い出しやすいってこと。そして相手も事情が事情だからとりあえずお願いしようかってなるんだよ。たとえばさ、あそこの女子たちいるじゃん」
「いるな。いつも4人で固まってる」
「そう。でだ、あの中だとキルシェだけ切り崩しやすい。そうやってキルシェを誰かが誘うとする」
「うん」
「そうなるとあとの3人は3人だけで回るのもどうかなって考えるだろ。しかも、一人は男と回るんだ。ちょっとうらやましいと思ってる」
「うんうん」
「残った3人の誰かに声をかけると4人の時より成功しやすくなっている。それでのこり2人。こうなるともう、みんな誰か男子といっしょにいかなきゃってなってる。これでオレらは全員あいつらと学園祭を回れるようになるのさ」
「すげーな。まずお前が女子と話ができる前提なのがすげー」
「いや、お前らががんばればあとは残った者同士ってなるから」
「・・・・・・そうか。そうだな・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・何だよ」
「・・・いや」
「それって4人グループを攻略するときの方法だろ?、一人の相手や難易度が高い相手はどうやって誘うんだ?」
「一人って・・・一人ならむしろ誘われるしかなくない?。誰かといっしょに行動しなきゃいけなくなったらさ」
「いや、こいつが言ってるのは無口な彼女のことだ。オレたちより強いからむしろ誘っても邪魔にしかならない場合のことだろ」
「うん」
「あきらめろ」
「死ぬ気でいけ」
「ドゲザしろ」
「そっかー。1:2でなんとかなるかもって感じなんだね」
「・・・・・・そうだな」
「がんばれば行けるかもな」
ああん?
さて、槍を持ち歩いているシアは木材の切断係りだった。
ばっさばっさ切っているところをみると実にたのもしい。
そして何でこれがモテるのか、たまに不思議に思う。
貴族社会にどっぷりはまっていると奇をてらったキャラに魅力を感じるのかもしれなぎゃああああぁっ
オレの刃先はトンカチじゃないから!
見ろ!釘が縦にまっぷたつだよ!
「どや?」
違うよっ自慢してないからっ
使えなくなった釘を満足そうに見て笑うシアの横で、トンカチを持っているシエスがため息をつく。
「あなた、遊んでないでちゃんとしなさい。学園祭はもう3日後なのよ。このままでは間に合いませんわよ」
今まで一番何もしていなかった人間がこんなことを言う。
ひとを顎で使うとまでは言わないが、ほとんど他人任せだったくせに父親である国王が学園際に来るかもしれないと聞いて突然やる気を出してきたのだ。
たぶんそれ、反乱分子をあぶり出すためのウソだと思うなぁ・・・
わざわざ火種があるのがわかっているこの時期に、国王が護衛の行き届かない場所に現れるとは思えない。
まぁ、娘が喜んでいるのを見ると、娘にもニセ情報だと言うことを伏せているのだろう。たいていの生徒は国王が来ないだろうとわかっているが、たまに純粋な人間がいてひっかかるのだ。
目の前の少女のように。
「・・・そもそも、なぜここにシエスが」
「た、たまたまですわっ、たまたまあなたを手伝ってさしあげているだけですわよっ。勘違いしないでくださいねっ」
他の班は作業が大体終わってるからだ。いまさらやる気を出したはいいが、やれる作業が残ってなかったからな。シアのいる”なんとなくそれっぽいコウモリをいっぱい作る班”だけが、まだ作業が残っていたんだ。
「・・・作業が残っているとは、言わないんじゃ」
気付いてしまったか。
まぁ、ホラーハウスを彩るのには、すでに十分な数のコウモリができたと思うけど。
・・・シエスのために作業が終わらなくて大変だわー感出してあげなよ。
シアはため息をついて頭を振る。
「・・・・・・何ですの?」
「いや。作業が終わらなくて大変だワー。シエスが手伝ってくれて助かるワー」
だいぶ棒読みだった。
だがこんなのでもお姫様には満足だったらしい。
「ふ、ふふん?。そうね、わかればよろしいのよ。感謝しなさい」
「ん。」
シアは広い心で木材を切り出してゆく。
シアの切り出したコウモリっぽい何かをシエスとその取り巻き達が適当に黒く塗って板や暗幕や紐にくくり付けてゆく。
「ねぇ、あなた・・・ご家族は学園祭にいらっしゃいま・・・なぜそんな嫌そうな顔をなさいますのっ」
学園祭には家族、親族の参加が許される。生徒にはそのためのチケットが渡されていた。
シアは義父ミルゲリウスを呼ぶつもりはなかった。しかしアンナが学園祭のことを誰かから聞いてきたらしく、とても来たがっていた。
メイドは家族や親族ではないが、家族や親族の供としてなら参加を許されている。
シアは無表情にたんたんとゲリウスにチケットを渡した。受け取り、匂いをかいだ後大事そうに左胸のポケットにしまい込むゲリウスに、アンナを必ず連れてくるようにと伝えていた。
なので、ゲリウスのおっさんはやってくるだろう。
養娘の希望を叶えるために。そして一日中入り浸るだろう、養娘の学園生活を堪能するために。
「・・・来る。」
「そ、そう・・・。確かグラスマイヤー様はお髭の素敵な騎士子爵でしたわよね。寡黙で凛々しくて書類仕事もこなせる有能な方だと聞いておりますわ。お会いできるのが楽しみですわね」
世間での奴の評価はそんな風なのか。
あとストーカーで変態で人形性愛の気がある異常者です。
「そそそ、それで、その・・・クラスの誰かと、学園祭を回ったりするのかしらっ」
あーはーん?
なるほどー
イオ君のことが気になっているシエスとしては、すごく大事なことだな?
「・・・クラスの人間とは、回らない・・・」「そう?、そうなんですわねっ」「けど」
「風紀の仕事でイオと一緒に見廻りする」
一瞬テンションが上昇したシエスの動きがピタリと止まる。
ギギギと首を動かすシエス。
「仕事で、一緒に」
「・・・3時間くらい」
「く、くふふっ、で、ではそれ以外の時間でしたら誘っても、かまわないということですわよねっ」
崩れ落ちそうになったのをふんばり、カウンターをきめてきた。
「・・・なんで私に聞くの?。好きにすればいい」
「えぇ、では、そうさせていただきますわ」
シエスはくふふと微笑んだ。




